私たちの身のまわりに新聞、雑誌、チラシ、段ボールなどの使用済みの紙が古紙として分別・回収され、資源(原料)として新しく生まれ変わり、再び紙製品(再生紙)などとして数多く見られるようになってきました。
今回は、用語解説として古紙、再生紙について整理しました。なお、日本製紙連合会と紙の博物館から関連資料や情報をいただきましたが、ここにあらためて感謝いたします。
古紙とは
それでは、まず古紙です。次に古紙の定義を掲げます。
用語 説 明
古紙 古紙とは、日本工業規格(JIS)紙・板紙及びパルプ用語(JIS P 0001 番号2058)に、「使用済み又は加工工程から回収した紙又は板紙。再パルプ化して紙又は板紙を製造するときに再利用する(対応英語 waste paper)」と定義付けられています。
また、JIS P 0001 番号1005には、古紙パルプを「使用済みの紙・板紙又は紙・板紙の断裁くずなどを離解処理又は離解・脱インキ処理して得たパルプ(対応英語は、recycled fiber)」と説明しています。
もう少し古紙について説明します。
古紙とは、「製紙メーカーから製品(商品)として出荷された後に、家庭や企業などの消費者・需要者の手に渡り、使用済みになった紙や、紙製品などを作るときに発生する裁断屑などが、ゴミとは別に再生利用する目的で分別、回収された紙」のことを言います。
すなわち、製紙メーカーから出荷された後、回収されて製紙原料などになるものが古紙であって、ただ古い紙が古紙ではありません。リサイクル(再生)資源となるものが古紙というわけです。
さらに続けますが、古紙は、その発生源によって、産業古紙と市中回収古紙に大別されます。産業古紙は、紙を原材料として使用しいいる印刷・製本・紙器・製袋工場などの工場から発生し、製品として使用されない印刷不良品、裁ち落としなどの損紙や、売れ残りの新聞などの残紙のような紙のことです。ただし、製紙工場の原紙の製造工程内で発生し、再び同じ工程内で原料として使用される紙は古紙のとは言わないで、定義から除かれます。
また市中回収古紙は、家庭・店舗・デパート・スーパーマーケット・学校・会社・官公庁などで、一度使われた使用済みの紙をいいますが、このうち、デパート、スーパーなどから大量に出る段ボールの空き箱などは準産業古紙という場合があります。
次に古紙はいくつかの種類がありますが、統計上では9種類に分けられています。量的に多いのは、新聞、雑誌、段ボールで、これらを三大古紙といい、この3品種で古紙全体の約80%を占めています。そして再生して作られる紙の種類によって使われる古紙の種類が異なります。そのために新聞、雑誌、段ボール、その他の紙というように種類ごとに古紙をまとめ、分別回収することが紙のリサイクルの重要な第一歩になります。
分別、回収しないで、再利用されないものは、無益なゴミであって、環境を悪くするばかりでなく、その処理に余分なお金が掛かります。有益な資源とするためにも、分別回収は消費者・需要者の責務といえます。
なお、家庭から発生する古紙は、主に、町内会や自治会などの集団回収やちり紙交換業者を通じて回収されますが、このほか、新聞販売店が加わった回収や、地方自治体が直接回収する方法もあります。
そして製紙工場に戻った古紙は、パルプ化されてそのまま板紙などの原料として用いられことがありますが、脱インキ(脱墨、DIP。DIP はdeinking pulpの略)・漂白されて新聞用紙や印刷・筆記用紙などの原料とします。ただ、紙を作っている植物繊維はリサイクルされることによって、すなわち繰り返しの使用によって、繊維が細かくなったり、ひび割れが起きたりして、もろくなり劣化します。そのため一般に古紙の再生利用は3~5回程度といわれており、紙の生産には常に新しいパルプ繊維(バージンパルプ)の投入が必要となります。
洋紙への古紙利用について
ところで、わが国で洋紙に古紙が使用されたのは、昭和に入ってからで、本格的には、戦後の1953(昭和28)年のことです。当初は、そのまま離解し段ボール原紙などの板紙や、ちり紙などの安価な製紙原料として使用されました。そして1960年代の急速な高度経済成長下の大量生産、大量消費、大量廃棄(使い捨て文化)の側面としてもたらされたゴミ問題〈ゴミ戦争〉と紙・板紙生産の大きな伸びに伴なう、原料確保が問題化し、資源問題が大きくクローズアップしました。加えて突然の石油の供給不安・価格高騰をもたらした70年代に発生した2つの石油危機[1973(昭和48)年および1978年の第1次、第2次のオイルショック(石油ショック、エネルギー問題)]は、わが国の経済をパニック状態に陥れました。
これを契機に、ゴミの減量化やリサイクルへの関心の高まりによる再資源化、さらに省エネルギー・省資源だけではなく、森林資源の保全、環境保護にもつながることから古紙の利用が注目され、その回収・利用が脚光を浴びるようになってきました。
まず板紙に、そして新聞用紙にも古紙が利用されましたが、具体的に再生紙として認識されたのは、第2次オイルショック(木材チップショック)後の1980(昭和55)年に省資源対策による森林資源保護を目的として、本州製紙(合併してその後、王子製紙)と神奈川県庁との共同開発により誕生した『やまゆり』(神奈川県の県花)という銘柄です。
製紙原料に占める古紙の比率
その後、「再生紙」は環境にやさしいということもあり、その原料である古紙を回収し、再利用することが次第に高まってきました。下表に製紙原料に占める古紙の比率の推移を示します。
1985年 | 1990年 | 1995年 | 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
紙 板紙 |
25.6 79.4 |
25.2 85.8 |
30.7 89.3 |
32.1 89.5 |
33.8 90.3 |
36.2 91.1 |
36.5 92.3 |
平均 | 49.3 |
51.5 |
56.1 |
57.0 |
58.0 |
59.6 |
60.2 |
紙と板紙と分けて推移を掲げていますが、板紙は今では平均で90%以上が古紙でできています。もちろんすべて古紙でできているものもあります。また、紙はまだ低位ですが、印刷・情報用紙への古紙利用が進み、次第に上昇してきています。2002年は古紙回収率が65.4%、古紙利用率が59.6%といずれも過去最高を記録、2003年はさらに更新
し、古紙の利用率は60.2%となり、2005年度までの設定目標、古紙利用率60%[リサイクル60計画]を早くも達成しております。
このようにわが国の製紙原料は現在、半分以上(約60%)が古紙からの「古紙パルプ」で、残りおよそ40%が古紙以外の「バージンパルプ」となっており、誇れる実績であり、世界でも「トップクラスの古紙利用・消費国」となっています。
以前は「ゴミ」になっていた古紙は、今では貴重で重要な「第2の森林資源」に生まれ変わってきています。 ところで消費された大部分の紙・板紙は回収し、再生可能ですが、中にはトイレットペーパーに代表されるように、回収不可能なものもあります。このため回収可能な古紙の限界率は約68%とされていますので、これを基準に考えますと現状の古紙の回収レベルはおよそ95%の高位に達しているといえます。
故紙と古紙
ところで「こし」に当てる漢字は、現在は「古紙」が一般的ですが、以前は「故紙」でした。ちなみに手持ちの資料、1967(昭和42)年発行の「紙・パルプハンドブック」(紙・パルプ連合会)や、1971年の「紙パルプ技術便覧」(紙パルプ技術協会)は「故紙」が用いられていますが、1982(昭和57)年の「紙パルプ技術便覧」は「古紙」となっています。なお、辞書で人気のある広辞苑(第五版…1998年刊行)には、「故紙・古紙」とあり、「故紙」が併記されており、両方が使用可能となっていますが、マスコミ関係を含めて今では「古紙」が一般的です。
また、「反古紙(ほごがみ=反故紙、破故紙)」と言う言葉がありますが、反古紙は書画などを書き損じたり、廃棄して不用になった紙のことで、単に反古(反故)とも言います。転じて、役に立たないものごとのことを言い、無駄にしたり、不用な物として捨てることを「反故にする」と言います。