製本関係について
製本とは、原稿や印刷物または白紙などを糸・針金・接着・リング等で綴じて表紙をつけ本の形にすることで、和装本(和綴じ)・洋装本(洋綴じ)に大別されます。和装本は中国から伝来し、日本で古くから行われている装丁方法による本。折本・巻子本(かんすぼん)・冊子本(明朝綴じ・大和綴じなど)があり、洋式の場合は上製本(本製本)と仮製本(並製本)があります。
なお、装丁・装釘・装幀(そうてい)とは、(本来は、装(よそお)い訂(さだ)める意の「装訂」が正しい用字。「幀」は字音タウで掛物の意) 書物を綴じて表紙などをつけること。また、製本の仕上装飾、すなわち表紙・見返し・扉・カバーなどの体裁から製本材料の選択までを含めて、書物の形式面の調和美をつくり上げる技術のことをいいます「広辞苑(第五版)…CD-ROM版(発行所:株式会社岩波書店)」。
なお、下図に装丁の名称などを示します。
説明
- 小口(こぐち)…切り口 本を読むとき開く部分
- 天(てん)…本を立てたとき上となる部分
- 地(ち)…本を立てたとき下となる部分
- 見返し…表紙と本の中身をつなぐ役割のある紙
- 扉…本の見返しの次にあり、書名・著者名などを記した頁
- 奥付…書物の終わりに付ける著者名・出版年月日・刷り歴を記した頁
上製本(本製本)と仮製本(並製本)について
上製本(本製本)
上製本とは、本の中身をしっかりと糸でとじ、別仕立ての厚めの表紙でくるむ方法です。表紙と中身の寸法の差を「チリ」とよび、この「チリ」は上製本だけの特徴です。表紙と中身に間には「見返し」と呼ばれる紙を挟んでのりづけしてあり、丈夫な表紙と糸かがりした本の中身をしっかりと固定しています。上質な雰囲気を醸し、長期の保存に耐えられるのが大きな特長です。
もう少し詳しく説明します。
上製本とは、本文と表紙は別に製作し、芯ボールや厚紙にクロス(布)、紙を貼り合わせた表紙を、本文より少し大きく仕上げたものです。長期間の保存に耐え、高級な雰囲気を醸し出す上製本は、小説や事典、記念誌、写真集などの製本に用いられています(上製本の基礎知識|ブックンの製本工場)。
仮製本(並製本)
仮製本は、上製本に比べて工程が簡略化されるため、最も簡単で安価な製本の方法ですが、耐久性が低く、雑誌や週刊誌、カタログ、パンフレット、DMなどの商業印刷物に広く使われています。
仮製本には「中とじ製本」と「無線とじ製本」があり、用途に応じて使い分けられています。
中とじ製本
中とじ製本とは、表紙と中身を一度に丁合※して折り合わせ、背から見開きにかけて針金や糸でとじる方法です。本を2つに折った真ん中をとじるため、独立した背の部分がないのが見分け方のポイントですが、構造上、厚みのある本には適していません。
※丁合…本の中身をページ順にそろえ、1冊分ずつまとめる作業のこと。
無線とじ製本
無線とじ製本とは、表紙を除いた中身だけを丁合し、背の部分を裁ち落として接着剤で表紙を貼り合わせる方法です。全自動ラインで大量生産が行えるため、雑誌や一般書籍の大半にこの製本方式が用いられています。無線とじ製本では表紙を貼り合わせてから、背を除く三方向を裁ち落とすため、表紙と中身が同じサイズになり、表紙がやや大きい上製本とは簡単に区別することができます(仮製本(並製本)の基礎知識|ブックンの製本工場)。
製本および綴じ方の種類
次に製本と綴じ方の種類について説明します。
名前 | 種類 | 説明 |
---|---|---|
中とじ | 表紙と中身を重ねて開いた真ん中の折り目を針金や糸でとじる製本。本が厚くなると中心ページ付近は仕上りサイズが小さくなり、字切れなどに注意が必要です。例えば週刊誌、パンフレット、小冊子などに適用されます。 | |
平とじ | 本の背から5mmほどの位置に針金で一括してとじる製本。耐久性は劣りますが、綴じた部分まで開かず扱いにくくなります。例えば教科書、コミック、報告書などに適用されます。
針金のとじしろと本の開き具合を考え、折の中心から左右に20mm程度のアキをノド側に増やす必要があります。 |
|
無線とじ | 本の背を3mmほど断裁し、接着剤でとじ、表紙でくるむ製本です。とじた部分まで開けます。雑誌、文庫本、写真集など並製本に適用されます。 | |
糸かがりとじ | 本の中身を化粧断ちします。とじてから表紙をつけます。上製本で使われるやり方です。本がのどぎりぎりまで開けられるので、版面を広くとることができます。 |
他に、
あじろとじ
あらかじめ、折り工程で本の背に無数の切れ込み加工をし、接着剤でとじ、表紙でくるむ製本。 無線とじより耐久性があるが、仕上げがし難い。(例)一般書籍、文庫本
糸とじ
本の背を糸縫してとじる製本。とじた部分まで開けられ、耐久性も良い。書籍、百科事典なと。
天のり(横のり)
天(横)の部分を糊で固定し、一枚づつ剥がせるようにしたもの。(例)メモ帳、便箋など。
天とじ(横とじ)
天(横)の部分を綴じたもの。(例)カレンダー、伝票など。
なお、綴じ方とその方法についてはここをクリックしてご覧ください。
用紙の目の選び方について
製本する場合の用紙の目の選び方も重要です。下図には紙の目と製本および紙の目と製函の正誤を示しました。すなわち、左の図は紙の目を綴じる方向と平行にすると平らになり、○、逆は膨らんだようになり、×。真ん中の図は、順目だと本文の開きがよくなり、逆目だと悪くなります。また右の図は製函時の状況を表していますが、順目だと正常ですが、逆目だと膨らんだような状況になり×です。
紙の仕上がりサイズにより用紙の目の選び方
紙の仕上がりサイズにより用紙の目の選び方は違います。右の図は目を決めるために紙をサイズ別に表してみました。
なお、横本の場合は逆になります(印刷の種類、用紙、製本、レイアウトのマメ辞典)。
列番号 | 寸法(mm) | 列番号 | 寸法(mm) |
---|---|---|---|
A列 | B列 | ||
A0 | 841×1189 | B0 | 1030×1456 |
A1 | 594×841 | B1 | 728×1030 |
A2 | 420×594 | B2 | 515×728 |
A3 | 297×420 | B3 | 364×515 |
A4 | 210×297 | B4 | 257×364 |
A5 | 148×210 | B5 | 182×257 |
A6 | 105×148 | B6 | 128×182 |
A7 | 74×105 | B7 | 91×128 |
(注)印刷物の仕上りの寸法(大きさ)で、A全判、B全判とは、A1、B1を指します。
(2010年1月1日)
参考・引用文献
- 紙 -紙と印刷、品質クレームへの対応- 増補改訂 下巻…中嶋隆吉(王子製紙株式会社 1997年発行)