トラブル対応、その前に(11)…印刷トラブルの全体を知るⅠ
これまで「トラブル対応、その前に」シリーズのまとめとして、トラブル対応で出掛ける前の準備知識を紹介してきました。今回はその最終稿として「トラブルの全体を知る」のタイトルで、印刷トラブルを例にして2回に別けてまとめました。
どんなトラブルが待ち構えているのか分かりません。経験したトラブルだけとは限りません。いざというときに調査することやサンプリングなどを手落ちなく不安なく、しかも要領よく自信を持って対応できることが大切です。そのためには事前に「トラブルの全体像」を知っておくことが重要です。
全体像を知る…印刷トラブルの分類・種類
印刷トラブルの種類は多々ありますが、以前に比し、印刷・加工サイドのハード面およびソフト面での改善や技術のレベルアップと、インキおよび紙の品質のレベルアップと安定化などによりトラブルは減少してきています。
それでも、その中で多いものは、ベッセルピックに代表されるピッキング(picking、紙むけ)や紙粉などに起因する白抜けと、波打ち、おちょこ、カールなどの紙ぐせによる印刷しわ、見当不良、給・排紙不良などです。
次いでインキ着肉不良(着肉むら、転移むら)で、ほかに裏移り、冬季の乾燥期に発生しやすい静電気、折り割れトラブルなどですが、まれにグロスゴーストなど珍しいトラブルが発生することがあります。
ところで、印刷トラブルはオフセット印刷関係だけでも、一般的に下記のように分類されております。
- ピッキング(紙むけ)ないし白抜け…ベッセルピック・パイリング・紙粉・異物付着など②紙ぐせ関係…波打ち・おちょこ・見当不良・ダブリ・しわ・カールなど
- インキ乾燥不良…裏移り・スマッジングなど
- インキ転移不良…トラッピング不良・水負けなど
- 画像不良…網点太り・網点細り・版摩耗など
- 給・排紙不良…重送・ブロッキング・腰不足・印刷後カールなど
- 汚れ・縞…地汚れ・浮き汚れ・縞・ミスチング・ゴーストなど
- オフ輪印刷トラブル…ブリスター・ひじわ・折り割れ・ブラン離れ不良など
- その他…グロスゴースト・ドライダウン・静電気トラブルなど
これらをすべて完璧に知っているのに越したことはありませんが、それでは時間が掛かり過ぎ実際的ではありません。ただ、それらの全体を知り、その中でどれか、特に頻度の多いトラブルであるピッキング(紙むけ)や紙粉などに起因する白抜けと、冬場の低湿度時に発生しやすいおちょこ、梅雨時の波打ちや、カールなどの紙ぐせによる印刷しわ、見当不良などを重点的に勉強し、その中からトラブル発生の原理・原則的な考え方や、対応の仕方などを吸収し、応用力を感覚的にも養っておくことが大切です。そのときには過去の欠陥サンプルや写真などを実際に見ながら勉強すると、より効果的になるでしょう。
そして、さらに印刷関係の書籍を身近に置いておき、必要なときにそれを読み勉強して身につけるとよいでしょう。
なお、トラブルとしては上記以外にも、プレスストッパー(印刷機の停止)となり大きなトラブルに結びつくボルト、ナットなどの金属片やその他の異物混入や、水分(湿度)過多、切り口不良などによる白紙状態でのブロッキング(ネッパリ、くっつき)、ストリーク、汚れ、塵などの官能欠陥紙、虫付着、紙片、破れ紙などの不良紙の混入および、紙の厚薄不同に起因する巻取たるみ、印刷機の高速化と用紙の薄紙化に伴う、巻取の断紙トラブルなどさまざまあります。ここでは異物混入や欠陥紙混入などについては、言及しませんが、いずれにしてもそれぞれの発生現象・状況を正確に把握して、迅速に対応し、再発防止することが重要となります。