牛舎の敷料(牛のベッド)に活用…鳥取県
「書類裁断くず牛のベッドに再利用」、これも「もったいない」という気持ちから生まれた話です。「とっとり県政だより」2006(平成18)年3月号(第551号)に紹介されていたものですが、下記の参考資料から引用させていただき、ここにまとめました。
畜舎の床に敷く資材(敷料、しりょう)は、おが屑やもみ殻等が一般的ですが、鳥取県では、県庁や警察本部庁舎から出る書類裁断くず(ペーパーシュレッダーダスト)を、牛舎の敷料(牛のベッド)に再利用する取り組みを行っています。
県庁などから排出される裁断くずは年間約11トン。紙への再資源化が難しいため、これまでは全て焼却処分されておりました。さらに個人情報の取り扱いにより今後とも増加することが見込まれていますので、焼却するのはもったいなく、その有効活用が求められていました。
裁断くずは、従来の敷料に比べ、水分含量が少なく乾燥していることから雑菌が発生しにくく、子牛の下痢、肺炎また乳房炎の予防に効果的で衛生的な取り扱いができること、吸収性に優れ床面の乾燥状態が維持できること、また保温性が良くて冬も床温を高くできるなど牛舎の敷料に適した優れた特性を持ち、さらに使用後の敷料は堆肥に転用でき、農作物、牧草の肥料としての利用も期待できるとのことです。そのため、県が数年前から実用化のための具体的な検討を行ってきました。
しかし、ホッチキスの針など危険なものが混在したり、またプリンタートナー、カラーコピーや用紙などが牛の健康に影響ないか検証されていないことから、あまり普及はしていませんでした。
なお模索していると、平成14年から県東部のある気高町の畜産農家が、敷料に裁断くずを利用している事例を聞きつけ、試してみようと県の気高農業改良普及所に相談したところ、とんとん拍子に話が進み、まず近隣の役場の裁断くずの利用が始まりました。
軌道にのり、裁断くずが不足してくると、県の東部総合事務所内の裁断くずも提供されるようになりました。
さらに県衛生環境研究所と県農業試験場の分析により、用紙や紙に含まれるプリンタートナー、カラーコピーは土壌汚染対策法および飼料安全法の基準値以下で、牛や土壌に与える影響もなく、安全なことが確認されました。また敷料に使った後、堆肥舎で発酵して肥料として販売する計画もあっため、肥料としての安全性も検査されていますが、結果は、堆肥として植物に対する発芽阻止など有害性は認められないとのことでした。
そのため昨年11月1日から書類裁断くずの回収を開始し、本格的な供給を始めました。写真をホームページとっとり県政だより(2006-03)4-9から引用させていただきました(右写真上…ホッチキスや特殊加工紙などが混入していないか確認後、集められる裁断くず)。
通常、牛舎などに使われる「もみ殻」は収穫される期間が限定されますが、裁断くずは供給量にぶれが少なく、年間を通じて安定供給できること、また有料な「おが屑」と比べても必要なのは運搬費だけで、より安価であるという利点もあり、畜産農家にとって魅力的な敷料といえます。
現在は主に県畜産農業協同組合(鳥取市)の牛舎で利用されている裁断くずですが、今後は県内の畜産農家にもその特性をPRし、利用促進を目指しているとのことです(右写真下…書類裁断くずが敷き詰められた県畜産農協の牛舎(八頭町大坪))。
個人情報の適正な管理のため、今後ますます増加が見込まれる裁断くず。その有効利用が進めば、廃棄物の削減や資源のリサイクルにつながるとともに、牛に優しく、畜産農家のコストも下げられるとあって、一石三鳥になるとのことです。そのため県庁畜産課が希望する畜産農家に裁断くずを提供しています。
【問合せ先】県庁畜産課 電話 0857-26-7286(ホームページ庁内ペーパーシュレッダーダストの牛舎敷料への再利用について)。
すべて焼却処分されていた県庁関係の書類裁断くず(ペーパーシュレッダーダスト)が、資源として再び有効活用されているのを知り、早速紹介したものです。しかも「一石三鳥」、資源を守る「もったいない」精神から生まれた「裁断くずのベッド」、さらに普及し、鳥取県の輪が全国に広がればと思います。
(2006年4月1日)
参考・引用資料
- 「とっとり県政だより」2006(平成18)年3月号(第551号)
- ホームページとっとり県政だより(2006-03)4-9
- ホームページ■2005.11.29 牛は快適、環境にも優しい紙くずのベッド
- ホームページ庁内ペーパーシュレッダーダストの牛舎敷料への再利用について
- ホームページ水田地帯での酪農経営の歩み