今、電子メールとかホームページに代表されるインターネットなどの電子媒体が進展しています。そしてデジタル化、IT(情報技術)革新が進む中、紙の存在を危ぶむ声もあります。「紙」は、それらと棲み分けて共存していくものと考えますが、今回は著名な方々のメッセージを引用させていただき、「進化しながら頑張れよ」との紙への応援歌も含めて、「紙媒体への賞讃」を掲げます。
デジタル化時代で出版界は揺れ動いているが、紙でないと絶対に実現できない出版物に出会った。パソコン画面が紙の表現力に勝てないことをまざまざと知らされた。しかもこういうものを銀行が出版したことに驚いた。銀行のありようが強く問われている時代だが、これほど見事で文化的な郷土貢献を考えた鳥取銀行には大拍手をささげたい。これこそ、これからの出版界が目指さなければならない。デジタル時代に勝てる紙ならではの出版物と確信した
これは去る3月1日土曜日、日本経済新聞の別刷り、生活情報週間紙「NIKKEI プラス1」に載った記事の要旨です。その10面にある「電脳生活」'デジタルスパイス`に山根一眞氏(ノンフィクション作家)が執筆されたもので、タイトルは「鳥取銀の写真集 紙媒体の力表現」です。
これほどまでに電子媒体と紙媒体とを比べて、紙媒体の素晴らしさを謳いあげた文章に出合ったことがありません。凄い賛辞ですね。感動しました。
是非、全文を読んでください。日本経済新聞を読まれるか、次のサイトでもご覧できます。
参照
このサイトには、日本経済新聞連載中の「デジタル・スパイス」が1997年分からすべて収録されています。掲載順で探し、2003年3月1日分『写真集「鳥取百景」紙媒体の表現力』をクリックしてください。
なお、一発で上記サイトが出ないときは、株式会社ネットアドバンス(株式会社小学館のグループ会社)のサイトJapanKnowledgeのトップページ中央部にあるナレッジ・セクション「山根一眞氏のIT書斎術百科」をクリックすれば、上記サイトにたどりつけます。
山根氏は著名ですので、説明するまでもないと思いますが、若干、触れておきます。なお、このサイトの中に氏のプロフィールがありますのでご参照ください。
山根一眞(やまねかずま)氏は東京都生まれですが、ご先祖は鳥取でお墓も鳥取市にあるそうです。モバイルの開祖と称されており、ノートパソコンなどを持ち、わが国はもちろんのこと世界各国を飛び歩き、取材・執筆活動を続けられておられます。宇宙開発事業団嘱託や2005年開催の日本国際博覧会(愛知万博)「愛知県パビリオン」のプロデューサーに就任されるなど多くの要職も務められており、幅広く精力的に活躍中です。
また、写真集「鳥取百景」についても紹介しておきます。
写真集「鳥取百景」は、鳥取銀行が創立50周年記念事業の一環として、1999(平成11)年10月1日に発刊されました。郷土鳥取県内の39市町村すべてにわたって、四季折々の豊かで美しい自然を、しかも、すべて大型パノラマカメラを用いて、鳥取在住の写真家、池本喜巳さんがおよそ3年かけて撮影されたワイドな写真で「20世紀の鳥取県の遺産」として後世に残そうと企画されたという。
写真集は非売品ですが、鳥取県内の全市町村、商工会、学校、図書館等に寄贈されており、鳥取銀行のすべての店舗のロビーにも据え置きされたという。
私はこの日経の記事により知り、先日地元にある米子市立図書館で見ました。写真集の本文にはグロス系の塗工紙が使用され、カラー4色刷り、ほぼB4判(364×257mm)の判型で、写真は左右2ページの見開きにして、縦は24cm強ですが、横幅が73cmと大きく、躍動的な力強さを感じさせるダイナミックで、迫力ある美しい風景が目の前に迫ってきます。ちょうどその場所に行って、その風景を見ているようで強烈な感銘を受けました。本当に素晴らしい企画であり、写真だと思います。
なお、写真美術館「鳥取百景」のサイトは鳥取銀行のホームページの中にあり、アドレスは次のとおりです。どうぞご覧ください。
参照
そしてもうひとつ。日本製紙連合会発行の『紙の春秋』です。この冊子は、日本製紙連合会の機関誌「紙・パルプ」3月号に載っていた株式会社文藝春秋 広告局 小高早苗氏の随想『紙と私』こぼれ話で知り、早速申し込み、戴いたものですが、ここにも「紙への想い」が謳われています。紹介します。
『紙の春秋』(日本製紙連合会発行、(株)文藝春秋制作)はこの3月に発刊されましたが、もともと「文藝春秋」((株)文藝春秋発行)の誌上に1999(平成11)年11月号から2003(平成15)年1月号まで毎月、掲載された「紙と私」というエッセイをまとめたものです。各界の著名人39人が描く紙のある風景ということで、執筆者の思い思いの写真とともに、それぞれに紙への想いが謳われています。用紙は塗工紙で、4色刷りのきれいで立派な冊子(A5判、84頁)に出来上がっています。その上、本体の「紙と私」の各名文は興味深くて、感銘を受けるのはもちろんのことですが、その中のある「ペーペーコラム」もよく纏まっております。
この中で、平山郁夫氏(画家)は「紙は、二千年にわたり、文化を築いてきた。紙の貴重さが歴史でもある。今はハイテク技術によって、電子メールやインターネットの使用が増えている。が、紙に直接触れて心がこもり、人間性が伝わってくる。機械的な伝達だけでは、人間性が枯渇し文化は衰退すると懸念している。紙の大切さを伝えよう」と。また、宮崎 緑氏(千葉商科大学助教授)も「紙は人間回復のメディアなのである」と文章を結ばれています。
私は、洋紙の世界に勤務しました。また、和紙の世界も勉強し、実際に触れました。紙に愛着を持ち、紙の世界に身をおいたものにとって、このような「紙媒体への賞讃」はこの上もなく嬉しいことです。
しかし、「電子媒体」を嫌っているわけではありません。電子メールをしたり、ホームページを見たり、検索もし、電子辞書を引いたり、好きな将棋もコンピュターと対局したりと随分お世話になり、活用しています。特に利き腕の右手が不自由になった今は、原稿などを執筆するのにもパソコンです。パソコンは無くてはならないものになり、必需品となっています。このホームページ「紙への道」を開設し、「愛着ある紙」をさらに勉強し、PRできるのもパソコンのお陰です。両方に親しみがあります。
紙媒体と電子媒体。双方が共生、一方しか利益をうけない片利共生でなく、相互に利益がある共利共生で、しかも切磋琢磨しながら生きていってほしいものです。
「紙媒体と電子媒体」。みなさんは如何でしょうか。これからも何かと話題になるでしょう。
(2003年4月1日付け)