コラム(2) 紙は文化のバロメーター

鳥取県で開催された「国民文化祭」、「第17回国民文化祭・とっとり2002 夢フェスタ とっとり」が閉幕(11月4日)しました。

文化に終わりはありません。これからも着実に定着し、進歩しなければなりません。

「紙の消費は文化のバロメーター」と言われ、「製紙および印刷事業は文明の源泉」、また、印刷業界には「印刷あり、文化あり」というスローガンがあります。紙と印刷は緊密な関係があり、ふるい時代から長く文化の担い手になってきました。これからもその使命を果たしていかなければなりません。

ここで紙関係の世界におけるわが国の位置付けを、最近のデータ(2001年)[日本製紙連合会資料]から見てみましょう。

  • 紙・板紙生産量…米国、中国に次ぐ世界第3位。3,073万t(世界の約10%、米国は約25%)。
  • 紙・板紙消費量…同上(世界第3位)、3,084万t(世界の約10%に相当)。
  • 古紙消費量…同上(世界第3位)、1,779万t(世界の約12%に相当)。

生産量、消費量とも米国は別格。最近中国の伸びが大きく、わが国を超え2位に躍進。

人口が違いがありますので、一人あたりに換算しますと、

  • 国民一人あたりの紙・板紙の年間消費量…242.8kg、世界第8位[デンマーク1位、ベルギー2位、米国3位]。

生産量、消費量とも絶対数量の多い中国は29.2kgで、まだまだ世界の平均以下です(世界平均 52.0kg)。

 

なお、わが国は1945(昭和20)年に終戦を迎えましたが、その年の国民一人あたりの紙・板紙の年間消費量は、3.6kgでした。その翌年は最低の2.8kgとなりましたが、漸次、増加し、1953(昭和28)年には、生産量、消費量とも戦前のピークを超え、経済の復興を成し遂げました。このときの一人あたりの紙・板紙の年間消費量は20.2kgです。その後は経済の成長・発展とともに、ゆとりもできて世界へ羽ばたいていきます。ちなみに、飛躍している中国の現在の一人あたり年間消費量約29kgは、わが国のおよそ45年前の1956~57(昭和31~32)年ころの数量に相当します。

 

また、わが国の古紙関係は、

  • 古紙回収率…62.0%(世界トップクラス)。世界平均48.4%(米国48.7%、中国33.8%)
  • 古紙利用率…58.0%(世界トップクラス)。世界平均48.7%(米国41.2%、中国57.3%)

日ごろ見たり、使っている紙の半分以上が古紙から造られています。

さらに、今後の古紙利用率の目標は、2005年度までに60%達成で、現在展開中。

 

リサイクル、再生紙の歴史も古いのです。その昔は、紙は大変貴重なものでしたから、使用済みの紙の裏などを使用したり、再び漉き返して使ったといわれます。文字などが書かれて不用になったり、書き損なった紙を反故(古)<ほご>ないし反故紙といいますが、奈良時代の正倉院にある文書、いわゆる正倉院文書の中には、反故紙を原料にした本古紙(本久紙)の存在が確認されています。また平安時代には、反故紙を集めて漉き返した紙を宿紙(しゅくし、すくし=水雲紙)と言いました。その頃は今のように脱技術のない時代でしたから、その紙は薄く色が残っており、後世このような紙は「薄紙」とも呼ばれています。まさに古紙の再利用であり、今日でいう再生紙です。今は脱技術もあり、より白い再生紙も出来るようになりました。これも偉大なる文化の継承、進化といえます。

 

今も紙は貴重です。資源の乏しい日本。球環境改善、保護が叫ばれている今日。伝統のなかで進化している紙。わが国は、製紙技術も世界有数の水準の高さを誇っており、トップクラスの製紙国となりました。

今後とも切磋琢磨し、さらに私たちの生活、文化向上に大きく貢献してほしいものです。

(2002年11月1日付け)

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)