紙の基礎講座 印刷編(8) モアレトラブルについて

※このページは元サイトで画像が抜け落ちていた部分をグレーで示しております。

 

モアレトラブルについて

 

モアレとは

今回は印刷で発生するモアレについて説明します。モアレはフランス語(moiré)で、波形模様の意味で、干渉縞ともいいます。点または線が幾何学的に規則正しく繰り返し分布したものを複数重ね合せたときに生ずるそ縞状の斑紋模様のことです。

モアレは、網版印刷物を原稿として網版を複製するときなどに起りやすくなります。例えば、お札のです。右の写真ですが、ニセ札判別シート(ポリエステル製)をお札に重ね、「モアレ」の有無でチェックしたときの比較です。

千円札の本物をルーペで拡大して見ると、細かい線によって描かれているのが分かります。これにニセ札判別シートを重ねると、本物の千円札(右)には野口英世の肖像画の頭髪と左肩あたりにモアレが発生します。一方、カラープリンターなどで作ったニセ札(左)は、遠目には線のように見えても、実際には小さな点(網点)を集めて描かれています。このため、本物のようにくっきりとしたモアレ現象は起きません[2006年5月7日付朝日新聞日曜版beの「技あり」の欄「ニセ札判別シート しま模様が出たら一安心」から引用]。

 

basic-lecture-of-the-paper-109.jpg

なお、オフセット(平版)印刷では画像の濃淡(階調)を表現するために、大きさの異なる網点を用います。すなわち、色の濃さを規則正しく配置された点それぞれの大きさで表現します。このため、印刷された写真などをもとに原版を作成して再び印刷すると、網点のピッチの違いや、ピッチが同じでもわずかな傾きによってモアレが発生することがあります。上記、お札の例ではニセ札判別シートを当ててのモアレの有無を調べるものでしたが、実際にモアレの出た印刷物は極めて見栄えが悪いため、印刷においては注意して避けるべき点の一つです。

なお、印刷現場などでは、線数メーターと言うフィルムを使うと簡単にモアレを見ることができます。印刷物の網目(スクリーン線数)が何線であるかを調べるときに、スクリーン線数メーターを利用しますが、線数メーターを印刷物の絵柄部分に当てれば、該当線数のところでモアレが発生しますので、印刷物の印刷線数が分かります。スクリーン線数メーターは印刷学会出版部で購入できます[スクリーン線数メーター(IGS線数メーター)、1枚1050円…800線まで計測可能…右写真](参照印刷学会出版部_Home)。

なお、先の「ニセ札判別用マジックシート」は、このスクリーン線数メーターと原理的に同じですが、前者は「線」の集まりの印刷物に、後者は「点」の集まりの印刷物に適用し、モアレを発生させ識別します。

 

モアレの発生原因

モアレの原因は、複数の繰り返しパターンの干渉によって起こります。機械調整不良によるものに、爪抜けによる網点ダブリがモアレの原因になることがあります。また紙伸びによる極端な見当不良もモアレの原因になります。

網点による濃淡の描写は網点の大きさ、密度、および網点の並びの「角度」が影響します。1インチ(2.54mm)の幅にいくつ網点があるかを表すのが「線数」、いわゆる「スクリーン線数」で、密度は一般に「濃度」で、濃いほど黒く、淡いほど白くなります。一定濃度の網点が並んだときに網点が互いに干渉して幾何学的な模様、すなわちモアレが発生します。特にカラー印刷では、モアレを目立たせないために、各色の「角度」(スクリーン角度)の組み合わせが重要です。

 

スクリーン角度(基本角度)

ホームページ特色を出力するときの角度は?から引用

 

網点のスクリーン角度を変えて重ねたとき、モアレがでない角度が45°(度)もしくは30°です。網点は格子上に並んでいるので、90°回転すると同じ形になります。ですから、網点の角度は90°で振り分けることになります。90°だと45°の角度をとると二つの分版しか作れません。30°でも三つの分版です。

通常のカラー印刷では、シアン(C、藍)、マゼンダ(M、紅)、イエロー(Y、黄)、ブラック(K、黒、)による四色のインキが使用されています。四色の場合、四つの角度が必要ですので、CMKの三色を各30°で振り分けて、残ったYを15°にします。Y版は人間の目にとって、もっとも見えにくい色でモアレが目だたないので、角度はCMKの版を各30°で振り分け、Y版をその中のいずれかの間に15°の角度にします。一般に、シアンを15°、イエローを30°(ないし0°)、ブラックを45°、マゼンタを75°とすることが多く行われます。なお、目立たないイエローは30°以外の場合もり、Y版を0°に設定することがあります。

 

ハーフトーンセルの角度

ホームページ第八講 印刷物をスキャニングするから引用

Y版 0度

C版 15度

M版 45度

K版 75度

合成版

 

 

モアレ対策

それではモアレを防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。モアレを防ぐには、モアレの発生原因となるパターンの干渉をできるだけ起こさない、あるいは目立たせないようにする工夫が必要です。そのためには、次のような対策が行われています。

  1. CMYKそれぞれの網点角度を変え、差をつける…各色の網点は、単に重ねるだけではモアレが発生することがあります。その対策として基本はシアン、マゼンタ、ブラックの3版の網点角度は30°ずつずらします。具体的にはシアンを15°、ブラックを45°、マゼンタを75°とすることが一般的に、多く行われています。なお、イエローを30°に設定することもありますが、それ以外もあります。もともとイエローはモアレが目立たないため、イエローは上記のように0°に設定し、角度の差はあまりつけないで、通常、シアン、マゼンタと15°ずらします。
  2. 入力密度の変更、フィルタ処理(ぼかし)などの実施。
  3. UCRマスクを使用する…原稿のグレー部分から3色のインキ量を少なくし、を代わりに印刷する方法の実施。
  4. FMスクリーニングの採用などがあります。

(2009年8月1日)

 

参考・引用資料

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)