衛生用紙の位置づけと品種別の盛衰
次に衛生用紙の生産量推移を次表2に示します。下段の( )値は紙全体(板紙除く)に占める衛生用紙の構成比です。
1970年 | 75年 | 80年 | 85年 | 90年 | 95年 | 2000年 | 05年 | 06年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
衛生用紙 |
498 (7.0%) |
621 (8.1%) |
899 (8.5%) |
1,089 (9.2%) |
1,366 (8.3%) |
1,558 (8.9%) |
1,735 (9.1%) |
1,764 (9.3%) |
1,793 (9.4%) |
紙合計 | 7,135 | 7,711 | 10,536 | 11,790 | 16,429 | 17,466 | 19,037 | 18,901 | 19,062 |
衛生用紙の比率は全般に年々、漸増傾向にあり、昨(06)年の紙全体(板紙除く)に占める比率は約1割弱 (9.4%)になっています。衛生用紙はほとんどが生活必需品となっており、需要が急激に落ち込むことが少ない反面、「ちり紙」のように生活様式の変化などによって需要が減ることがあります。また、需要増に伴なって設備投資による供給面での過剰感が出ることもあり、日常品としてスーパーマーケットなどで客寄せの「特売商品」とか「サービス商品」、「格安品」「乱売品」として扱われることがあります。
伸びるトイレットペーパーとタオル用紙、ティッシュペーパーはピークを過ぎ飽和状態へ
それでは衛生用紙の品種別生産量の推移を表3に、また表4にちり紙の生産量推移を示しますが、品種によって浮き沈みが見られます。
品種 | 1970年 | 80年 | 90年 | 2000年 | 05年 | 06年 |
---|---|---|---|---|---|---|
ティッシュペーパー |
47 (9.4%) |
246 (27.4%) |
463 (33.9%) |
566 (32.6%) |
545 (30.9%) |
520 (29.0%) |
トイレットペーパー |
99 (19.8%) |
360 (40.0%) |
672 (49.2%) |
936 (53.9%) |
986 (55.9%) |
1,022 (57.0%) |
タオル用紙 |
7 (1.3%) |
12 (1.3%) |
60 (4.4%) |
115 (6.6%) |
140 (7.9%) |
153 (8.5%) |
その他衛生用紙 (京花紙、ちり紙など) |
345 (69.3%) |
281 (31.2%) |
171 (12.5%) |
118 (6.8%) |
92 (5.2%) |
97 (5.4%) |
衛生用紙合計 | 498 | 899 | 1,366 | 1,735 | 1,764 | 1,793 |
品種別の動向は1970年基準で比較すれば、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、タオル用紙とも2006年の生産量は大幅に増加しています。すなわち、対70年で06年はティッシュペーパーは11倍、トイレットペーパー10倍、タオル用紙22倍と大きく伸びています。この中でもトイレットペーパーは、衛生用紙全体に占める構成比も70年当時の約20%から6割近くの57%と大きく躍進しています。また、タオル用紙もパイが小さいながらも量、構成比とも着実に大きくなっています。反面、ティッシュペーパーは97年の584千t(表には不記載)をピークに数量、構成比とも低下傾向にあります。それでも構成比はおよそ3割と依然大きなウエイトを占めています。
ちり紙は大幅減少
次の表4に、ちり紙の生産量推移を示しますが、もう少し細かく区切って、ティッシュペーパー、トイレットペーパーと比較として掲げます。1970年の「ちり紙」は量、構成比とも衛生用紙(当時は家庭用薄葉紙)の中で最大の位置づけにあり、半分以上(50.8%)の割合を占めていました。それが次第に減少していき、2001年には2.0%と大幅に少なくなってしまいます。そのため前述のように、翌年の02(平成14)年には独立品種から削除され、「その他衛生用紙」へ併合されてしまいました。
なお、1960年までは「ちり紙」が家庭用薄葉紙(現在の衛生用紙)の3/4(75%)以上を占めていたとのことですが、生活様式の変化にともなって、上記のように減少していき、現在ではティッシュペーパー、トイレットペーパーがその位置を占めるようになっています。そう言えば、戦後のころはちり紙や京花紙ばかりで、テイッシュペーパーやトイレットペーパーという呼び名もありませんでした。衛生用紙も変わってきているわけです。
1970年 | 75年 | 80年 | 85年 | 90年 | 95年 | 2000年 | 01年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ちり紙 |
253 (50.8%) |
236 | 193 |
141 (12.9%) |
92 | 59 |
39 (2.2%) |
35 (2.0%) |
ティッシュペーパー |
47 (9.4%) |
115 | 246 |
318 (29.2) |
463 | 528 |
566 (32.6%) |
545 (31.9%) |
トイレットペーパー |
99 (19.8%) |
186 | 360 |
517 (47.5%) |
672 | 814 |
936 (53.9%) |
939 (54.9%) |
衛生用紙合計 | 498 |
621 |
899 |
1,089 |
1,366 |
1,558 |
1,735 |
1,710 |
ティッシュペーパーとトイレットペーパーの語義・定義、対応英語など比較
これからティッシュペーパーとトイレットペーパーについて説明していきますが、最初にそれぞれの語義・定義、対応英語などを対比してまとめ、表5に示しておきます。
ティッシュペーパー | トイレットペーパー | |
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一般的な意味 | 主に鼻をかんだり、化粧などの用途に使われたりする紙。 | トイレット(便所)で使用する紙。 |
広辞苑 (岩波書店) |
薄く柔らかい紙。本の挿絵の上に差し挟んだり、美術品などの包装に使ったり、また化粧紙・塵紙などに用いる。ティッシュ。 | ちり紙。おとし紙。特に、ロール状のもの。 |
(対応英語)tissue paper | (対応英語)toilet paper | |
日本工業規格 (JIS) |
(JIS用語番号6114) 1)木材パルプを原料としドライクレープ加工を行った薄葉衛生用紙。柔軟で湿紙強さがあり、ふきとり紙などとして用いる。 2)セルロース繊維から成る薄いクレープ紙を1枚又は数枚重ねて作ったもの。クレーピングは、通常、乾燥後に行われる。 |
(JIS用語番号6119) 1)さらし化学パルプ、高収率パルプ、古紙などで円網、長網ヤンキー式抄紙機で抄造し、ヤンキードライヤ上でクレープを施した紙。紙質は柔軟性、吸収性などが要求される。 2)トイレットで使用する紙。 |
(対応英語)facial tissue、soft tissue | (対応英語)toilet tissue paper | |
英和辞典 スピリッツ (小学館) |
tissue paper…薄葉紙(果物など傷みやすいものを包んだり本の挿絵などを保護するために使う透明に近い薄紙)。日本でティッシュペーパーと呼んでいるものは下記tissueの④に相当。 |
toilet paper…トイレットペーパーのこと
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(参考)tissue…①(生物体の)組織、②薄織物、③織り交ぜて作ったもの、④水を吸収する柔らかな薄紙(日本でティッシュまたはティッシュペーパーと呼んでいるもの)、⑤tissue paper(ティッシュペーパー)のこと、⑥カーボンコピー用紙 |
(参考)
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