紙の腰について
ここで紙の腰について触れます。表2の③や上掲写真のように紙の縦目、横目の見分け方の1つに、同一幅の紙を机などの角に垂らすか、手で持って垂らす方法があり、「だらり」としている方が横目の紙、「ピン」としている方が縦目の紙です。これは紙の腰の差を利用した判別法です。
麺類などに「腰がある」と表現することがありますが、紙の場合も、「腰がある」とか「腰がない」とかいいます。もちろん、「腰」そのものでなく、「腰の力」の意で用いられ、「弾力、ねばり」などの意味で使われております。
紙の腰は、こわさ、剛度のことで、紙に曲げの力を与えたときの抵抗性を表し、カード類、表紙などに用いられる紙や印刷用紙などは適切な腰を持っていることが必要です。特に薄い紙ほどその要求が強くなります。
なお、JISでは「腰」という用語を使用しないで、「こわさ」が一般的な表現で、「剛度」も用いられます。
それでは、こわさに影響する諸因子は何でしょうか。紙のこわさは、坪量や厚さが大きいほど高くなりますが、特に厚さの影響が大きく、厚さの3乗(実際には 2~3乗で、一般には2.6乗くらい)に比例します。また、厚さが一定であれば、密度(緊度)に正比例し、前述のように、紙の縦方向は横方向に比べて大きいこわさを与えます。
原料や使用薬品の剛性にも影響を受け、例えば、パルプ原料の叩解を進めれば、こわさは向上し、古紙パルプよりもバージンパルプの方が剛性を持ち、大きいこわさが得られます。 さらに、こわさを増すために、紙料に澱粉(でんぷん)やケイ酸ソーダなどの添加が行われることがあります。また水分もこわさに影響し、一般的に水分が多ければこわさは小さくなります。
次にこわさを測る試験法を簡単に紹介しておきます。
①紙自身の重さによるもの (クラーク法、cm3/100…JIS P 8143)…クラークこわさ試験器で測定。
②試験片を一定の角度に曲げるのに必要な力を測定 (テーバー法、mN・m…JIS P 8125)…テーバーこわさ試験器で測定。自重でたわみ難い厚めの紙、主として板紙のこわさを測定する場合に適用。
③試験片に一定の力を加えたときに曲がる角度を測定 (ガーレー法、mN…J.TAPPI No.40)…ガーレーこわさ試験器で測定。
④簡便法…自重によるたわみ測定法 (mN・m…TAPPI UM409)。この簡便法は、机やテーブルの端から紙をー定の長さだけ外へ垂らすと、紙自身の重さによって下へたわみます(表2の③参照)。そのたわみ程度を肉眼で比較します。
なお、紙自身の重さによるたわみ程度を測定することにより、次式により曲げこわさとして数値で求めることができます。
曲げこわさ(mN・m)=(wL4 /8y)×9.81
ここに、wは坪量(g/m2)、Lは曲げ長さ(m)、yはたわみ程度(m)を表します。
(2006年10月1日見直し・再録)