コラム(24-2) 紙と白さ(その2)色の表し方

色の表示方法

ところで人の目に感じる白さは、上記のような絶対的な白色度だけでは言い表せません。一般的な紙には、着色染料や蛍光染料などを添加して着色し、視覚的に白色感を増したものが多くありますが、このような増白剤による白色感の増加は、絶対的な白色度の増加とはなりません。そのため白色度だけでは表現できないのです。

しかし「赤っぽい白さ」とか、「青っぽい白さ」などのように感覚的な表現では、工業的に生産している紙の品質管理には不十分で、できません。そこで工業製品などの色管理をしていく場合には、その色を測色器で測定し、数値化し、管理することが必要となります。そのために白色度同様、物の色を客観的に数値表示し、統一化するための試験法がJISに規定されています。その表示法について説明します。

 

色に関する規格は、JISの主にZ部門(その他)に分類されてあり、パルプ・紙関係(部門記号はP)などの各部門に共通する基本規格として位置づけられています。

この中で色の表し方について4つの方法が定められています。そのひとつに色差表示方法(JIS Z 8730)がありますが、Lab系色度座標で表示します。平面をa軸とb軸で表し、真ん中が無彩色になっていて、その真ん中から縦にL軸が出ています。ここで、Lは明度で白黒の度合いを表し、高いほど白く、Lが100の場合が完全な白で、Lが0の場合が完全な黒となります。a値は大きくなるほど赤色が濃く、小さくなるほど緑味が濃くなります。また、b値は大きくなるほど黄味が強く、小さくなるほど青味が強くなります。

そして紙のL値、a値、b値は色差計(光電色彩計)によって測定し、直読し求めますが、この表示法によって、色の違いが分かりやすくなり、色の管理がしやすくなりました。「青っぽい白さ」とか、「黄みっぽい白さ」などの感覚的で、曖昧な表現が、実際に紙のb値などを測定し、その値を知り、数値管理することによって、ばらつきの少ない紙ができるようになりました。白色度と併せて現在、紙関係ではほとんどこの方法で測定され、色の管理がされています。

 


 

(付記)

詳細は当該のJISをご覧ください。

(1)拡散照明方式(JIS P 8148)は、国際規格ΙSO白色度(ISO 2470)に準拠しており、その測定法(概略)は次の通りです。

積分球 (直径150mm)を持った拡散反射率計を用いて試験片を拡散照明により照射し、0度の角度で反射光を受光する構造(エルレホ方式)になっています。光源はハロゲンランプまたはキセノンランプを用い、標準白色板は硫酸バリウムを使用します。

この方法は全光束の拡散照明のため、ハンター方式の欠点である、①45度照明のため、紙の表面性、縦・横の影響を受けることや、②蛍光染料などを含む紙は、その影響が測定値に表れず視感白さと一致しないなどの問題点を解消していて、信頼性の高い測定値が得られます。[注]積分球…中空になっており、その球の内壁には反射率が高く、完全拡散に近い酸化マグネシウムや硫酸バリウムなどの白色塗料が塗布されているもの。

 

(2)JISにある4つの色の表し方について項目だけを掲げておきます。

①「色名による表示方法」…JIS Z 8102には物体色の色名が、JIS Z 8110には光源色の色名が規定。

②「3属性による色の表示方法」…JIS Z 8721で規定。3属性とは明度、彩度、色相(下記参照)。

③「XYZ表色系とX10 Y10 Z10表色系による表示方法」…JIS Z 8701(XYZというのは3刺激値と呼ばれていて、人間の目が受けた刺激量を数値にしたもの)。

④「UCSによる表示方法」…JIS Z 8729では「CIE Labによる表示方法」が、また、JIS Z 8730では「色差表示方法」を規定。

 

(3)色の3属性について

上記JIS規格の②の三属性について説明します。色には三の性質があります。すなわち、色合いと明るさ、鮮やかさの三つです。それらを専門(色彩)用語では、「色相」、「明度」、「彩度」と言います。そしてこれらを色の三属性(3要素)といいます。

もう少し具体的に説明しますと、例えば黄色という色相を考えてみましょう。同じ黄色でも菊の花のようにとても鮮やかな黄色もあれば、白の中にほんの少しの黄が入ったクリーム色のような鮮やかでない黄色もあります。したがって鮮やかさは色相とは違った色の属性です。また同じ黄色で、同じ鮮やかさのものでも、明るい黄と暗い黄など明るさの異なった色があります。つまり明るさというのも色相や鮮やかさとは別の属性ということになります。

 

さらにそれぞれを説明しておきます。

色相(Hue ヒュー)とは「色合い」を示す属性で、青、赤、黄のように表現するいわゆる色のことで、単色光の波長に相当するものです。色調とも言います。例えば、この花は明るく鮮やかな赤色をしているといって花の色を表現しますが、この赤色というのが色相です。このように、日常会話で色といえば色相を指していることになります。

 

明度(Value 、lightness ライトネス、記号L)は、物体面(物体色)の明るさの程度を表すためのものですが、具体的には最も明るい色は白、最も暗い色は黒で、明度が高いとは、明るく白っぽい色、明度が低いとは、暗く黒っぽい色のことを言います。眼に感じる光の強弱を示す量ですが、一定の照明の下では白色の面がいちばん明るく見えるという性質があるため、それを基準にしていい表し、反射率100%の白色面の明度Lを100から黒の0間の値をとることになります。

なお、明るい色のことを「明るい」とか、「明度が高い」というような表現をしますが、明度は色相、彩度といった他の属性よりも文字の読みやすさに直接影響しますので、文字を読みやすくするためには明度の差を大きく取ることが基本となってきます。そのため白い紙に黒のインクかなどで表現するとより訴求力を高めることが一般的に多く行われています。

 

③また彩度(Chroma クロマ)とは、色の鮮やかさの程度を表す属性です。彩度も明度と同じように「高い」「低い」でその度合いを表します。すなわち、鮮やかな色は彩度が高く、派手な印象を受け、逆に彩度の低い色はくすみ、味に感じます。彩度が最も高い色は鮮やかな原色であり、彩度が低くなるにつれてくすみ、色みを感じない色に変化し、最後には白から灰色を経て黒に至る系列の色、すなわち無彩色になります。したがって白色の彩度は0となります。そのため、この無彩色が混ざらないほど、その色は鮮やかになりますが、彩度のことを純度とか、飽和度(英語ではsaturation)と言うのはそのためです。彩度が高い色は派手な印象を受け、彩度の低い色は味に感じます。

 

これらの三つの要素を利用して物体の色を表現することができますが、その代表的な表色法がマンセル表色系と呼ばれるものです。マンセル表色系では、色の3属性「色相(H)」「明度(V)」「彩度(C)」の記号と数値を使って色を表現し、例えば色相が5G(緑の色相の中心)、明度が6、彩度が8の色は「5G 6/8」と表します。ただし、無彩色はNの後に明度の数値を付けて、例えば明度が7.5の場合「N7.5」と表します。このように色は、マンセル色票などの色見本の中から指定、表示することができますが、人間の感覚に従って配列した表色系なので、人間の感覚と一致してるのが特長です(詳細省略)。

 


 

次回は退色などについて説明します。

(2004年9月1日)

 

参考・引用資料

  • 広辞苑(第五版)…CD-ROM版(株式会社岩波書店発行)
  • 世界大百科事典(第2版 CD-ROM版)…日立デジタル平凡社発行

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)