「第三の○○」と言えば、「第三の男」を思い浮かべる人が多いと思います。「第三の男」は、戦後の1949年製作のイギリス映画で、ウィーンを舞台とした哀感あふれる音楽と、オーソン・ウェルズが演じたハリー・ライムという強烈な人物像によって世界中のファンを魅惑し、キャロル・リード監督の名を一躍高からしめたスリラー映画の名作です。
いま「第三のビール」が脚光を浴びています。それでは「第三の紙」とはどんな紙でしょうか。今回は「第三の紙」について触れます。
そのまえに、まずビールで乾杯!「第三のビール」とは
本題「第三の紙」の前にまずビールで乾杯しましょう。ところで、最近新聞紙上などでよく見かける「第三のビール」とはどんなビールでしょうか。
このごろ話題になり注目を集めているビール風のアルコール飲料があります。これが俗称で言われている「第三のビール」です。
03年9月にサッポロビールが「ドラフトワン」で先行し、翌年2月に全国発売したのをきっかけに、6月にはサントリーが「スーパーブルー」で追随。今年4月からは、キリンビールが「のどごし(生)」を、アサヒビールは「新生」(しんなま)を相次いで発売し、大手ビールメーカー四社の「第三のビール」が出揃いました。
この「第三のビール」の誕生により、通常のビールは「第一のビール」(以下、ビールといいます)、そして発泡酒は「第二のビール」といわれる位置づけにありますが、発泡酒は低価格で人気を呼び、ビールに代わる晩酌の友として家庭に入り伸びてきました。しかし、2003年5月の増税により、値上げとなり去年の売り上げは減少傾向で終わりました。
そこで登場したのが「第三のビール」というわけです。消費者にとって、「第三のビール」の魅力はなんと言っても安価であることです。350ミリリットル入り缶一本あたりの店頭での実勢価格(ばら売り、税込み)は、ビールが約210円、発泡酒がおよそ115~120円、「第三のビール」が100~105円程度で販売されています。
この価格差は何からきているでしょうか。それはそれぞれにかかる税率の違いにあり、その税率の違いは使用する原料の差からきています。すなわち、原料に酒税の基準となる麦芽が多いか少ないか、あるいは含まれていないかによって税率が決まります。含まれる麦芽が多ければ税率が高く、少なければ低くなります。
ビールは麦芽(大麦を発芽させたもの、モルト)を主原料としているのに対して、発泡酒はビールより少ない麦芽を使用し、「第三のビール」は麦芽を使いません。この差が価格差となり、「第三のビール」が安いわけです。
もう少し説明しますと、ビールは漢字で麦酒と書くように麦芽を主原料として、大麦、ホップ、酵母、水、副原料(米、トウモロコシ、デンプンなど)を原料とし醸造した、炭酸ガスを含むアルコール飲料です。麦芽からくるビール独特の琥珀色を持ち、ホップに由来する苦みと芳香を有し、持続性の泡を生ずる特徴があります。
また発泡酒は、原料として麦芽をある程度使用し、発泡性(炭酸ガス)を持つ酒類(雑酒)の総称ですが、酒税法によると、ビールは麦芽の比率が67%以上の発酵酒のことで、これに対して麦芽の比率が67%未満の場合は雑酒のなかの発泡酒に分類されています。なお、発泡酒は3段階で課税されますが、最大限節税しようとして、麦芽を25%未満(約24%含有)に抑えているものがほとんどです。ここに発泡酒の安さの秘密があるわけです。
これに対して、「第三のビール」は色や味はビール風に似せてありますが、酒税法上の税率を低く抑えるために造られたビールにも発泡酒にも属さない発泡性アルコール飲料です。酒税の基本となる麦芽を使わないために、発泡酒よりさらに税率が低くでき、安くなるわけです。
そのため、ひとくちに「第三のビール」といっても複雑で、メーカー、銘柄によって原材料に工夫がほどこされているようです。糖類(水飴・カラメル)にたんぱく質を加え、発酵させて造られるのが主流のようですが、麦芽の代わりにエンドウ豆(たんぱく質)を使用した商品は「その他の雑酒」、発泡酒をベースにスピリッツ(麦焼酎など)をとブレンドした商品は「リキュール類」として分類されています。
なお、ホップで苦味を加えますが、麦芽を使わないので、本来の「第三のビール」はビール特有の琥珀色がありません。「琥珀色」は「ビールらしさ」を示す重要な要素のために、「カラメル」や、「おでん汁(糖類とアミノ酸)=メラノイジン」で琥珀色や味を加えるなど各社いろいろと工夫されているとのことです(朝日新聞から)。
しかしながら商品の性格上、昔ながらの力強い味を求める「ビール党」の人々には物足りないと評されいますが、一方では家庭の財布を握る主婦層からは「このご時世、倹約の為にはこれで我慢」とか、価格の魅力だけでなく、軽くて飲みやすいと愛好する人も多く、人気で、売り上げを伸ばしています。
業界発表によるビール類総出荷量(大手4社とオリオンビールの主要5社計)によると、大手4社すべてが市場に参入した4月には、「第3のビール」の出荷量はビール・発泡酒も含めたビール関連飲料全体の約2割(19.4%)に達し、それまでの最高になりました。2社だけだった前月に比べ一気に2.5倍となり、ビール・発泡酒に比べた価格の安さや飲み口の軽さを武器に、シェアが急拡大しています。反面、ビール・発泡酒とも大幅に減少し、特に発泡酒が苦戦を強いられているということです。
これからもビールや発泡酒より安いのが売り物である後輩格の「第三のビール」の市場が拡大していくのは確実で、かつて発泡酒がビールの市場を侵食したように、この夏の主役になり、「第三のビール」もビールと発泡酒の市場に食い込んでいくことでしょう。
しかし、「第三のビール」が伸び、ビールや発泡酒のシェアを取れば取るほど国に入る税金が減るので、政府税制調査会は2006年度税制改正で「第三のビール」に対する課税を強化する方針で、酒税を抜本的に見直す考えであると伝えられています。「第三のビール」の市場が拡大していく中での「増税」圧力が高まるのは必至のようです。
メーカーが「節税」のために、苦労し努力・工夫して商品化した「第三のビール」。缶の表示にある原材料名を見ながら、今年はこの「節税」ビールで潤っては如何でしょうか。
乾杯のあとはお酒などなど…それでは「第三の酒」とは
酒の肴(さかな)も豊富。さらに清酒(日本酒、単に酒)、焼酎(しょうちゅう)も出て、好みのお酒を各人各様で飲み、雰囲気も盛り上がってきました。さて、ここで「第三の酒」とはどんなお酒でしょうか。それは焼酎のことです。清酒、ビールに次ぐお酒ということです。
これは元東京国税局鑑定官室長で評論家となられた焼酎博士、菅間誠之助さんの名著「見なおされる第三の酒」からきています。菅間博士が焼酎を「見なおされる第三の酒」として表現され同名の本を上梓されたのが1975(昭和50)年のことです。これをきっかけに焼酎が見直されて、人気が出始め、1977(昭和52)年ころから名実共に「第三の酒」となりました。
それまでは戦後(第2次世界大戦)の混乱期に出回った粗悪な密造酒が「かすとり」といわれたことがあり、それと混同されたり、焼酎という文字から「焼酎」をやけざけ(焼酒・自棄酒)、すなわち、やけになって飲む酒と見なし、焼酎全体が悪いイメージをもたれたこともありました。この「焼酎イコール低級な酒」と言われていた時代から、頑張ってこられた焼酎博士菅間誠之助先生の念願が認められ、「焼酎も日本の国酒」と認識されるようになりました。
今では、焼酎の種類も使用するデンプン質原料のによって、米焼酎、いも焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎、そば焼酎などがあり、さらにトウモロコシ、ヒエ、アワ、キビ、および上質の米ぬかなどを原料にしたものや、沖縄特産の泡盛などがあり、好みに応じて多くの人に、堂々と愛飲されています。まさに日本酒、ビールに次ぐ、「第三の酒」になっています。