紙の基礎講座(6-1) 知っておきたい紙の基本品質Ⅰ 紙の密度について

トラブル対応、その前に(2)…知っておきたい紙の基本品質Ⅰ 

トラブル対応、その前に。今回は基礎知識です。紙の基本品質について少し具体的に触れていきます。

 

紙の密度(緊度)について

まず紙の密度(緊度)です。紙の密度は紙の品質を決定する重要な指標です。そのため紙とその密度を知れば、その紙の品質レベルを推定することができます。

従って、紙、例えば、塗工紙の品質レベルを論じているときに、光沢度、平滑度の数値のみを並べて比べたり、品質設計をしたとすれば過ちを犯しかねません。ここで見落しがちなのが、その紙の密度(緊度)です。密度がどれ位なのか、その品種グレードの一般レベルとして適正なのか、あるいは大きくないのか(締まり過ぎていないか)、逆に小さ過ぎでないかなどを知ることは非常に重要なことです。

もちろん光沢度、平滑度だけでもその紙の品質レベルを知ることはできますが、これだけですと正常な紙なのか、どこか無理をして造られているのではないかとか、どんな造り方をされているのかなどを推定することができません。

しかし、光沢度、平滑度に加えて、その密度(緊度)を知れば、そのようなことを推定することができるのです。紙の表面のみならず中身が推定できるのです。これは非常に有効な情報となります。また紙は同じ重さ(米坪、連量)でも種類によって厚さが違うことがあります。これは密度の違いによるもので、例えば密度が低い方が嵩高でフワッとした紙となります。例えば同一米坪で光沢度、平滑度が同じレベルにありながら、紙の密度が通常の紙よりも1、2割くらい小さければ、後述のように今はやりの「嵩高紙(かさだかし)」だと推定することができます。

これくらい紙の密度(緊度)は、重要でポイントになる項目です。そのために真っ先にここに取り上げました。品質データなどを見るときには是非、密度(緊度)に注目してください。前文が長くなりましたが、これから紙の密度について説明していきます。

密度とは、単位体積あたりの物質の重さ(注:正確には質量)のことで、単位はkg/m3またはg/cm3で表示します。すなわち、密度(g/cm3)=物質の質量(g)/物質の体積(cm3)で求められます。通常は空孔のない物質の密度(真密度)を表します。

これに対して紙の密度は、坪量およびその紙の厚さから計算して出す単位容積当たりの質量のことで、その単位はg/cm3で表します。なお、紙は多孔性物質なので、紙の密度はこの空孔を含めたものを表しており、いわゆる、見掛け密度(見掛け比重)をいいます。

その算出式は、密度(g/cm3)=坪量(g/m2)/厚さ(mm)×1000で、坪量を厚さで割って求めます(JIS P 8118)。

また、紙の密度は緊度といわれるように、紙の締まり具合の程度を表し、数値が大きいほど、緻密で締まり程度が大きくなります。

なお、密度(緊度)の逆数を比容積といいます。すなわち、比容積とは一定質量に対する容積のことで、嵩(かさ)ともいわれ、体積や厚み、高さなど嵩張り状態(bulky)の目安となり、次式で求められます。

比容積(cm3/g)=厚さ(mm)×1000/坪量(g/m2)

 

ところで紙は、繊維の絡み合いで出来ているため、網目状構造をしており、紙の表面から内部にわたって、多孔性構造を形成しております。この多孔性構造は紙の大きな特徴ですが、多くの品質と密接な関係にあり、例えば、インキ・水などの浸透、乾燥、転移性、紙の平滑性、通気性などほとんどの特性項目に関わる重要な紙の構造です。

この多孔性構造の中には空気が存在しています。紙を構成しているパルプ繊維や填料の比重は、それぞれ1.5、2.6~2.7くらいであり、本来ならば紙の比重も1.5以上ないといけないのですが、実際には紙の種類によって異なりますが0.6~1.3くらいで、それよりもかなり小さいな値です。これは紙の中に多くの空気が混入していることを意味しており、この空気混在のために、一定容積あたりの質量は軽くなり、密度、すなわち比重が低くなるわけです。このため紙の密度は真の比重でなく、見掛け比重といわれる所以です。

なお、紙の中に占める空気の容積割合を表す指標を空隙率といいます。また、空隙率は紙の多孔性の度合いを示す値をいい、有孔度ともいいますが、次式

空隙率=1-紙の真の容積/紙の見掛けの容積=1-紙の見掛け密度/紙の真の密度

によって求めることができます。

ここで、紙の見掛け密度とは、紙質測定で坪量と紙厚から計算される紙の密度と同一であり、紙の真の密度とは、紙を構成している填料などを含んだ繊維自体の密度をいい、測定法として比重ビンによる方法や水銀圧入法などがあります。

紙の空隙率は、品種・坪量などで差があり、また、同じ品種でも銘柄で違いがありますが、ざら紙(下印刷紙、印刷用紙D)でおよそ0.65、上質紙で0.5、アート紙で0.4くらいであり、緊度の高い紙のほど空隙率は小さく、言い換えますと、締まっている紙ほど紙中に含まれる空気の比率が小さくなるわけです。

 

(1)紙の密度(緊度)と品質特性

紙の密度(緊度)は、平滑性、不透明度、光沢度、腰、強度、紙くせなどの品質特性に影響する重要な指標です。

まずパルプ原料の叩解との関係を説明します。なお、叩解については本講座②の「叩解…紙質の決め手」の中で、説明しておりますので併せてお読みください。重複するところがありますが、パルプ原料の叩解処理により、繊維はフィブリル化されます。処理が進むにつれて繊維は短小化し、繊維同士の絡み合いが多くなり、結合点の数も増加し紙力が変化するとともに、紙の密度も大きくなります。図1に紙の密度・強度に及ぼす叩解(フリーネス)の影響を示します。

叩解による紙の特性変化は、叩解が進むにつれて紙の緊度が増し、引き締まった紙質となり、裂断長、破裂強さ、耐折強さが増加しますが、反面、一般的に引裂き強さは低下します。

 

裂断長…紙の一端を固定懸垂して、その自重で切れるときの紙の長さをいい、単位はkm(キロメートル)。

 

このために適正な原料の叩解処理が必要で重要になってきます。また、密度(緊度)が大きくなるということは繊維同士の間隔が小さくなるか、ないしは結合程度が大きく密着しているために、湿度などが変化したときは、繊維1本1本の伸縮が他に波及しやすく、伸縮程度が大きくなります。このため緊度の高い紙ほど紙くせ・寸法安定性が劣ってきます。

また、紙をカレンダーなどで加圧すれば、緊度が上がり、表面の平滑性や光沢度は向上しますが、逆に不透明度は下がるのでここでもバランスが重要となります。図2に紙の緊度と主な品質特性を示します。

 

(2)品種別の緊度および平滑度

図2に示したように、一般的に紙の緊度が小さいとその平滑度は小さく、緊度が大きくなるにつれて平滑度も大きくなります。言い換えますと、紙が締まり緻密になるにしたがい、その平滑性が良くなり平滑度が高くなります。

表1に代表的な紙の緊度と平滑度を示します。非塗工紙、塗工紙との違いや、また、新聞用紙、上質紙、軽量コート紙A3、コート紙A2などの品種間で差がありますが、これが製造条件、方法の差であり、品質の差となり、その紙の品質の特徴になるわけです。

さらに、同一品種でも、メーカーによって差があり、坪量によっても、平判・巻取によっても違いがあります。また、同メーカーの同銘柄でも坪量によって異なります。一般的には、坪量の小さい薄物ほど締まり易くなるため緊度は大きく、坪量の大きい厚物ほど緊度は低くなります。

表1.紙の品種別の緊度および平滑度
品種緊度(g/cm3)平滑度(秒)
新聞用紙43g/m2 0.55~0.65 40~50
上質紙64g/m2 0.80~0.90 50~100
微塗工紙64g/m2 1.00~1.05 500~1,000
軽量コート紙A364g/m2 1.10~1.20 1,000~2,500
コート紙A2127.9g/m2 1.15~1.30 2,000~5,000
アート紙A1127.9g/m2 1.25~1.35 3,000~8,000
キャストコート紙(片面)157.9g/m2 1.05~1.10 5,000~10,000
アートポスト紙209.4g/m2 1.00~1.10 700~1,500
高板・アイボリー190g/m2 1.00~1.05 1,000~2,000

(注)平滑度…数値が大きいほど紙の平滑性は大

 

表の縦の系列、すなわち、新聞用紙、上質紙、微塗工紙、軽量コート紙A3、コート紙A2、アート紙A1など品種間の緊度、平滑度の位置付けとおよその数値を頭の中に入れておくと、いろいろな面で大きな戦力になります。是非、活用できるようにしてください。

緊度は新聞用紙で0.55~0.65、非塗工紙である上質紙は0.80~0.90くらいですが、繊維より比重の大きい塗料(クレーなどの顔料主体)を多く表面塗工されており、かつスーパーカレンダーなどによる加圧処理されているアート紙(塗工紙)では、1.30くらいです。

なお、表中のキャストコート紙は、片面塗工ですが塗工面の平滑度は5,000~10,000秒と高いにもかかわらず、緊度は1.05~1.10くらいと低いが、これは特異な存在でキャストコート紙の大きな特徴です。

キャストコート紙は、キャストコーティング(cast coating)と呼ばれる独特の製造プロセスを経て作られる強光沢(白紙で90%くらい)と優れた平滑性を持つ最高の塗工印刷用紙です。特徴ある塗料や表面仕上げにスーパーカレンダーを必要としないことなどで、塗膜は強光沢・高平滑でありながら空隙に富み、緊度が低くなるわけです。このように緊度と平滑度を組み合わせてみれば、紙の特徴などが掴めることがあるのです。

 

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更新日時:(吉田印刷所)