紙の基礎講座(17) 〈資料〉 クレーム発生時のチェックリスト

表2.クレーム発生時のチェックリスト(紙商営業マニュアルから抜粋・加筆)

項目チェックする理由・ポイント備考
1
製紙メーカー 当該紙のメーカーを確認することは、以後の処理の先決事項 *印刷所の担当者が、メーカー名を誤る場合があるので、これを防ぐ
2
ロット番号 銘柄・レッテル・ロット番号の確認により、クレーム処理はスムーズに行われる

*ロット番号から抄造年月日、銘柄・坪量、工場・マシン、断裁、検査責任者など紙の履歴を知ることができるため、抄造時にさかのぼって、起こりうるクレームの原因を究明することが可能

*流通段階で小判裁ちする場合には特に必要

3
クレーム数量 数量はクレーム処理のための重要事項 *迅速、的確に処理するために立ち合い前に、補填銘柄の在庫などのチェックをしておく
4
残品量 クレームが発生した紙の残品を処理するのに必要 *クレーム調査・分析にも活用
5
銘柄保有量、場所 用紙差し替えの時に知っていなければならない *迅速な措置対応として必要
6
トラブの具体的かつ詳細な状態 真の原因の究明と処置、再発防止のための本質的作業

-

7
不良見本の採取 トラブルを生じた紙、紙粉、印刷カール、異物などの採取は必須事項 -
8
使用機械と操作条件
  • 印刷機であれば、その版式(平版、凹版、凸版など)、型式、印刷速度、印圧などどのような条件下で、紙が使用されたかを知ることが必要(印刷速度などは、紙メーカーへの品質設計変更要請のために必要)
    • *オフ輪の場合は、印刷機型式、乾燥方式、乾燥温度、インキなどの把握も重要
  • 加工機などであれば、その使用条件

*版式によって起こりやすいトラブル

  • オフセット見当不良、紙ムケなど
  • グラビア…インキ着肉不良など
  • 凸版…平滑不良によるインキ着肉不良

*印刷速度

  • 枚葉…1時間あたりの印刷枚数(枚/時)
  • 輪転…1分間あたりのスピード(m/分)・回転数(rpm)
9
インキ インキの種類と、メーカー、銘柄、タックなどのチェック

*タックの高低とトラブル

  • 高い…紙ムケが起こりやすくなる
  • 低い…網点がツブレやすくなる
*インキの種類によって印刷光沢、乾燥方式などが異なるのでチェックを要する
10
湿し水 その種類と量、pΗ、循環などpΗ管理方式、アルコール併用などのチェックは紙ムケ、トラッピング、インキ乾燥不良などの判断に必要(湿し水が多いと紙が濡れて、紙ムケ、見当違い。少ないと、湿し水の役目をしなくなり、インキ汚れが発生しやすい)

*湿し水のpΗは5.5 くらいが理想

  • 5.5 以下…インキの乾燥性が悪くなる
  • 5.5 以上…インキと油が混じり、汚れが起こりやすくなる
  • pH5.5 は中性紙の場合も適用される
  • 水道水はpΗ6.5 位
11 印刷色数、刷り順 どの色の時、どんなトラブルが生じたかを知る *何色目にトラブルが生じたかを知るため
12 使用場所の環境(外気・ギロチン室条件も) 湿度・温度、空調状況などを知ることにより、紙、水分、インキタックに与える状況の推定が可能(温・湿度測定器、静電気測定器の活用) *関係湿度と紙の水分は密接な関連があり、紙ぐせ、しわ、静電気発生などの原因を知るため
13 用紙使用前後の水分 トラブルを生じさせた水分の変化を知る(水分計・温湿度測定器の活用) *特にオフ輪での折割れトラブル発生時には必要
14 用紙の搬入経路 荷傷などの発生場所をチェックする -
15 平判紙山姿、断裁小口(出入および付着紙粉)状態 カール、波打ち、タイトエッジなど紙ぐせ状況、寸法精度と突き揃えおよび紙粉状態を知る -
16 巻取紙の荷姿、硬さ、タルミ状況 巻取作業性上のトラブル、荷傷のチェックのために行う *シェミットハンマー(測定値が記録に残る)による巻取叩択チェックは有効
17 印刷、加工物の用途、需要先 発注先を知り、必要な対応処理を取るため(客先の重要度とその対応は、非常に大切) *場合によっては、担当役員まで状況などを報告し、対応することも必要

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)