印刷方式の特徴と用紙の印刷適性
印刷方式は版のタイプによっていくつかの種類に分けられますが、ここでは3大印刷方式と言われている印刷方式の特徴や用紙に要求される印刷適性などをまとめました。なお、凸版印刷方式であるフレキソ印刷と孔版については割愛しました。
版式 | 凸版印刷 | 平版印刷 | 凹版印刷 | |
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印刷名 | 凸版・活版印刷 | オフセット印刷 | グラビア印刷 | |
原理 | 金属版、感光性樹脂版などの凸部(画線部)にインキを盛り、加圧して、直接紙に転移させる(直接印刷)。この方式によるカラー(多色)印刷を原色版という | 版には凸凹版のように高低差はなく、ほぼ同一平面で構成されている金属平版の非画線部(親水部)に水を与え、また、画線部(親油部・感脂部)にインキを盛り、ゴムブランケットに接触転移させ、さらにブランケットから紙に転写させる(間接印刷) | 金属版の凹部(画線部)にインキを満たし、加圧して、直接紙に転移させる(直接印刷)。なお、非画線部のインキは、事前にドクターで掻き落とす | |
特徴 | 水なし平版といって水(湿し水)を使用しない平版印刷もあるが、一般的には水を使う。またブランケットを介しての間接印刷であり、インキタックが高いことが特徴 |
階調表現が豊富。高度な製版技術が必要。高価。環境問題大。 被印刷物の選択範囲大。エンドレスの版使用可 |
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最近の動向 | 新聞・出版での印刷はオフ化により減少傾向 | 増加傾向 | ほぼ横ばいで推移 | |
印刷条件 | 版材 | 金属版(銅、亜鉛)、感光性樹脂版 | 金属版(アルミニウム、亜鉛) | 金属版(銅、クロムメッキ) |
ブランケット | 不使用 | 使用(ゴムブランケット) | 不使用 | |
製版 | 制作に時間が掛かり、比較的高価 | 比較的容易で安価 | 制作に時間が掛かり、高価 | |
耐刷力 | 大(10~20万通し) | 小(5~20万通し) | 大(100~200万通し) | |
濃淡の方法 | 網点の大小 | 網点の大小 | (セル)凹部の深さ | |
印刷速度 |
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印圧 |
ベタ部で5kg/cm2、活字の先端では、この2~3倍 | 5kg/cm2程度 | 20~50 kg/cm2 | |
インキの乾燥形式 |
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蒸発 | |
ビヒクルの組成 |
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(環境・安全対応として大豆油インキの採用) |
(環境・安全対応としてノントルエン化と水性化の登場) |
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インキ粘度 |
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0.5~5p | |
インキタック |
― 巻取…1~7 |
枚葉…7~12 巻取…4~8(新聞2~5) |
― | |
品質ポイント | 金属版による直接印刷であることから、特にインキ着肉性をよくするために用紙の平滑性や弾性(クッション性)が重要 |
一般的に水を使うこと、インキタックが高いことおよびゴムブランケットを介しての間接印刷であることから用紙として表面強度や耐水性が重要 |
金属版による直接印刷であるが、凹版であることから、特にインキ着肉性をよくするために用紙の平滑性や弾性(クッション性)が最重要 |
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平滑性 | 必要 | 凸版ほどは不要(ゴムブランケットを介するためある程度の凹凸は許容) | 最も必要 | |
弾性(クッション性) | 必要 | 問題なし | 最も必要 | |
表面強度 | 中…あまり問題なし | 高…最も必要 | 低…あまり問題にならない | |
耐水性 | 問題なし | 最も必要 | 問題なし | |
紙への主な品質要求 | 重要品質項目 |
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[注]水なし平版について 普通のオフセット印刷は、水(湿し水)を使うが、これを使用しない印刷が水なし平版である。それに適正な用紙は、上記、水あり平版適性用紙と同じ印刷適正でよい。 水なし平版開発当初は、インキタックが高く設計されていたため、紙に対して表面強度アップへの要求があったが、印刷機・インキの改善によって是正されている |
[注]
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巻取適性 | 特に高速巻取印刷では、たるみ、厚薄、紙力、断紙対応などの巻取適性付与が必要 | 同左 | 同左 | |
用紙の形態 | 主に巻取 | 平判と巻取 | 主に巻取 | |
適合印刷用紙 (印刷媒体) |
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主な用途 |
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印刷物の特徴 |
[注]版についたインキが印圧によって外側に押し出されるため、拡大して見ると輪郭に沿って濃く、中心部が薄い。これをマージナルゾーンという。 |
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(2007年11月1日追加)