コラム(53) 「モーツァルト効果」でミス件数、大幅減少…東京印刷

今年は作曲家モーツァルトの生誕250周年。モーツァルトは1756年1月27日誕生(1791年12月5日没、享年35)で、生はオーストリアのザルツブルク。今、日本でも全国的に「モーツァルト」ブームといわれます。

朝日新聞「be版」(2006年5月20日付)によれば、高価なCD全集が1200セット売れ、全国でコンサートも目白押し。生誕オーストリアへの旅行客は昨年の3倍増ということです。さらに「聴くと頭がよくなる」などとうたった関連商品まで増えて、日本列島はちょっとした「狂騒曲」に包まれていると報じています(参照…asahi.com :be Report - be-business)。

 

モーツァルトの音楽は高周波を豊富に含んでおり、脳など健康を支えている生体機能に良い影響を与え、音楽療法の中で最も優れていると言われています。近年、そのことがテレビ番組で取り上げられ関連CDがベストセラーを続けるなど注目を集めています。

その「モーツァルト効果」で作業能率の向上やストレスの軽減などに取り組み、成果を上げてるところがあります。鳥取県米子市にある東京印刷株式会社(同市両三柳、杉原弘一郎社長)です。

 

東京印刷は1956年創業。今年で創立50周年を迎えています。社名は「これからは東京が発展する。東京で印刷業を」と志した先代社長の発想で名づけられました。しかし、東京での創業はかなわず、元の米子市で会社を設立。その後、山陰初のオフセット輪転機の導入など積極的な営業、技術活動で業績を伸ばしてきましたが、さらに電子メディアへの対応にも取り組み、今では印刷会社という既成概念の枠を超えた総合プランナーとして大きく進展中です(ホームページ東京印刷株式会社参照)。

 

さて、本題の「モーツァルト効果」ですが、鳥取大学医学部の深田美香助教授は、モーツァルトの音楽が疲労度の軽減につながるのか、科学的な調査を行っています。

 

唾液(だえき)に含まれ、精神的ストレスがかかると増加するクロモグラニンAの変化や、疲労感などの自覚症状の変化などを調べ、職場でモーツァルトを流している企業と新規に導入する企業の社員を対象に調査比較しました。

その報告が日本経済新聞(2006年5月17日…中国方版)に「モーツアルトで仕事の疲れ軽減」として掲載されました(右記事参照)。

 

東京印刷は1998年から職場でモーツァルトを流していますが、導入前の1998年6月期に比べて、次第に効果が上がり、2006年6月期現在(予想)では校正や印刷の色違いなどのミスの件数、損失金額とも十分の一以下に減少し、売上高は印刷市場が縮小する中で4割増えているという(右記事、グラフ参照)。

東京印刷の杉原弘一郎社長は「モーツァルト導入で作業効率や発想力がアップし業績にも好影響を与えている」と指摘し、「当初は効果を話すのも恥ずかしかった」と振り返っているということです。そして今は「モーツァルトには8千ヘルツ付近の高周波音が多く含まれ、右脳を刺激する。集中力が増すとともに、愛情も豊かになり、職場内に和・笑顔が生まれ、人を助けようという協同作業の心も養える」と強調されています(日本海新聞情報)。

 

「日本音楽熟成協会」(七田 眞会長)も設立されています。クラシック音楽(特にモーツァルト)の波動による右脳開発は極めて集中力が増し、生産力向上、ミスの削減、人間力のレベルアップ、ヒラメキ、イメージによるデザイン力の飛躍的アップなど、その効果は大きいものがあるということで、広く伝えようと、2003(平成15)年7月に杉原社長(同協会理事長)が設立しました。

現在、約50社が加盟してしますが、昨年11月には韓国にも「韓国音楽熟成協会」が発足、今、台湾でも設立の動きが進んでいるとのことで、活動の輪は徐々に広がりを見せているようです(ホームページ日本音楽熟成協会参照)。

 

まだまだある「モーツァルト効果」への取り組み

ほかにも「米子発 広がる『音楽熟成』の試み」として元の方紙「日本海新聞」(2006年05月25日付)に報道されました。この中で、王子製紙の関連会社の米子王子紙業(同市吉岡、水島貞夫社長)はクラシックを中心に社員の好みの音楽を流しているが、やはりきっかけはモーツァルト音楽の効果を耳にしたことだったとのことで、「工場内の空気が変わり、落ち着いた雰囲気になった」として紹介されています。以下にその全文を引用させていただきます。

 

米子発 広がる「音楽熟成」の試み

(日本海新聞 2006/05/25の紙面より)

モーツァルトの楽曲を流して作業能率の向上やストレスの軽減を図る「音楽熟成」の取り組みが企業などに広がっている。日本音楽熟成協会(事務局・米子市、七田真会長)はクラシック音楽、特にモーツァルトの作品が右脳を刺激して潜在能力を引き出すと提唱。環境音楽としての普及に取り組んでいる。活動は海外にも広がりを見せ、科学的な調査も始まるなど、生誕250周年ブームの中、モーツァルトへの注目は高まる一方だ。

 

モーツァルト効果 作業効率アップ!!

米子市淀江町中西尾のバラ農家、森田等さん(64)がビニールハウスでモーツァルトの楽曲を流すようになったのは二〇〇二年から。余分な花芽や葉を摘むなど細かい作業が多いが、「以前よりも疲れを感じなくなり、集中力が増した」と効果を語る。花が丈夫で長持ちするという評判もあるそうだが「ただ聴かせれば元気になるわけでなく、バラがどんな世話を必要としているか気付くようになったからでは」と笑顔で話した。(スピーカーから流れるモーツァルトの名曲を聴きながら作業する森田さん…写真省略)

 

♪酒蔵、学校でも

益尾酒造本店(米子市道笑町二丁目)では酒蔵や事務所で一日中流し続けている。杜氏(とうじ)らのチームワーク、原材料のコメや水の熟成への効果を期待して〇四年から導入した。三宅清一社長は「県外の取り組みを聞いたのがきっかけ。まろやかに熟成した酒ができ、評判も上々」と満足そうに語った。

美容専門学校「米子ビューティーカレッジ」(同市富士見町一丁目)は〇四年の開校当初から授業中に楽曲をかけ、生徒の集中力を高めるのに役立っているという。岡山県倉敷市で「倉敷ビューティーカレッジ」も運営する学校法人小土井学園の小土井秀明理事長代行は「一時間かかる仕事が五十分でできるなど、仕事の効率が高まる」と効果を強調する。

米子王子紙業(同市吉岡、水島貞夫社長)はクラシックを中心に社員の好みの音楽を流しているが、やはりきっかけはモーツァルト音楽の効果を耳にしたことだった。「工場内の空気が変わり、落ち着いた雰囲気になった」としている。

 

♪科学的調査も

音楽が疲労度の軽減につながるか、科学的な調査も始まった。鳥取大学医学部の深田美香助教授は、唾液(だえき)に含まれ、精神的ストレスとの関連性が強いクロモグラニンAに注目。職場でモーツァルトを流している企業と新規に導入する企業の社員を対象に比較調査を行っている。

調査に協力している東京印刷(同市両三柳)は一九九八年からモーツァルトを流しているが、導入前に比べて現在ではミスの件数、金額が十分の一以下に減少したという。杉原弘一郎社長は「当初は効果を話すのも恥ずかしかった」と振り返る。

杉原社長は同協会の理事長を務めており、〇五年十一月には韓国でも協会が発足。現在は台湾でも設立の動きが進んでおり、「徐々に広がってきたが、やはりいいことはいい。道に活動を続けたい」と話している。

 

参考

「モーツァルト効果」は何故あるのか、ちょうど5月24日のTV、NHKためしてガッテンで「大実験!モーツァルトのツボ」の放送がありました。大いに参考になりますので下記にその要点を掲載しておきます。ご参照ください。

 

今年で生誕250周年を迎えたモーツァルト。特に興味がなくても、誰でも一度はその音楽を聞いたことがあるはずです。その親しみやすさにはどんな理由があるのか、ガッテン流の様々な実験で紹介! 実は、番組でいつも流れているガッテンのテーマ曲もモーツァルトと、深い結びつきがあったのです!

 

(1)オープニングクイズ

問題:モーツァルトを聞いたときに年代を問わず表れた感情とは?

答え:喜び

※今年1月に放送したNHK「クローズアップ現代」で紹介した実験。20代、30代、40代、50代の各4人(計16人)に、ポップスとモーツァルトの代表曲を聞いてもらったところ、ポップスは年代によって喜びの感情の出方に差がありましたが、モーツァルトは年代に関係なく安定して表れました。

問題:3つに分けたカイワレ大根の種に、[1] モーツァルト [2] 音楽なし [3] ダンス音楽を聞かせたところ、最も成長が良かったのはどれか?

答え:モーツァルト

※発芽して成長した長さの平均を比較すると、[1] 4.9センチ(モーツァルト) [2] 2.9センチ(音楽なし) [3] 3.3センチ(ダンス音楽)という結果でした。栽培期間は1週間、水と日光の条件は一定です。モーツァルトの成長が良かった理由は、音楽の振動の影響という説もありますが、現在のところはっきりしたことはわかっていません。

 

(2)「バンジーで実験!モーツァルトの“効果"」

モーツァルトのストレス解消効果を調べるため、若者にバンジージャンプをしてもらうと告げてストレスをかけた後、次の3条件でそれぞれのストレス軽減効果を比較しました。

[1]モーツァルトを聞く

[2]好きな音楽を聞く

[3] 音楽なし

すると、意外にも [3] 音楽なし が一番ストレスが下がりました。

 

(3)モーツァルトにストレス解消効果はないのか?

モーツァルトの音楽に他の音楽にはない特別な効能があるかどうかは、現在のところはっきり分かっていません。ストレス解消効果や癒し効果についても、モーツァルトに効果があるという研究結果がある一方、モーツァルトを好きでない人が聞くとかえってストレス負荷が増大するという研究もあります。

今回の被験者もモーツァルトの音楽を元々好きではなく、かつバンジージャンプを飛ぶという強い負荷をかけられたこともあって、ストレス軽減には結びつかなかったようです。

 

(4)モーツァルトの親しみやすさの理由 ベスト3

第1位 サロンの会話だから

第2位 風の音と同じ和音だから

第3位 ついつい口ずさんじゃうから

 

(5)「“運命"ののど自慢対決!」

モーツァルトの音楽を「ついつい口ずさんでしまう」のはなぜでしょうか? そこで公園にいた人に、モーツァルト(交響曲第40番第1楽章)と、比較のためベートーベン(交響曲第5番「運命」第1楽章)を歌ってもらいました。

息苦しくなったところで旗をあげてもらうようにしたところ、モーツァルトは旗の上がる回数が少ないという結果になりました。その秘密は休符の多さ。モーツァルトの音楽は息継ぎがしやすく、結果的に口ずさみやすかったのです。

 

(6)「仰!ガッテン!共通点!」

9人の主婦を招いてスペシャルコンサートを開きました。演奏されたのは、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」と「ためしてガッテン」のテーマ曲です。この2曲に共通する点を推理してもらいましたが、主婦たちには見当がつきません。

そこでヒントとして3人の音大生が登場し、曲に合わせて3色(赤、緑、黄)の札が上げられました。

3色の札が表していたのは「和音」。赤が「ドミソ」、緑が「ファラド」、黄が「ソシレ」。実はこの2曲、モーツァルトは90%、ガッテンは100%が、この3つの和音のどれかによってできていたのです!

 

(7)「これがドミソのミソ!」

「ドミソ」と「ドミソ#」を3人のトランペッターに吹いてもらい、それぞれどこまで音が届くか調べました。すると、「ドミソ」は「ドミソ#」の1.7倍遠くまで音が聞こえました。

「ドミソ」と「ドミソ#」の波形を分析すると、ドミソは周波数波形が規則的で安定した形、ドミソ#は複雑な波形となりました。さらに「ドミソ」には鐘や風鈴と同様の音の成分が認められました。

 

(8)鐘や風鈴と同じ成分とは?

「ビート」と呼ばれるものです。この場合のビートは、リズムのビートではなく、同じ音のようでも周波数が微妙に異なる場合に発生する、音のゆらぎのようなものです。鐘や風鈴にはこの成分がよく見られます。

モーツァルトの曲には「和音」が多く、鐘や風鈴と同じ音の成分によく見られる「音のゆらぎ」のようなものが多く含まれています。

すなわち、モーツァルトの曲は隣合った音をつなげていくメロディがよく使われており

、安定して優雅な音感を与えます。しかもモーツァルトの音楽はおしゃべりするように「会話的」なメロディとなっており、心よさが感じられるということです。

 

このようにモーツァルトの音楽を聴いていると、疲れた体が元気になり、心が軽やかに上昇し、脳が活性化されるように感じることが多いようです。これはモーツァルトの音楽が、バイオリンなどに代表される高周波音を多く含み、その高品質な倍音が、副交感神経に作用して活性化し、不安やストレスを取り除いて、脳をリラックスさせる「癒し効果」のパワーを秘めているからだといわれます。さらにモーツァルトの曲には、一定の安定したリズムが刻まれており、そのリズムは、曲が始まるや否やすぐに聴く人の生体リズムに呼応して、バランスの崩れた自律神経を調律し、理性と活力を与えてくれると評価されています。

 

論議の的、「モーツァルト効果」

このような「モーツァルト効果」について、きっかけになったのは1993年、権威ある科学誌「ネイチャー(Nature)」に載った米ウィスコンシン大学のフランシス・ラウシャー准教授(心理学)らの論文です。

ラウシャー博士らは36人の被験者を

(1)モーツァルトの「二台のピアノのためのソナタ(K448))」を聞かせる

(2)リラックス効果のあるテープを聞かせる

(3)静寂……

の三つの状態に10分ずつ置き、知能検査(IQテスト)を受けさせたら、(2)(3)に比べて(1)が8~9%良い結果になったが、10~15分で効果は消えた、という内容です。これが大反響を呼び、モーツアルトブームを巻き起こし、「モーツァルト効果」と呼ばれるようになったというものです。

しかし、米ハーバード大学のクリストファー・シャブリス講師は1999年、追試結果などをまとめ、「モーツァルト効果は認められない」とする反論の論文を「ネイチャー」に掲載。再反論がまた出るなどして論争は続いており、決着はついていないということです(朝日新聞…2006年5月20日付「be版」)。

 


 

「モーツァルト効果」の論議は専門家に任せることにしますが、先の6月19日、NHK総合TV番組「プレミアム10」で「もっと暮らしにモーツァルト」「聴いてトクする?名曲セレクション~生誕250年~」(午後10:00~11:30)を見ました。非常によくまとまっており、楽しくてためになりました。その中でいくつか名曲の演奏がありましたが、それらを聴くと、落ち着き、就寝時間帯でもあり、つい、うとうととしました。私にも癒し効果があるようです。

実際にモーツァルトの音楽を聴いて、穏やかになり、心が和やかになれば、それで満足。そう思いながら十数年前に購入した「クラシック音楽全集」からモーツァルトのCDを選び、聴いているこのごろです。皆さん自身も「モーツァルト効果」を試されたらいかがでしょうか(参考:モーツァルト 癒しと名曲の部屋…数あるモーツァルトの名曲を分野ごとに分類したCDを紹介したホームページ)。

(2006年7月1日)

 

参考・引用文献

  • 朝日新聞…2006年5月20日(土)付「be版」asahi.com :be Report - be-business
  • 日本海新聞(2006/06/17付)域経済を支える 新鳥取県の主要・中堅企業
  • 日本経済新聞…2006年(平成18年)5月17日付中国方版
  • ホームページ東京印刷株式会社 日本音楽熟成協会
  • ホームページ米子発 広がる「音楽熟成」の試み(日本海新聞…2006/05/25付)
  • ホームページNHKためしてガッテン 「大実験!モーツァルトのツボ」(2006年5月24日)

 


更新日時:(吉田印刷所)