紙の基礎講座(4-1) 平時の対応

平時およびトラブル発生時の対応

紙の種類・用途によって発生するトラブルの種類は異なりますが、ここでは印刷用紙を主体に、印刷トラブルを例に市場における品質クレームへの対応についてまとめます。なお、ここで述べる考え方、対処法などは、他の用紙にも応用できるものと考えます。

 

品質クレーム減少のために

工場、会社が生き延びるためには、顧客に安心して買ってもらえるための「品質」の安定維持・向上を前提にした収益確保が必要です。

品質は生産現場で作られるという基本原則のとおり、用紙の品質管理、品質保証はそれぞれのメーカーで実施されています。

 

(1)欠陥と戦い、如何にうまく付き合うか

問題解決には基本手順があります。いま品質クレームが発生したとします。そのときにはクレーム防止のために発生状況の把握、それに基づく原因調査および原因の特定(推定も含む)と対策(発生源対策とその検査)の実施、その結果の確認(チェックの実施)、そして止め(標準化・教育)という品質管理のサイクルを円滑に行うことです。

そのことが再発防止につながるとともに、ユーザーの信用を回復し信頼が増し、さらに自社・自工場の技術・技能の蓄積・向上となり、人材の育成にも結びつき、個人のため、工場・会社のために寄与することになるわけです。

ただ、ここで重要なことは解決へのピントが合っているのか。顧客の視点に立っているのかということです。工場のマシンや設備が古いので、欠陥の発生はしょうがない。クレームも大目に見てほしいとの話が出てくることはないでしょうか。しかしこれでは顧客に迷惑を掛けることになります。今の世の中では許されません。少なくとも「悪いものは工場から出さないこと、顧客が欠陥を見つける検査元(検査員)であってはならない」ことです。

工場内では、いつも安定生産にあるとは限りません。発生する品質欠陥と戦い、欠陥に対処し、欠陥と如何にうまく付き合うか。これがポイントとなります。

うまく生産を軌道に乗せ、効率を上げ、歩留りを上げトラブルやクレームを減らすためには、まさに品質欠陥との戦いであり、かつ、発生した、あるいは発生するであろう欠陥を予測した対処が重要となります。

欠陥との戦いとは、欠陥の発生源を極め尽し、如何に根絶するか、どうしたら少なくできるのかなど欠陥に正面から戦いを挑むことです。また、欠陥への対処とは、ある程度の欠陥の発生は止むを得ないとの見解に立ち、発生した欠陥と如何にうまく付き合い、工程のどこで除去したら効率的で歩留りがよいのか、その方法など、あらかじめ備えることです。もし備えがなければ、これからでもその対応をすることです。

そしてもう一つ、生産が通常でないとき、例えば、

  • 抄紙機、コーター(塗工機)など新設備が運転に入ったときに安定するまで
  • 設備の長期休転後、運転に入ったとき
  • 用具替えなどの後の運転初め
  • 紙切れ時
  • カッターの切り始め、切り終わり
  • その他欠陥の異常発生等の操業不安定時などの非常時のときには、新たなトラブルを起こさないよう発生源対策を行うのはもちろん、臨機応変に検紙・検査頻度アップを取るなど、次工程や顧客に対応した品質管理体制作りが必要となります。

このように欠陥と断固として戦い、一方では、うまく付き合いをする、この両方の考え方と対応策を持つことが重要であると考えます。

 

(2)クレーム減少のための4本柱

品質クレームを減らすためには、基本となる4本柱が必要です。まず、クレームとなる欠陥の発生源対策と、それらの欠陥が発生していないか、紙質が正常か、どうかなどを検査・試験する評価体制の確立が車の両輪の関係にあり、基本となる2本の柱です。

これに加えて、クレーム・事故発生を予期しての設備対策、標準化、事例研究、教育・訓練、3S(ないし5S…整理・整頓・清掃・清潔・躾)などを含めた日頃の継続的な予防対策を行うことが次の柱であり、これらが大きな決め手となります。

ここまで実施されれば多くのクレームは減りますが、これでもまだクレームは発生します。それは製品(商品)が工場から出荷された後の流通過程での事故防止や誤使用などです。

紙は万能ではありまん。個々の用途に合うように設計され、製造されています。決して過剰な品質までは付与されていません。コストが掛かり価格が高くなるばかりか、それよりも無駄です。用途に合った品質で充分です。このため個々に用途に合った適性どおりに使われることが重要で、誤って使用されないようにする必要があります。

紙の誤使用や品質設計以外の条件で使用されないで、用紙の適性どおりに満足して使ってもらうためには、用紙の発注・受注に際しては最低限、印刷版式に合致した紙なのか、また、印刷条件に適合した紙なのかなどを事前に確認して、適合紙を選定することが必要です。 しかも平判か巻取かによっても紙への要求品質が異なっていますので、その適性に合った紙をあらかじめ指定することも重要となります。

また、初めての紙に印刷や加工をする場合は、前もって先行試験をするか、卸商・代理店・製紙メーカーに相談するなり、事前に情報を得て事故防止に努めることも肝要です。

このように流通過程での用紙の事故防止や適正使用などの実施がポイントで4本目の柱になります。

なお、製紙メーカーや代理店等が加工・断裁業者などに委託し、加工・再裁断、再包装を行うケースがありますが、このときの品質管理体制作りは、もちろん依頼先であるメーカーや代理店等が責任を持って実施しなければなりません。

このように見てきますと、トラブル・クレーム減少・撲滅のためには、それぞれの立場・持場で品質管理づくりと実行することが大切です。そしてメーカーのみならず、それに関係する代理店・卸商・倉庫業者、印刷・加工業者や製紙関係者などの人達が共通の意識を持つことが必要です。そのためにはメーカーとしては、紙に関連する人達の協力なくして共存共栄はあり得ないとの認識のもとに、関連する印刷(加工)・インキなどの勉強をするとともに、紙商品のPRや製造設備などの関連知識、トラブル対策などの啓蒙を行い、顧客に満足して使ってもらえるように努力をし、リーダーシップを執ることが必要と考えます。

これらのことはトラブル、クレームが発生したときでは遅く、日頃から平時に行い積み重ねることが重要です。

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)