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縞・ミスチング・ゴースト・給・排紙不良について
今回は縞・ミスチング・ゴーストと給・排紙不良について触れる。
縞・ミスチング・ゴーストトラブル
(1)縞(縞状の色むら)
印刷物の画線部や非画線部に縞状の色むら(以下縞という)が発生することがあるが、画線部の縞はインキの供給・転移むらであり、非画線部の縞は、水着けローラーから版への水の供給むらによって生じるインキ付着汚れである。
縞の方向は、印刷方向に対して直角方向(左右・横方向)と印刷方向(天地・縦方向)に出るものがあるが、前者を総称して条目または筋目と呼び、ギヤ目、ローラー目、ショック目などがある。これはインキの供給・転移が間欠的に異常な場合に発生するもので、印刷胴のギヤ(歯車)の異常に起因するのがギヤ目であり、同ピッチで発生し、版面全体にわたる場合と局部的な場合がある(下図参照)。
ローラー目は、水およびインキの付けローラーの異常に起因するもので、連続的に一定の間隔で発生する。また、印刷胴やローラーなどの機械的な衝撃によって発生する縞がショック目であるが、その発生はショックの程度により、濃度に強弱があり、連続的であったり、間欠的であったり、頻度にもばらつきがある。なお、印刷物の天地方向の縞は、印刷機の直角方向においてインキの供給・転移の均一性が阻害された場合に発生し、インキローラーの局部的な摩耗、汚れ、硬度不良やニップの調整不良などが原因となる。
(2)ミスチング
ミスチング(misting)は、印刷機の運転中に、機上からインキが非常に細かく霧(ミスト、mist)状になって飛散して紙や周囲を汚す現象をいう。高速印刷機、特に高速輪転機で発生しやすく、印刷速度の影響を受け、指数関数的に多くなる。また、粘度の低いインキを使用したり、低温で乾燥した空気中で発生しやすく、通風状態の影響も受ける。さらに、インキローラーの損傷や摩耗による不均一な回転、取り付け状態によっても助長される。インキローラー上の被膜が厚いほど、インキの曳きが長いほどその程度が大きい。従って、ビヒクルの弾性が大きく曳きの短いインキは発生しにくい。インキの電導度にも深い関係があり、電導性のよいインキ(水性インキ)などは発生しにくい。
ミスチングの場合より、比較的粒子が大きく印刷中にインキの細滴が空中に飛散して印刷機および紙を汚す現象をフライング(flying)という。インキが練りロールの間で分断されて発生する汚れであるが、これらは地汚れ・浮き汚れとは原因など、全く異なる現象である。
(3)ゴースト(ゴースチング)
ゴースト(ghost)とは[幽霊、お化け」のことで、ベタ部の一部にぼやけた部分が現れることをいう。すなわち、例えば紙面のくわえ尻側に大きなベタ部、あるいはそれに近い写真(平網)があり、その前に小さなベタや帯状の絵柄があるような場合に、小さなベタや帯状の絵柄によってインキが食われてしまい、ローラーからのインキ供給が間に合わず、大きなベタや平網の部分に小さなベタや帯状のパターン(むら)が生ずる現象をいう。
図50①のような、濃淡のないベタの絵柄が原稿としてある場合、これを印刷したとき、付けローラーのインキがA部のベタ部で消費されてしまい、②のようにC部ではその分だけ着肉量が減り薄くなり、B部と濃度差が生じる。これがゴーストである。対策は絵柄のレイアウトを考慮したり、湿し水を汚れが出る直前まで絞り、インキ濃度を下げ、やや粘着性があるが流動性のよいインキを厚盛りして印刷する。また、インキ付けローラーを調整することによって、ある程度目立たなくなることもある。なお、似たような名前でグロスゴーストという現象がある。これは両面印刷において、先刷り面の画像が、後刷り面(先刷り面の裏面)の画線部上に現れる現象であるが、【印刷トラブルと紙への対応】⑦で後述する。
なお、「ゴースト」について適切な資料がありましたので、ここに引用させていただきました。
JAGAT「オフセット印刷技術のトラブル解決法」より
ゴーストとは,印刷面のベタ刷りや中間部からシャドー部に対して,濃度のぼけた部分が現れ,その形がくわえ側にあるベタや白抜きのある絵柄の影響を受けた 形をしていることから,なにやらその現象が因縁めいていて,まるで幽霊のようだということから,このような名前がつきました。
◆原因
原因には、①くわえ側のベタや白抜きのインキ消費の過不足の影響によるもの。②水上げ量の影響から,インキ着けローラの表面に水がのり、インキを反発することによるもの。③乾燥時の酸化重合過程で発生するガスの影響によるものがあります。
◆処置
ゴーストが発生したときの処置として、
①絵柄に対応してブレードの調整を行うのは当然として,インキの皮膜は可能な限り薄くして,インキ元ローラの送り量を多くします。
②少量の湿し水で印刷するためには,水着けローラの上の均一で薄い水膜の確保が不可欠である。したがって、アルコールやエッチ液まどの添加剤を入れて表面張力を下げ,適正なローラニップで水供給することが大切です。
③給水装置によっても違いはあるが、多くの場合,水着けローラが汚れているかインキが絡んでいる時にはゴーストは出やすい。したがってローラの洗浄と新水化処理を行うことです。
④原色であっても,水を含みやすく,乳化時の粘弾性の変化が少ないインキを採用する必要がある。そのためには,インキを受け入れる時に,これらのデータを把握しておかなければならない。資材,技術担当が十分にインキメーカーと相談の上,対処すべきです。 ⑤インキ着けローラを揺動させることで,ゴーストを目立たなくさせることができます。これは非常に効果の高い方法といわれています。
給・排紙不良
印刷機の印刷部に用紙を送り込む役目をしているところが給紙部で、枚葉印刷機の場合、積み重なった用紙をさばいて、空気吸引装置で1枚ずつ真空で持ち上げ、オーバーラップさせて送り込むストリームフィーダーが多く採用されている。また、印刷を終えた紙は、枚葉印刷機では、くわえ棒に挟まれ、チェーンで排出部の紙積み台まで運ばれパイルされる。
(1)給紙不良
給紙不良には、冬場の低湿度期に発生しやすい静電気や用紙の「ねっぱり」、高平滑による密着などにより紙がくっつき重なって給紙(重送)されるトラブルがある。また、用紙のカール強、腰(手肉・剛度)不足、切り口不良による用紙同士のくっつき(この場合もブロッキングという)によるなどの紙送り不良もある。
(2)排紙不良
排紙不良には、くわえ尻カール、エンボッシングなどによる排紙トラブルや排紙工程の調整不良等による紙揃え不良トラブルや、印刷後の裏移り現象によるブロッキングトラブルなどがある。ここでは給・排紙時においてまれに発生する印刷トラブルを紹介する。
(a) サッカー(空気吸引装置)跡
上述のように印刷機の入り口であるフィーダー部(給紙部)に、さばかれたシートを吸引し送る工程がある(下図参照)。この吸引し持ち上げる装置を空気吸引装置といい、真空にして吸いつける円形状のゴムなどでできており、サッカー(真空吸引子、吸い口、吸ダコ、タコ)と呼ぶ。サッカーは第1、第2の順で紙を吸い上げ、持ち上げて前に送り、コロとフィードローラーの間にシートを送りだし、その先端がわずかに出たところでシートを放す役目をしている。
白紙部に円形ドーナツ状に、サッカーの吸引マークが、印刷物の中央部からくわえ尻付近にかけて発生。一般的に淡黄色で、印刷後では白抜け状になり、発生位置はサッカー取り付け位置と一致し、一定している。原因と対策を表に示す。
原因 | 対策 | |
---|---|---|
1 |
サッカーの取り付け調整不良
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2 |
サッカーの使用不適性
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3 | 真空用空気の汚染
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4 | 用紙の表面強度不足、吸引圧の過大 |
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(b) 吸引車マーク(跡)
印刷機のデリバリー(排紙部)に吸引車という装置が付いている(下図参照)。印刷紙搬送時のバタツキを防止するためのもので、ブレーキ車(バキューム車)ともいう。
吸引車は印刷機メーカーによってタイプは異なるが、必要な装置であり、ほとんどの印刷機に設置されている。印刷機幅方向に数個あり、上部からのファンによるエアーの吹き付けと吸引車による下部からの吸引で紙のバタツキと飛び出しを押さえる機能をしており、これを使わないと紙が揃わない。バキュームの調整は紙の斤量(厚物、薄物)、紙くせの状態によって多少変えている。
吸引のタイプには固定式と回転式がある。例えば、ローランド印刷機は固定式、小森リスロン印刷機はプラスチック巻きの吸引車を使用している。固定式の場合、紙面は装置に微かに接触しているが、ごくわずかな吸引力で機能を果たし、このセクションでトラブルが起きることは少ない。回転式タイプの場合、吸引車の周速は原則として印刷機のラインスピードと同速である。吸引には金属パイプ式、ゴム巻きタイプ(被覆ゴムは定期交換)、吸盤タイプなどがある。また、吸引車のセット位置が変えられる可変式もある。
印刷機の印刷面側には可能な限り印刷紙面に物が触れないように工夫が施されてあり、傷がつくことは少ない。紙面に傷がつくのは裏面刷りに入った際に先刷り面に傷がつくケースがほとんどで、この場合も原因は先刷りインキの乾かないうちに裏面刷りに入ったためにインキの固着等によって発生することが多い。本来、吸引車自体が汚れや傷の原因になることは少ないが、場合によっては次のようにトラブルになり得る。吸引車は印刷面の裏面が当たっているが、トラブルとして上記のように、
①裏面刷りに入った際に先刷り面に傷[吸引車マーク(跡)=型付き]がつくケースと、②先刷り時に吸引車の過度な吸引により裏面の白紙表面を破壊し、後刷り裏面印刷でその部分が取られマーク状に白抜けを起こす。いわゆるパイリング現象が発生するケースが考えられる。いずれも規則性とその形状で発生場所は特定できる。しかし②の場合は、後刷り時に発見されるために被害が大きい。特に紙のバタツキが大きく、それを押さえようと吸引力を上げたときに起きることがあるので、その場合はチェックが必要である。
また、①の場合は、先刷りインキがよく乾いているか確認する必要があるが、①および②の対策として、吸引力の調整(圧ダウン)、吸引車の速度調整、吸引車への被覆テープ巻き付け、あるいは印刷速度ダウン等を行う。この中でも吸引力の調整・適正化が最も効果的である。また、裏移り防止用のパウダーが溜まりやすい部分であるので、常日頃の点検、清掃が大切である。
(2008年2月1日)