機能紙について
「機能紙」とは、日本工業規格 紙・板紙及びパルプ用語(JIS P 0001 番号6039)に、「従来の紙に新たな機能を付与した紙」と定義付けされています。そして「植物繊維に限らず無機・有機・金属繊維など幅広い素材を用い、製紙および加工の工程で高機能が付与され、主に情報・電子・医用などの先端分野の素材として用いられる」としています。対応英語は「high performance paper」です。
一般的な紙が、木材パルプなどの植物繊維を主原料としているのに対して、機能紙は上記JISのように、植物繊維だけでなく合成繊維・鉱物繊維・金属繊維など幅広い素材を用います。そして筆記用・印刷用・包装用などの紙か本来もっている基本的な3大機能、
- 情報を記録し保存する(筆記・印刷用途)
- 物を包み保護する(包装用途)、
- 液体を拭き取り、かつ吸い取る(生理・衛生用途)
という機能でなく、それ以外の能力を持たせた新しい働き、例えば、濾過・吸着・耐熱性・耐薬品性・脱臭・防錆などの特定の機能を付与した紙が機能紙です。
言い換えれば、用途に合わせて原料を選択・配合し、特殊な加工法により付加価値を高め特定の機能を追求した紙のことで、あくまでも「機能」を中心にし、新しい技術や素材などと紙の特性を複合させて作られます。素材や加工法を変えることによって、燃える、水に弱いなどの一般紙の持つ弱点をなくし、燃えにくくしたり、耐水性などを持たせたりします。また、電気を通しやすくしたり、水に溶けやすくしたりするなど、一般の紙が持っていない特別な機能を持たせることができます。
なお、機能紙の原点は和紙にあると言われますが、それは和紙の「粘剤(ネリ)を使用し水中での繊維の分散を良好にする抄紙技術」を適用することによって、分散性が悪く抄紙困難な合成繊維やセラミック繊維などを使って高度な機能紙を抄造することができるようになりました。
その数は多く多岐にわたりますが、次に機能紙の例を示します。
- 電気を防ぐ…絶縁紙
- 電気を通す…導電紙
- 電気を除く…静電除去紙
- 錆を防ぐ…防錆紙
- 虫を防ぐ…防虫紙
- 燃えない…不燃紙・難燃紙
- 塵を防ぐ…無塵紙
- 水に溶ける…水溶紙
- 水に溶けない…不溶紙
他にも耐熱紙・防臭紙・減菌紙などなど多彩ですが、機能紙は、これからの先端産業を支える新素材として、注目を集めております。
まとめ
このように、一般紙を基本に原料・薬品などを選び、加工処理し、改質して新しい機能を付与し、種々のニーズに対応するようにいろいろな「特殊紙(機能紙・加工紙含む)」を作ることができます。例えば、表に掲げた水に溶ける紙「水溶紙」と、その対極にある水に溶けない紙「不溶紙」(撥水紙・耐水紙・防水紙含む)は、同じ一般紙に薬品による化学的処理を行なったり、あるいは薬品加工したり、プラスチックフィルムなどと複合して製造することができます。このことは素材である紙の大きな「可能性」「将来性」を示すものであと言えます。楽しみですね。
(2003年10月1日付け)
参考・引用資料
- 広辞苑(第五版)…CD-ROM版(株式会社岩波書店発行)
- JISハンドブック2002 紙・パルプ(日本規格協会発行)