私が日常生活で紙に最初に接するのは、朝食のときのティッシュペーパーです。食事中とか、終わったときに口元を拭いたりするのに使いますが、習慣になっており、必ず1、2枚使ってしまいます。次は新聞、そしてトイレットペーパーという具合です。今回の「書く・拭く・包む」シリーズは皆さんにも身近なティッシュペーパーとトイレットペーパーです。
はじめに
いま、AさんとBさんの二人が会話をしています。ちょっと聴いてみましょう。
A:「この暑い時期に泳ぎたいが、僕は泳げないんだぁ。」
B:「どうしてなの。」
A:「水が苦手なんだ。泳ぐと身体が骨抜きになって、ばらばらになってしまんですよ。」
B:「それは大変だわ。私は大切に育てられた『箱入り娘』なの。色白でしょう。しかもスリムで肌も柔らかなの。でも、芯はしっかりしてて、水にも強いのよ。」
A:「それは羨ましいね。水には弱いが、僕だってしっかりと働いているんだ。君のように強いのは、僕たちの職場ではトラブルを起こしやすく、向かないよ。」
B:「そうなの。けど、私だっていっぱい働くところがあるわ。」
A:「それはいいね。どんなところなの。」
B:「家はもちろんのこと、各部屋やいろんな職場、車のなかでも働いているのよ。」
A:「へぇ、楽しくて忙しそうだねぇ。」
B:「そう、大変忙しいのよ。時にはこき使われることもあるわ。」
A:「僕だって、働くところがずいぶんと増えたし、居ないと困るし重要な存在なんだ。」
B:「私たちがいると、みんなに安心と温もりを与えているようね。」
A:「そうだね。有り難味が分かっていると嬉しいけどね。やたらと使う人がいるけど、『大事に、いたわり』感謝の気持ちで使ってもらえるといいね。」
B:「本当にそうね。私、きれいになりすぎたのかしら。みんなに重宝がられ、身近において何でも私を使うのよ。お給料も安いので、もう少しあげてほしいわ。」
…、まだまだ会話は続きそうです。もうお分かりでしょうが、それではA、Bのどちらが、ティッシュペーパーかトイレットペーパーでしょうか?
品種分類上は衛生用紙、微増中
上記の答えは、Aがトイレットペーパーで、Bはティッシュペーパーです。如何でしたか。それではここで基礎的なおさらいをしておきます。
まず品種分類から説明します。日本製紙連合会の「紙・板紙の品種分類」により、「紙」は新聞巻取紙、印刷・情報用紙、包装用紙、衛生用紙および雑種紙と「板紙」に分類されていますが、ティッシュペーパーとトイレットペーパーは「衛生用紙」に属します。ここで衛生用紙とは、主に一般家庭で使用される、いわゆる家庭紙といわれるもので、ティッシュペーパー、トイレットペーパー以外にタオル用紙や、生理用紙、ちり紙などがあります。
なお、「紙・板紙の品種分類」も変遷があり、現在の「衛生用紙」以前は、1968(昭和43)年1月の改正時に新設された「家庭用薄葉紙」でした。そのときはティッシュペーパー、京花紙、ちり紙、トイレットペーパー、生理用紙、タオル用紙、その他家庭用薄葉紙に区分されていました。それが20年ぶりの1988(昭和63)年1月の改正で家庭用薄葉紙から「衛生用紙」に呼称が変更になるとともに、量的に少量になった京花紙は「その他衛生用紙」へ統合されました。さらにその後の小改正で「生理用紙」(平成9年)と「ちり紙」(平成14年)は削除、「その他衛生用紙」へ統合されており、現在の衛生用紙は下記のように4区分に分類されています。
説明 | |
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ティッシュペーパー | ドライクレープがかかった吸水性のある衛生紙(標準坪量13g/m2)で、2プライで連続取出しされるようになっている。 |
トイレットペーパー | 晒パルプあるいは上級古紙を原料として抄かれ、ロール状にしたもの(標準坪量20g/m2)。 |
タオル用紙 | トイレや台所で使用され、平判、ロール状のものがある。 |
その他衛生用紙 | 上記以外の衛生用紙。京花紙、ちり紙、テーブルナプキン、生理用紙、おむつなど。 |
ティッシュペーパーとトイレットペーパー以外について簡単に説明しておきます。
- タオル用紙…業務用の手ふき紙、家庭の台所用タオルとに大別される。柔軟で、吸水性がきわめて高いのが特徴である。
- 京花紙(きょうはながみ)…もともとはよく漂白した薄い楮(こうぞ)製の手漉き和紙で、婦人用懐中紙や上等な鼻紙として用いられたが、今は化学パルプを原料とする機械すきの薄葉紙が主流である。
- ちり紙(塵紙)…品種分類用語では、上級古紙を原料として抄かれ、平判で主としてトイレ用に使われる(標準坪量23~24g/m2)、と説明されている。近年は洋式トイレの普及に伴い、減少傾向にある。もともとは楮の外皮の屑で製し、表面に塵滓(かす)がある手漉き和紙のことで、屑紙(故紙、今の古紙)で作られたものもあり、鼻紙や落し紙として用いられた。
注
手漉き和紙において「ちり」という場合、ごみや汚物などの意味ではなく、コウゾなどの樹皮の黒皮や繊維の太い結束などをさす。例えば、製紙工程でちり取り(除塵))作業とよばれるものは、黒皮や結束を取り除く作業をさす。したがって本来のちり紙は、上等な白い紙をすくために取り除いたコウゾ皮の甘皮部分や表皮、黒皮などですいたものをいい、十分に砕けきれずに残ったコウゾ皮のかすや黒皮が紙面に現れている。また毎日の紙すき作業の終りの紙料液には、すく際に除いたちりが多量に含まれており、この残液ですいた紙もちり紙となる。こうした自然なちり紙は、昔ならば日常生活用の鼻紙、袋紙、落し紙、下ばり紙などに使われたが、大変に強靭で、混入した黒皮などの変化がおもしろく、素朴な雅味もあって愛好者に珍重され、茶室などの壁紙や襖(ふすま)紙、本の表紙などの装丁用紙、書画用紙などにも使われた。現存のものとしては、小川和紙(埼玉県)の黒四つ塵、黒谷紙(京都府)のねなし紙などがある。通常の紙料に黒皮を混入して、作為的にすくちり紙(ちり入り紙)もあり、民芸味にあふれた装飾紙、出版用紙、畳(たとう)紙、さらにカード用紙として海外にも盛んに輸出されている。装飾的な意図がさらに進められ、蕎麦がらなどの植物や華やかな金銀砂子などを混入することも行われている。
- テーブルナプキン…食事時に胸や膝にかけたり口を拭ったりする紙製のもの。布巾もある。
- 生理用紙…脱脂綿の代替品、パット、テックスに加工されるもの。生理用ナプキン、タンポンなどに使用される紙である。衛生的で吸水性が高く、逆に防水性や水に溶けやすいことも要求される。最終製品はこの紙を何層にも重ね、パルプや高分子吸収剤などを混合して製造される。