コラム(36) 産経新聞、電子新聞のネット閲覧サービスを開始月額315円

新聞購読者への影響はないのでしょうか。注目!

 

産業経済新聞社(東京都千代田区)は去る9月20日、紙の新聞をほぼそのままの形でインターネットで閲覧可能な新たな多機能電子新聞の有料配信事業「産経NetView(ネットビュー)」サービスを10月1日から開始すると発表しました。

そして同社の代表取締役社長住田良能氏は、「ブロードバンドの普及やPCの性能向上などで、電子環境に変化が起こっている。産経新聞社としては、従来の新聞をそのまま届けることを重要視しつつ、新しい時代に合ったサービスを提供することも大切だと考えている」と新サービスの提供に至った景を語っています。

 

「産経NetView」は、当日付の紙面(東京本社最終版)の全36ページをベースにネット閲覧に適した主要約20ページをパソコンの画面上に表示できるよう毎日午前5時に配信、公開。なお、「産経NetView」は、電子紙面としての基本機能を充実させるとともに、紙面は拡大・縮小ができ、選択した部分だけの印刷もできます。写真などをクリックすると、紙面に掲載されなかった多数の写真や動画を見ることができ、場合によっては音声や3D(三次元)画像などビジュアルし、多様な情報を取り扱うことができる「マルチメディア」型で付加価値を高めたのが特徴とされています。

また、過去記事の検索や記事を読んでいるときに知りたい情報を簡単な操作で調べることができるように用意した。ツールバー上の「便利リンク」や「ニュース速報」「記事検索」のボタンを押して使う。

例えば、図を見ながら各国の人口・面積などの基礎データも調べられる「世界図」、都道府県別やCATV会社別など自分にあわせたテレビ番組表を表示できる「全国テレビ番組表」がある。他に気図をクリックすると雲の動きや前線の移動が分かる「動く気図」もあり、「歴史年表」「国会議員名簿」「閣僚の顔ぶれ」「株価検索」「マーケット情報」「略語集」などの便利なリンク系コンテンツも豊富にあるようです。

 

本体以外に、このように便利で豊富なコンテンツを持つ「産経NetView」ですが、購読価格は月額315円(税込み)で割安に設定。初年度3万人の会員獲得を目指していますが、損益分岐点に達するには7万人の購読者は必要だとされています。当面は赤字覚悟となりそうです。

 

産経新聞社では、2001年に日本で初めての電子新聞となる「ニュースビュウ」を事業化し、月額1995円(税込み)で提供していましたが、同サービスは専用ビューアーが必要だったほか、開始当初のブロードバンドの普及率も低かったため、ユーザー数が伸び悩み、2005年3月にサービスの休止を余儀なくされました。 新たに開始するこの「産経NetView」は、マクロメディアのFlashプレーヤーのプラグインを利用するため、専用ビューアー(閲覧のための専用ソフト)を必要としなく、また提供価格も、月額315円(税込み)と、「ニュースビュウ」や産経新聞本紙に比べ、格安となっています。315円という料金設定については、社内でも安すぎるのではないかとの議論があったようですが、産経新聞社 デジタルメディア局長 小林静雄氏は、「インターネットのコンテンツは無料で提供されるものが多く、ユーザーも有料コンテンツに対して抵抗がある。そうした感覚の中でぎりぎり許される価格が315円ではないかという結論に達した」と説明しています。

また、産経新聞の本紙を1カ月購読した場合の料金は、東日本で朝刊のみ配布する場合で2950円(税込み)となっており、本紙の購読者への影響が気になるところですが、産経新聞社の代表取締役社長 住田良能氏は、「紙とインターネットのユーザー層は異なるため、特に影響はないと考えている。ニュースビュウを提供していた時も、紙は紙で見たいという人が大半で、紙からインターネットに移行するユーザーはほとんどいなかった」とし、現在の購読者への影響はないという見解を示しています。

 

さらに住田氏は、インターネットの普及が進む中で今回の新サービスをターゲットとするユーザー層について、「新聞のコンテンツがPCに毎日届けられるので、高層マンションに住んでいて朝刊を下に取りに行くことが面倒だと感じている人や、新聞離れが進んでいる若いユーザーにアピールできるだろう。インターネットを通じて、新しいユーザー層に接触したい」とも述べています。

 

以上が新聞報道などで報じられた概略です。

 

以下はその感想です。

 


 

産経新聞社 住田社長が言われるように新聞購読者への影響は本当にないのでしょうか。また、新たに「電子新聞」サービスを開始するにあたって同氏は、「活字メディアである新聞社がインターネットの破壊力にどう立ち向かうかの明快な“解"はないが、挑戦してみようということになった」と話されたとのことでが、まだスタートしたばかりですので、すぐにその“解"はでません。

 

今日、インターネットの進行に伴い拡大する電子媒体のなかで、伝統ある「紙媒体」と新しい「電子媒体」、共存か存亡かと話題豊富です。

ちょうど9月25日の新聞広告で書籍「新聞がなくなる日」(歌川令三著、草思社刊。定価1,470円(本体1,400円)、初版刊行日 2005年09月15日)が掲載されました。「宅配の大新聞が消えるのは、もはや時間の問題ではないのか。201X年、崩壊への道を歩み始める」と元毎日の記者がインターネットの隆盛により紙の新聞は20年後には消えると大胆予測。米国・韓国の現状を比べつつ日本的な大新聞の危機を考察する出色のメディア論と書評されています。

 

果たしてこのように「紙の新聞」の危機がきて、「インターネット」が栄えるのか、今後の両媒体の動向を占うためにも、産経新聞社の電子新聞、特に「新聞離れ」が著しい若年層の取り込みを狙っているとされ、大幅に読みやすく便利で豊富、しかも格安となった「産経NetView」は、既存の「紙の新聞」の動向、推移とともに注目に値します。

そしてその“解"をだすためにも、今回の「産経NetView」は重要な試金石になります。そのためにも産経新聞社には、是非それらの動向を公表し、そして「共存」のために必要な対応策を率先してとっていただきたいものです。

(2005年10月1日)

 

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)