再生紙とは
なお、古紙は住宅用の断熱材や卵などを輸送時に保護する緩衝材など紙以外の分野でも利用されていますが、その量は古紙全体の1%弱にすぎません。言い換えますと、そのほとんどが再生紙になっているわけです。それでは、次に再生紙について説明します。
用語 | 説明 |
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再生紙 | 「再生紙」とは、一度「紙」(板紙も含む)として使用され、回収された古紙を配合した、いわゆる古紙入りの紙のことですが、わが国ではその配合率について は規制(定義)がありません。従って、古紙が少しでも配合されていれば再生紙といえるわけです。言い換えますと、古紙配合が1%でも100%でも「再生 紙」という日本的な曖昧さがあります。 |
しかし、例えば「エコマーク」を取るには、一定配合以上の古紙配合率が必要です。ここでエコマークとは、私たちのまわりにある様々な商品の中で、環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品に付けられるマークのことですが、環境省の指導・助言のもとで(財)日本環境協会が認定・運営しています(右図参照)。そして「エコ」とはエコロジーの略ですが、生態学とか、環境保護、自然保護運動の意味です。
次にエコマークを取得するための認定基準値を示します。古紙配合率については例えば、印刷用紙で50%以上、PPC用紙、フォーム用紙などの情報用紙で70%以上、包装用紙30%以上となっています。
【印刷用紙】
【包装用紙】
- 古紙配合率30%以上
【情報用紙】(PPC用紙、フォーム用紙、カラープリンタ塗工紙、OCR用紙)
- 古紙配合率70%以上
- PPC用紙、フォーム用紙、OCR用紙は非塗工又は微塗工(両面で12g/m2以下)、カラープリンタ塗工紙は微塗工(両面で20g/m2以下)
- PPC用紙、フォーム用紙は白色度70%程度以下
なお、古紙配合率(単位:%)とは、その再生紙の原料パルプに占める古紙パルプの割合のことで、数字が高いほど古紙の使用量は多くなります。そしてエコマーク認定のときの古紙配合率は、製品として使用する全繊維原料(パルプ+古紙+購入古紙パルプ)中の古紙投入量と定義付けられており、その計算方法は、古紙配合率=(古紙+購入古紙パルプ)/全繊維原料で、古紙は風乾重量、パルプは含水率10%の重量として計算します。
再生紙について補足説明
もともと「再生紙」という用語は「マスコミ造語」ともいわれるくらい、新聞などのマスコミでよく使われた言葉です。紙業界では当初、「再生」という名がつけば廃物・ゴミくずを原料としているとの印象が強いことから、嫌われて、あまり「再生紙」という用語を表面に出さなかったり、使わないで、「古紙入りの紙」とか「リサイクルペーパー」、「リフレッシュペーパー」が使われたようです。
しかし、古紙の利用は、ゴミの減量化・再資源化だけではなく、森林資源の保全や省エネルギーにもつながることから、それを使用している「再生紙」が脚光を浴びるようになり、次第に業界やマスコミはもちろん、今や日常生活でも広く使われ、「再生紙」という言葉が定着してきました。そして逆に、「再生紙」でないと地球にやさしくないと言うことで、わざわざ印刷物や筆記用品など多くに「再生紙」を明記するようになっています。
ところで前出の国語辞典、広辞苑(第五版)には、【再生紙】と言う用語が掲載されており、その意味は「回収した故紙から作られた再生パルプを主原料とする紙」となっています。
専門事典でも、「印刷事典」(社団法人 日本印刷学会編、財団法人 印刷局朝陽会発行)の1998年増補版には、初めて【再生紙】と言う言葉が掲載されており、その意味は「古紙入りの紙・板紙の総称のことで、古紙は離解、除塵して使用するが、白さを必要とするものは、さらに脱墨、漂白を行なう。英語ではrecycled paper」となっています。このように用語「再生紙」が一般化してきました。
しかし、「紙パルプ事典」(紙パルプ技術協会編 1989年年改訂第5版、2000年第4刷発行)には、用語「再生紙」は掲載されていませんし、2002年発行の日本工業規格(JIS)の「紙・板紙及びパルプ用語」にも載っていません。
今年(2004年)、購入した最新版のJISハンドブック「紙・パルプ」には追加されているだろうと思って確認しましたが、矢張り載っていませんでした。
いずれJISにも公認されるだろうと考えます。
再生紙は和紙がはじめ…漉き返し紙。そして育てよう今の「再生紙の時代」
ところで、わが国の「再生紙」の歴史は古いのです。和紙での話です。平安時代の昔、紙は大変貴重でしたので、使用済みの紙の裏などを使用したり、再び漉き返して使いました。平安時代には文字などが書かれて不用になった紙を反故(古)ないし反故紙といい、これを集めて漉き返した紙を漉き返し紙(すきかえしがみ)とか、宿紙(しゅくし、すくし)、還魂紙(かんこんし)といいます。そのころは今のように脱墨技術のない時代でしたから、その紙は薄く墨色(薄鼠色)が残っており、後世このような紙は「水雲紙」とか、「薄墨紙(うすずみがみ)」(鼠紙、紙屋紙)とも呼ばれています。清和天皇の女御藤原多美子が天皇崩御(元慶4(西暦880)年)の後に、生前に天皇から送られた手書(手紙)を集めて漉き返した紙に法華経を書き写し、供養したのが、漉き返しのはじめといわれます。以来、平安時代末には紙を漉き返すことが盛んに行われるようになりました。まさに反故紙(古紙)の再利用であり、今日でいう再生紙です。今からおよそ1100年前のことです。
このように、紙のリサイクル、再生紙の歴史は古いのです。資源の乏しい日本、先人の心意気が知れて頼もしくもなります。この伝統が今の「再生紙の時代」であり、これからも大事に引き継ぎ、育てたいものです。
紙・板紙の中で、紙に類する新聞用紙や、段ボール紙などの板紙には、以前から古紙が多く使用されており、定着していますが、課題は上質紙や塗工紙などの「印刷・情報用紙」の再生紙化です。印刷・情報用紙への古紙利用は、次第に上昇してきていますが、まだ低位です。印刷・情報用紙は紙の中で、およそ60%を占めていますのでその効果は大きくひびきます。
なお、印刷・情報用紙などの「再生紙」には、現在、銘柄名に「R」(リサイクルのR)や「再生」などを付してあり、オール「バージンパルプ」使用製品と区別してあります。「再生紙品」がさらに増えて、当たりまえになれば、古紙配合が高位にある新聞紙や段ボール紙などの板紙を再生新聞用紙とか、再生段ボール紙と言わないのように、「印刷・情報用紙」もなるのではないでしょうか。そして逆に少なくなった「バージンパルプ」製品が、珍しくなり希少価値がでて高価になるかも知れません。
このような、さらなる「再生紙」時代が来ることでしょう。そしてそれが普通になっていることでしょう。
(2004年3月1日)
(番外編…新聞記事から抜粋)
回収古紙の中から1万円札で2,800万円、発見
先月の2月23日午前9時45分ごろ、埼玉県草加市内で、新聞紙などの古紙を回収した業者の男性が、古紙回収問屋に運び、分別作業をしたところ、ゴミの中に1万円札2800枚が紛れ込んでいるのを見つけ、草加署に届け出た。この2,800万円は通常、事件性がないと判断された場合、半年以内に持ち主が名乗り出なければ、所有権を主張している拾得者か市の所有になるという。
この所有者については、まだ紆余曲折がありそうですが、いずれにしても、まさに古紙は宝の山ですね。
参考・引用資料
- JISハンドブック2004「紙・パルプ」(日本規格協会発行)
- 大江礼三郎著「故紙と古紙」…財団法人 古紙再生促進センター「会報」(第29巻4号 2003年7月31日発行)
- 日本製紙連合会 機関紙「紙・パルプ」特集号
- 日本製紙連合会
- 財団法人古紙再生促進センター
- 財団法人 日本環境協会
- 王子製紙株式会社編「紙のリサイクル100の知識」(東京書籍発行)
- 広辞苑(第五版)…CD-ROM版(株式会社岩波書店発行)
- 世界大百科事典(第2版 CD-ROM版)…日立デジタル平凡社発行
- 和紙文化辞典 久米康生著、1995年10月 わがみ堂発行