コラム(45) 電通調べ…昨年の国内広告費、ネット広告55%増、新聞は年々減少

日本の広告費の総額や内訳については、我が国を代表する広告代理店である株式会社電通が集計し公表しており、政府の統計集などにも、これが採用されており、権威ある資料です。

電通は去る2月20日に日本の広告費の調査結果を発表しました。今回はそれについてまとめました。

 

電通の公表よれば、昨年(2005年)の国内総広告費は前年比1.8%増の5兆9625億円と2年連続で増加しました。

広告媒体には新聞、雑誌、ラジオ、テレビのいわゆる「マスコミ4媒体」とインターネット広告、および折り込みチラシ、車中広告やダイレクトメールなどの販売促進(セールスプロモーション、SP)広告に大別されます。

広告費を媒体別に見ますと、テレビが同0.1%減の2兆411億円。新聞が1.7%減の1兆377億円、雑誌が0.6%減の3945億円、ラジオが同0.9%減の1778億円で、マスコミ4媒体合計は前年比0.7%減の3兆6511億円とマイナスになっています。

そしてそれらの広告費全体に占める割合は、テレビ34.2%、新聞17.4%、雑誌6.6%、ラジオ3.0%で、マスコミ4媒体合計では61.2%となっています。

また、車中広告などの販売促進(SP)広告費は前年比1.3%増で、増えていすが、その総広告費に占める構成比は33.3%で、前年の33.4%、前々年の34.1%よりわずかながら下がってきています。

 

これに対して、インターネット広告費は前年比54.8%増の2808億円と好調で全体の伸びをけん引しており、全体に対する割合も前年の3.1%から4.7%に増えています。この数値自体はインターネットが登場した歴史が浅いため、まだ小さいのですが、年々増加しており、ラジオ広告費を追い越し、雑誌広告費に迫る勢いにあります。

なお、広告費総額はここ2年続けて増えていますが、その増加幅はインターネットの増額分にほぼ相当しており、インターネット関係の影響を大きく受けるようになってきました。

 

媒体別広告費の推移

次に媒体別の広告費の推移について見ていきます。資料としてホームページ社会実情データ図録 Honkawa Data Tribune図録▽広告費の推移(対GDP比、媒体別)から図「日本の広告費の推移」を下記に引用させていただきました。

 

 

上図の媒体別広告費の推移を見ますと、SP(販売促進)広告費や、「マスコミ4媒体」のうち雑誌、ラジオはほぼ横ばい状態にあり、増加傾向のあったテレビ広告費もおよそ10年ほど前から増減を繰り返し、ここ2年は微増傾向となっています。

一方、新聞広告費の縮小傾向が目立っています。次表に総広告費に対する新聞広告費の構成比の推移(電通資料から算出)を示しますが、およそ50年前の1955年には、新聞広告費の構成比は55.5%であったものが、テレビの躍進で5年後の1960年は39.5%と激減しています。それ以降も止めがかからず減少傾向が続いています。

 

2004
新聞広告費の構成比推移
1955196019701980199019952000200120022003
2005
構成比(%) 55.5 39.5 35.1 31.1 24.4 21.5 20.4 19.9 18.8 18.5 18.0 17.4

 

なお、1955年当時のテレビ広告費の構成比は1.5%でしたが、1960年の構成比22.3%に示されるように急増し、1959年にはテレビはラジオを抜き、さらに75年には新聞をも抜いて、媒体別で首位を占めるに至りました。

それでも1990年ころはテレビと新聞は広告費でそれほどの違いはありませんでしたが、最近では、テレビが新聞の2倍ぐらいの広告費となっており、ますます差が拡大してきています。

さらに最近ではテレビよりも新興のインターネットの躍進が著しくなっています。そして今年(2006年)については、景気回復傾向に加え、サッカーワールドカップなど大型イベントもあるために、電通は総広告費が前年比で2.1%増の6兆883億円と見込んでいますが、ネット広告は大きく30%伸びて3650億円になると予想しています。

また、新聞、雑誌、テレビも05年実績を上回り、マスコミ4媒体では0.8%増と予測されていますが、ネット広告の伸びが他の媒体に比べ大きいことから、インターネットは雑誌にならび、ないし超えて、テレビと新聞に次ぐ「第3の広告媒体」となる可能性も出てきております。

ところでインターネットのホームページを見る時間が段々と増加しており、国民1人当たりの平均で2004年には、1日当たりのインターネットの利用時間は37分(2003年は32分)にまで増加し、初めて、新聞を読む時間の31分(2003年は33分)を上回ったとのことです(テレビを見る時間は2004年、3時間31分)。

このような国民の平均メディア利用時間の変化が広告費にも影響していると考えられています(ホームページ図録▽広告費の推移(対GDP比、媒体別)参照)。

 

そして過去にテレビが新聞、雑誌、ラジオを追い越したように、今後インターネットの普及に伴って、インターネットが新聞などを超えていくものと考えられます。

特にパソコン・携帯電話に馴染んでいる若者の「新聞離れ」が進んでいる現状、新聞がこのまま次第に縮小していくのか、横ばいで維持をしていくのか、あるいは巻き返して再び復権してくいのか、読者にとっても、広告主にとっても「魅力ある新聞」づくりへの関係者の努力とともに、「紙対電子」か「紙・電子との共存」かの課題として今後とも注視すべき点であると考えます。

(2006年3月1日)

 

参考・引用文献

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)