コラム(58) 一枚の紙が夢をのせて、飛べ! 世界最大の折り紙飛行機

感動しました。テレビを見て久しぶりに感動しました。NHK広島放送局制作のふるさと発スペシャル「飛べ!ぼくらの巨大紙ヒコーキ」(2006年9月15日(金曜日)午後8:00~8:43…総合テレビ)です。

広島県府中市の南小学校の6年生5人が途中くじけそうになりながらも、協力しないと出来上がらないこと、リーダーがいないとまとまらないことなどを学びながら、みんなで助け合い、がんばって作った世界一巨大な折り紙飛行機。ついに空に舞い、世界最大の紙飛行機を飛ばしたいと夢見てきた夢が叶ないました。

 

「夢」、世界最大の紙飛行機を作り、飛ばしたい

夢への挑戦、その発端は1年前にさかのぼります。広島県には社団法人 青少年育成県民会議が青少年の夢や目標を育む域づくりを目指し、県内の小学生から寄せられたさまざまな「夢」の実現をサポートする「夢配達人プロジェクト推進事業」という取り組みがあります。同事業は子どもの夢を形にするため、町内会やPTAなど域の大人たちで「夢実行委員会」を結成。1年目で実施計画を練り、2年目には「夢」を実現するために選ばれた“一流の人・達人"が「夢配達人」となって一緒に支援し、夢を叶えるもので、県が50万円を上限に支援するというものです。

それに紙飛行機好きの南小学校5年の池田智裕君が応募。池田君は「保育所のころは、お父さんやお母さんに教えてもらっていたけど、最近は戸田さんの本を見ながら折っています」という紙飛行機好きで、慣れた大人でも手こずる「スペースシャトル」も30分ほどで折りあげる腕前ということですが、その池田君の夢は「(日本折り紙ヒコーキ協会会長の)戸田拓夫さんに手伝ってもらって、世界最大の紙飛行機を作りたい」というもので、見事平成17年度「夢」実現プロジェクトに採用された8件の内のひとつに選ばれました。それは昨年(2005年)9月20日のことです。そしてこの日が池田君の「世界で一番大きな紙飛行機を作り、飛ばしたい」という夢、実現のための第一歩となりました。

ところで紙飛行機は、文字通り紙を飛行機のような形に折ったり切ったりして、飛ばすものですが、その作り方によって大きく分けて「折り紙飛行機」と「切り紙飛行機」があります。折り紙飛行機は1枚の紙を折るだけで作る飛行機で、切り紙飛行機は紙を切り、接着剤で貼り合わせて作った飛行機です。池田君が挑戦したのは「折り紙飛行機」です。

折り紙飛行機の決まりは、今回「夢配達人」となり、指導してもらうことになった日本折り紙ヒコーキ協会(会長:戸田拓夫氏)によると、次の3点だそうです。すなわち、

  • 紙を切らずに折るだけで作ること
  • 糊で紙を貼りつけずに作ること、そして
  • 良く飛ぶこと…形を楽しむだけでなく、バランスや飛行性能にすぐれ、グライダーのように滑空することです。

そして折り紙飛行機のこれまでの世界最大記録(同協会認定)は、04年1月に広島県神石郡神石高原町(じんせきこうげんちょう)の豊松中の生徒らが打ち立てた全長1.95mと言うことです。もちろん池田君はそれよりも大きな紙飛行機に挑戦することになります。

 

夢実現に向かって

夢実現に向かって準備が始まりました。まず重要な材料となる紙の準備です。そのため今年1月6日に池田智裕君と府中市夢実行委員会準備会メンバーが元にある王子製紙㈱呉工場(呉市広末広)を訪問。池田君から自分の夢を発表した後、準備会メンバーである日本折り紙ヒコーキ協会認定指導員の方が工場の人に紙飛行機のサンプルを渡し「強度があり、軽くて柔軟な紙で3.5m×2.5mの大きさ」などと必要な紙について説明。同時に紙飛行機を作る大型の紙の提供と協力を依頼し、同工場から協力と紙の提供の快諾を得た由。また、木材チップと古紙などの紙原料や紙製品を運ぶ船、紙を抄くマシン、紙製品の仕上がりをチェックする「検紙」工程などを見学し、紙の勉強も実施。

こうして「小さなヒコーキに大きな夢をのせて」池田君の夢は、王子製紙呉工場の皆さんや支援する方々の協力により、今、飛行準備の活動が始まりました。

そして4月。6年生となりました。巨大な折り紙飛行機を作るには、一人ではできないので、池田君に新たなメンバー4人(男子2人、女子2人)が加わり、5人体制のチームづくりが始まりました。しかし、メンバーには折り紙飛行機をこれまでに作ったことがいない人がいるため、まず、みんなで紙の勉強を始め、小さな紙飛行機の折り方や飛ばし方を習うことからのスタートです。そして飛行の目標は今年の夏休み(8月4日)に、世界一の全長2mの折り紙飛行機作りに挑戦し、飛行させるという予定も決まりました。

5月には、福山市にある紙ヒコーキ博物館へ行き、「夢配達人」でもある戸田拓夫さんから説明を受けながら、博物館にあるさまざまな紙飛行機を見た後、製作する紙飛行機は、ボディが中空のため巨大化が可能で大きくても飛びやすいという、戸田さん考案のコックピットつきの立体型スペースシャトルに決まりました。ただ、山折り、谷折りなど100回近い多くの折り工程があり大変です。

折り方の特訓を受けながら早速、縦80センチ、横55センチほどの紙を使って、小型のスペースシャトル作りに挑戦。複雑な折り方に悪戦苦闘しながらも何とか完成しましたが、戸田さんからは「大きな紙飛行機は折り方がとても難しい。大きな紙で折るには、チームワークが大切。次回の練習までに10機折ることと、紙飛行機の新しいアイデアを3機考えてきて。次は1.5メートルの大きさに挑戦してみよう」とアドバイスがあり、宿題も出されました。

メンバーは6月もさらに練習を重ねます。挑戦する紙飛行機作りも次第に大きくなってきて、用いる紙も大きくて厚くなり、折りにくくなってきました。折り目を間違ったら強度が弱くなること、協力しないとうまく出来ないこと、リーダがいないとまとまらないことなどを体験し、みんなで助け合い、心を一つにして力を合わせことが重要であることを知るようになります。

7月。日本折り紙ヒコーキ協会認定指導員の岸浦武繁さんの指導でさらに大きな世界最大となる全長約2mの紙飛行機を試作。1枚の大きな紙を5人で折るけど、呼吸が合わずなかなかうまくいきません。くじけそうになりながらも何とかできあがった巨大紙飛行機。しかし、今度はうまく飛びません。岸浦先生の診断で飛ばなかった原因を調べ、ねじれやずれの応急修理をして再トライし、ようやく少し飛行。岸浦先生は「折る時も飛ばすときも、みんなが息を合わせてやらないと成功しません。チームワークがとても大切です」と助言。失敗は成功のもとと言いますが、作って飛ばす、楽しさも少し分かるようになってきたようです。本番まであと1ヶ月、さらにグループみんなで練習が続きます。

 

そして前日、巨大紙飛行機作りです

そして8月3日、前日です。明日飛ばす巨大紙飛行機作りの日です。その紙が目の前にありますが、「世界最大の紙飛行機」には大きな強度と高い剛度を持ち、たわみにくくするため厚みを要する反面、柔軟で折りやすく、しかも軽くて飛びやすいものが最適という、品質上、相反するような特別な紙です。

この特別仕様の紙は王子製紙呉工場の協力で手当てをしたものですが、呉工場ではこれに見合う紙を生産していないため、王子製紙グループ全体の中から探し、鳥取県や滋賀県、愛知県などの工場の紙を何回も評価した結果、最後に静岡県にある王子特殊紙・東海工場富士宮事業所の特殊板紙(いたがみ)が提供されたということです。

この板紙は坪量520g/m2で、何枚かの紙を抄き合わせて1枚の板のようにした特別造りの紙で、この板紙を静岡県の王子特殊紙富士宮事業所からおよそ700km以上離れた呉工場に搬送。呉工場で全長2メートルの紙飛行機1機あたりの必要なサイズ、縦3.1m、横2.2m(重さ約3.5kg)に断裁し、現にトラック運送されました。その紙でもってみんなで力を合わせ、がんばり、山折り、谷折りなど100回近い折り工程を経て9時間かけて6機を折りあげました。いよいよ明日、近くの府中東高校の校庭に向けて、夢を乗せて飛び立ちます。

 

ついに「夢」、達成

遂にきました8月4日(金)。飛行の日です。214人の全校児童や先生方、域のみなさんや新聞、テレビなどの報道数社などが集合しており、たくさんの人です。

セレモニーでは実行委員会の会長、府中市長、青少年育成広島県民会議の理事、王子製紙呉工場代表や、夢配達人の戸田先生からそれぞれお祝いや励ましの挨拶があり、その後にメンバー5人を代表して池田君から「今回のチャレンジで仲間と力を合わせる大切さを学びました。がんばって飛ばします」と感謝の言葉と決意を表明。さらに学校や域のみなさんも校庭で紙飛行機を飛ばして気分を盛り上げました。

column-028.jpg本番前の先行飛行で、特訓を重ねてきた飛ばし方をもう一度確認した後、いよいよ本番です。1機目、慎重に飛ばしますが、左側にまわり墜落。飛ばし役は飛行機が大きいため男子3人、女子2名が前方でこれを見て、左右のバランスがいいか、機首の向きはよいのかを手で合図をします。その合図によって男子3人が力を合わせて、練習のときのように「いち、に、さん、ハイィー」と声をかけて飛ばすわけですが、呼吸かわずかにずれただけで飛行機がうまく飛んでくれません。2機目も駄目。3機目、飛びましたが、滑空したかどうか微妙。そして4機目も駄目。周りに不安感がただよう中、5機目、3人と合図の2名の息がぴったり合い、文句なく滑らかに遂に飛行しました(写真:NHK総合テレビ、ふるさと発スペシャル「飛べ!ぼくらの巨大紙ヒコーキ」から)。

見事、世界で最も大きく、白くて美しい折り紙飛行機、スペースシャトル「ドリームチャレンジャー」号が風に乗って滑空、空中を飛び立ったのです。「夢」が叶った瞬間です。会場にいるたくさんの応援者の祈りが、熱気ある大きな歓声と拍手に変わりました。それは30℃をはるかに超える暑い暑い夏のことでした。

紙飛行機の全長は2.05mで世界最大記録を遂に達成(飛行距離40.7m)。日本折り紙ヒコーキ協会から折り紙飛行機がうまく飛行できたと認定され、池田君らメンバー一人ひとりが戸田会長から世界記録認定書を受け取りました。

ここに「(日本折り紙ヒコーキ協会会長の)戸田拓夫さんに手伝ってもらって、世界最大の紙飛行機を作りたい」という1年前の池田智裕君の「夢」が叶ったわけです。池田君らメンバー全員で失敗を重ねながらも一生懸命、努力し助け合って力を合わせ、がんばって達成できたのです。しかし、その陰には1年がかりの長い時間かけた学校の先生方や生徒、域のかたがた、それにそれぞれの両親・家族、夢配達人の日本折り紙ヒコーキ協会や材料の紙の提供した王子製紙関係の人達など多くの人の助言や、応援と協力があって達成できたものです。

関係した多くの人たちの夢を乗せて世界最大の折り紙飛行機は飛び立ち、その夢が叶ったのです。その夢を育んだ青少年育成広島県民会議と一枚の紙に万歳!!

 


 

紙飛行機の大好きな池田君の次の目標は「滞空時間」、「飛行距離」で世界記録に挑戦したいとのこと。また「次は宇宙で飛ばしたい」と威勢のよい声もあるとか、これからも「夢」を持ち、その「夢」の実現にくじけずに挑戦してほしいものです。そして少年少女に今回のような感動を与え、それぞれの「夢」を育ませてほしいものです。

(2006年10月1日)

 

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)