コラム(61-2) 紙媒体と電子メディア(1) インターネット時代の到来と紙離れ傾向 2

インターネット時代の到来と紙離れ傾向

そしてインターネット時代が到来。インターネットを利用できる人とできない人との格差問題、ネットワーク・エチケット(ネチケット=インターネットとエチケットの合成語)問題など、まだまだ幾多の問題がありますが、情報を受・発信しうる新しいメディアとなり、機能の面でも音声・映像のリアル伝送が可能になるなど、着実な革新を遂げてきました。

今やパソコンや携帯電話(ケータイ)は、私たちの日常生活やビジネスなどに欠かせない大変便利なコミュニケーションツールとなってきました。例えば、パソコンや携帯電話にメール機能が加わったことで、しかも使いやすく改良されたことで、電子メールは大きく普及し一般の人にも広がるようになりました。

総務省によれば、パソコン世帯普及率は1990年代前半までは10%台と一部専門家やマニアに限られた普及であったのに対して、98年は32.6%、2000年が50.5%と90年代後半からは普及率がどんどん上昇し、06年/3月末には80.5%と国民に広く普及しています。

また、携帯電話の世帯普及率は1993年の3.2%から2003年の93.9%へと10年間で一気に0%近くから100%近くへと急増しており、国民に広く普及。04年、05年には対前年で若干マイナスに転じたものの、90%レベルで高い水準にあります。

さらに、インターネット世帯普及率は、96年からの統計がありますが、その年は3.3%、翌97年は6.4%とまだ低く、あまり伸びていませんが、2000年が34.0%、01年が60.5%と大きく伸びました。このころから急速に普及が広がったことは上記のようにパソコン普及率の上昇と連動していることが分かります。そしてその後もさらに伸び、05年末時点の世帯普及率は87.0%に達しており、約9割の家庭にすでにインターネットが普及していることになります。そして2005年末でインターネットの利用者数は8,529万人、人口普及率(利用率)は66.8%と推計されていますが、これは、日本人の3人に2人がインターネットを利用している計算になります。そして現在、日本では約8,000万人が電子メールを使用していると言われています。

また、年齢別でのインターネット利用状況は、10歳代後半から40歳代にかけては、利用率が90%に達している一方、50歳代では75.3%、60歳代後半では42.0%と半数を下回り、70歳以上の高齢者では、前年と比較するとかなり上昇しているものの2割以下と低くなっています。

このように年齢別のインターネットの利用格差、いわゆるデジタル・デバイドがありますが、さらにインターネットはこれからもますます操作しやすくなり、進化しながら、私たちの生活や職場のなかに浸透し広く普及していくでょう。そして数年後には、ほとんどの人がインターネットを利用するようになりことでしょう。

 

それでは紙との関わりはどうでしょうか。私自身を例にして紹介します。それまでは文章・資料などの作成、印刷にワープロ(ワードプロセッサー、ワープロ専用機)をよく使いました。ところがパソコンの時代になり、1998年にはマイクロソフト社のパソコンソフト、ウィンドウズ98(Windows98)が登場しました。これを契機に一段と性能が上がり、さらに使いやすくなり、ネットワーク機能を中心に様々な改良が施され、パソコンが広く普及しました。私もパソコンをこのときに購入しました。さらにパソコンはソフトウェアやハードウェアが進化し、Windows XPが登場し、それに更新。もちろん、ワードプロセッサーソフトもプリインストールされている、そのパソコンで文章・資料などの作成、印刷はもとより、ホームページを開設、電子メールをし、インターネットで検索し、電子物の辞書・百科事典などを使い、さらにゲームを行うなど重宝に活用しています。

それでも紙には愛着があり、新聞3紙を愛読し、雑誌や参考書などを購入するなど、紙にはお世話になっているほうですが、電子化により以前よりは手で書くことが少なくなった上、紙離れになってきています。

私ばかりでなく、このような個々で多くの人の積み重ねで、特に若い世代を中心に「活字離れ」「紙離れ」が進んでいるのではないでしょうか。さらに最近の例を挙げて見ていきます。

 

(1)固定電話の家庭への普及懸念で「ふみの日」(1979年)が制定されてから、15年後には今度は「電子メール」の脅威に曝されることになりました。

郵政省から2003年4月1日に引き継いだ日本郵政公社も、「手紙の良さ、楽しさ」を多くの人に知ってもらうために「ふみの日」を契機に手紙を書くことを普及・啓発させる運動を全国的に展開していますが、手紙(封書)や郵政はがきなどへのプラス効果が現れていないようです。

前回のコラムで紹介した「年賀状離れ」のほかに、通常の「はがき離れ」の要因がまだあります。例えばテレビ・新聞・雑誌などで〇〇の募集とか、物品等の申し込みなどを募っておりますが、それに応募するのに、以前は「はがき」が多く用いられましたが、最近ではそれに加えて、必ずと言ってよいほど「ホームページ・電子メール」のインターネットでする方法が採られています。このことも間違いなく「はがき」減の原因になっています。

これらのことを日本郵政公社の資料が裏付けています。それによれば、2005年度における総引受郵便物数(内国郵便物数と国際引受郵便物数の合計)は248億1,862万通(対前年度比0.7%減)となっています。内訳は、内国郵便物数では、通常郵便物が対前年度比3.5%減と減少したものの、小包郵便物は同45.1%増。他方、国際郵便物数では、国際引受郵便物数が対前年度比4.4%減、到着物数が同2.1%減となっています。しかも内国郵便物の通常郵便物に相当する封書の1種郵便物、郵政はがきの第2種郵便物や、年賀郵便物およびその他(第3種・第4種・選挙および特殊便物数)の全便物数とも2001年をピークに02年から減少しています。

さらに日本郵政公社が最近発表した06年9月中間決算では、郵便業務は民間事業者との競争激化や電子メールの普及に押されて通常郵便物が前年同期比2.4%減少したと報告されており、封書、郵政はがきなどの郵便物減に止めがかかっていません。

 

(2)しかも、「新聞離れ」とか、「活字離れ」と言われるように新聞や本を1か月間とか久しく読まない人が増えています。少し古くなりますが、2005年11月2日付の元新聞(日本海新聞)に「高校生の7割が新聞を『必要』と考えているものの、6割が『読まない』」という記事が載っていました。それによりますと、NIE(教育に新聞を)実践高の米子にある高校が実施した新聞に対する生徒の意識をアンケート調査したもので、社会や世界の出来事に対しては68%が「興味がある」と回答。ニュースの重要性は91%、新聞の必要性は72%が認めているものの、新聞を読む時間は「3分以内」が半数以上で、読む面は「テレビ欄」が最も多く、ニュースを得る主な手段は9割が「テレビ」という。

対象は2年生約200人。同校は同年9月からNIEを実践しており、学習の事前アンケートとして実施したもので、集計によると、95%が自宅で新聞を購読しているが、「毎日読む」が8%に対し、「時々読む」が29%、「読まない」が63%だった。読む時間は、9割が10分以下で、読む面は「テレビ欄」(35%)が最も多く、次いで「芸能」(17%)、「スポーツ」(15%)「社会」(10%)。ニュースを得る主な手段は「テレビ」が88%と圧倒的に多く、インターネット(9%)が新聞(2%)を上回ったという結果でした。

また、先のコラム「年賀状」にも述べましたが、特に若い世代のニュースソースはテレビ・インターネット主体で、新聞を見なくても別に不便を感じなく、見てもテレビ番組掲載面がほとんどで、結婚して独立しても自らは新聞を購読することはまれであるという。このように若者中心に「新聞離れ」が増えているようです。

それを裏付けている資料があります。すなわち、日本新聞協会(毎年10月調べ)によれば、新聞の発行部数と1世帯あたり、および人口1,000人あたりの新聞の発行部数ともにここ数年減少しており、新聞離れを物語っています。

 

(3)また、出版科学研究所(東京)によると、書籍、雑誌やコミック誌が減少し、国内の2005年の出版市場は、前年が「ハリー・ポッター」シリーズ第5巻のヒットで8年ぶりに微増となったのもつかの間で、再び縮小に転じ、本離れに止めが掛からないとしています。例えば、書籍、月刊誌および週刊誌の発行部数の2000年を基準(100)にした05年の伸び指数は、それぞれ94.8、95.1および80.1でいずれもマイナス基調にあります。

 

(4)さらに紙の辞書や百科事典などの多くは、電子辞書に置き換わってきています。もう過去のことになりますが、学生のときに使用した(ヘンミ)計算尺や(タイガー)手動計算機が電卓(電子式卓上計算機)に完全に代わったように、辞書・百科事典類も紙に取って代って電子メディアの時代になりつつあります。

これも私事ですが、会社勤めして間もない、1965(昭和40)年に平凡社の「新版改訂 世界大百科事典(全24巻)日本図・世界図付」(1965年4月初版発行)を購入しました。本棚の2段を占め、ことあるたび本棚から取り出しては、ケースを取って読んだり、見たりしたものでした。1冊の重量もあり、面倒な面もありましたが、知識を得るのに満足でした。

その後、98(平成10)年にパソコン対応の電子版(世界大百科事典(第2版 CD-ROM版)…日立デジタル平凡社)が発行されましたので、早速買いましたが、電子版はたった2枚のCD-ROMで価格はおよそ6万円。そのころの書籍版は全35巻で27万円。重さは全部で約63kgだそうで、かなりの置き場所が必要ですが、電子版は安い上に軽くて手元に置け、非常に便利に使っています。このように紙から電子版に代わってきています。

また、つい最近では、「論座」(月刊誌 2007年1月号…2006/12/5発行、朝日新聞社出版局)に「辞書が消える日」-紙か電子か苦悩する出版社-が掲載されており、辞書・事典が紙から電子メディアに移行する出版社の苦悩が記されています。

確かに、辞書・事典類の電子化が進んでいますが、その歴史は1980年以降、コンピュータの普及に伴い、百科事典類はCD-ROMなどでコンピュータソフトウェアとしても出回るようになりました。そしてさらに発展し2000年ころからは、インターネットの普及に伴い、例えば、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(Wikipedia - メインページ)などのウェブ版も作られるようになってきており、現在は携帯電話のi-mode等でアクセスできる百科事典も存在しており、誰でも、使いたいときに、どこでも百科事典などの知識にアクセスできる環境になりつつあります。

 

このような傾向は、テレビの視聴覚による情報入手と、さらにインターネット時代の到来で情報の入手、発信が容易にできるようになったこと、電子メールによって紙の手紙・はがきに代わって受発信する傾向が増えてきたことなどの影響が出てきているようです。加えて、パソコン・携帯電話や他の端末機で閲覧しやすくなった電子書籍・辞書などの電子化の伸びもあり、「紙離れ」「活字離れ」が進んできているようです。

(2007年1月1日)

以下、つづく

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)