紙の基礎講座 印刷編(14-3) 紙の製造について3.塗工・加工工程

3.塗工・加工工程

次の「塗工・加工工程」は、一般に紙、プラスチックフィルム、布などの素材の表面に他の物質を塗布する工程をいう。紙の場合は、塗工原紙、塗布液(塗料)、塗工機・加工機の組み合わせとスーパーカレンダーやマットカレンダー等による艶出し仕上げにより、塗工紙(加工紙)を造る。

塗工紙は、紙の表面に顔料と接着剤を主体にした塗料(コーティングカラー、ただ単にカラーという)を片面あるいは両面に塗工し、印刷適性を高め、高感を持たせた紙であり、非塗工紙と比べて、その需要が増加している。

塗工の目的は、パルプ繊維が露出している原紙表面の凹凸をインキ受理性がよく、不透明な塗料を塗布、被覆して、均ーでかつ平滑性が高く印刷適性の優れた紙面を得ることである。従って紙に塗料をコーティングすることにより、平滑度、光沢度、白色度、不透明度、インキ受理性、表面強度などが向上し、すぐれた印刷効果が得られる。

なお、塗料は、顔料(ピグメント)に分散剤を添加して水に分散し、これに接着剤および助剤を加えて調整した水性系である。塗料の組成は、塗工紙の諸性質に大きな影響を及ぼすので、非常に重要であり、その原料の種類と配合については各社のノウハウになっている。 そしてその一般的な組成は、

  • 顔 料:100部(カオリン、炭酸カルシウムなど)
  • 接着剤:10~20部(澱粉、ラテックスなど)
  • 助 剤:1~5部(分散剤、消泡剤、染料など)

からなっており、他に水が加わって重要な役割を果している。塗料は原紙を被覆して平滑な塗工膜を形成し、インキを受理し、良好な印刷効果を発現し得るようになっていなければならないので、塗工機に適合した塗工性・操業性と要求品質に合致した塗工品質が得られ、かつ、できるだけ経済性を加味して設計されている。次表に塗料薬品の主な添加目的と種類を掲げる。

表 塗工薬品の主な添加目的と種類
 主な目的種類特徴

顔料

(ピグメント)

平滑度、光沢度、白色度、不透明度、インキ受理性などの向上 クレー(カオリン) カオリナイト、加水ハロサイト、セリサイト、ロー石クレー 紙の平滑度、光沢度、白色度、不透明度、インキ受理性など印刷適性を向上させる主役をなす、塗料の主成分
炭酸カルシウム 沈降性炭酸カルシウム、粉砕性炭酸カルシウム 白色度、不透明度、インキ受理性、吸水性などの改善
サチンホワイト(サチン白) - 白色度、インキ受理性、吸水性などの改善。ただし接着剤所要量は増加
二酸化チタン - 白色度、不透明度の向上。ただし高価
水酸化アルミニウム - 白色度の向上
プラスチックピグメント - 不透明度・光沢度・白色度の向上、崇高な塗工層確保
酸化亜鉛 - 白色度、不透明度、インキ受理性、乾燥性などの改善(カゼイン処方に適用)

接着剤

(バインダー)

  
顔料粒子を相互に接着すると同時に、それを原紙に接着する作用をするもの  オーストラリア、ニュージーランド産ミルクカゼイン - 然接着剤、接着力大。ただし高価
大豆蛋白 - 大豆から抽出、米国で主に使用され、わが国では採算上、ほとんど使われていない
澱粉 酸化澱粉、カチオン化澱粉 然接着剤、耐水性劣る。安価。トウモロコシ澱粉が主体
合成ラテックス スチレン・ブタジエン共重合ラテックス(SBR)、メチルメタアクリレート・ブタジエン共重合ラテックス(MBR)、アクリル系・エチレン・酢酸ビニルラテックス 最も多く使用されている合成接着剤。塗料粘性、耐水性、平滑度、光沢度、白色度、不透明度、インキ受理性などの改善
ポリビニルアルコール(PVA) - 接着力最大。ただし塗料流動性不安定や耐水性不足などが問題
分散剤 顔料の分散、塗料粘度コントロール ピロ燐酸ソーダ、トリポリ酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ポリカルボン酸ソーダ -
粘度調整剤 流動性改善 ジシアンジアミド、尿素、アルギン酸ソーダ、CMC -
ダスティング防止剤 カレンダーダスティング防止、光沢仕上げの改善 ステア燐酸カルシウム、ワックスエマルジョン -
耐水化剤 接着剤の耐水化 ホルマリン、メラミン樹脂、グリオキザール、ほう砂、ケイ酸塩、ヘキサミン、尿素樹脂、亜鉛、アルミニウム、錫化合物 -
防腐剤 腐敗防止 ホルマリン、ペンタクロロフェノール -
消泡剤 発泡防止、消泡作用 ポリグリコール脂肪酸エステル、トリブチルフォスフェート、リン酸エステル、シリコン、高アルコール、パインオイル -
染料 調色 有色染料、蛍光染料、着色顔料 -

 

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更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)