コラム(72-4) 紙・板紙「書く・包む・拭く」(7)軽量化・段ボール箱について

軽量化が進む段ボール

板紙の国内の生産量・消費量は紙よりも2000年をピークに伸び悩みが続いています。これは板紙の主力製品である段ボール(段ボールシート)の軽量・薄型化や紙器用板紙の落ち込みが大きく影響していますが、このなかで段ボールについては、省包装の進展などによる段ボールの坪量低減(軽量化)が年々進んでいます。ただ、軽量化は40年以上も前から始まっています。製紙産業の発展に大きな影響を与えた技術:外装用ライナーの軽量化(製紙産業技術遺産保存資料、紙パルプ技術協会 飯田清昭氏まとめ、平成18年10月11日)によれば、外装用ライナ(A・B・C計)の平均坪量は、1962(昭和37)年が262.0g/m2だったものが、1965年は252.4g/m2、1970年には233.5g/m2、1975年が233.5g/m2となり、1980年は228.6g/m2、1985年が212.4g/m2と大きく下がり、1990年207.0g/m2、さらに1995年204.6g/m2と減少し、2000年202.3g/m2、2005年198.4g/m2と漸減し、40年あまりで約60g/m2、比率でおよそ25%ダウンの軽量化が進んでいます。

また、日本製紙連合会の資料(紙・パルプ産業の現状…2007年版)によれば、1990(平成2)年の段ボールシートの平均坪量は664.2g/m2でしたが、95年には657.7g/m2、2000年は648.8g/m2となり、さらに05年には638.9g/m2に、また06年は634.8g/m2に下がり、ライナなどの軽量化が続いている、としています。1990年基準で言えば、06年の坪量はおよそ30g/m2(29.4g/m2)も軽量化され、率では4.5%の低下となっています。例えば、紙・パルプ連合会発行の「紙・パルプハンドブック…1967年」には、外装用ライナの規格坪量を次のように定めるとして、200、240、280、320、360、400gが載っていますが、現在は160、170、180、200、210、220、280gです。このように薄物化が進んでいます。この分当然、消費量・生産量・出荷量などの減少に結びついていることになります。

この軽量化の景について、先の資料「外装用ライナーの軽量化」から引用すれば、昭和40(1965)年代以降、高速道路の発達、舗装道路率の上昇、保管条件の向上などにより流通環境が非常に良くなり段ボールに要求される強度は低下し、原紙のグレードの見直しが行なわれていきました。さらにオイルショックにより、最終需要家の包装費の節減や過剰包装の見直しのため、省包装が進みました。以上のような状況下で外装ライナの軽量化が進められていったのですが、その中でも特に飲料缶用の段ボールの見直しで軽量化が急速に進んだということです。飲料缶の場合、缶自体で積み置き強度を持たせ、中しん原紙を強度の強い原紙に置き換えることで外装ライナの軽量化が進められました。段ボールのケース買いという消費者ニーズを伴った飲料缶の普及により缶化率が上がり、160g/m2以下の軽量ライナの生産量は現在でも急速に伸びています。また、スナック菓子などの食品用の段ボールにおいても同様に軽量化が進んでいます。

さらに同資料は続きますが、軽量化はユーザーにとっては間違いなしにコスト削減となります。一方の生産者側ではコスト・操業性・品質において多様な問題が発生しますが、例えば製紙会社にとっては、軽量化により日産量が低下し固定費が上昇、他方では単位面積当たりの販売重量が減少し売り上げが減り収益の悪化となります。そこで段階的に新しい技術を導入し増速対策を行い現在に至っています。また、収益の悪化を補うために古紙の配合も進めています。古紙配合により紙力の低下やマシン系内の汚れによる操業性の悪化・製品欠点の増加などの問題が発生しますが、紙力増強剤の活用、除塵や精選技術の向上により品質・操業性を維持しています。このように製紙技術の発展に伴う新しい技術などを応用し、諸対策をとり軽量化が可能となっている、と説明されています。こうして外装用ライナの軽量化が進み、この45年間で平均坪量はおよそ25%減量しているにもかかわらず、市場開発と技術開発の努力で、その生産量は約10倍となっています(2005年生産量/1962年生産量=5,413千t/590千t=9.2)。

しかし、このような逆境は製紙産業を鍛え、強い技術開発力や国際競争力を生んできたプラス面もあります。今後も的確な諸対応への技術開発努力による現製品の改善と新製品の開発がこの産業を発展させるものと考えます。

 

段ボール箱について

段ボール(段ボールシート)は包装、保管容器としての段ボール箱の利用がもっとも一般的ですが、他に段ボールパレット、主に商品保護のため箱の中に使用される段ボール部品(緩衝固定材、敷紙、パッド、仕切り、胴枠等)、家具(ベッド、本棚、ハンガー棚、滑り台、机に椅子等)や震などの避難所で、衝立や小部屋に組み立てて使われる例もあります。

段ボールの主力製品である段ボール箱は全包装資材・容器の中でも重要な位置付けにあります。段ボール箱、紙器、プラスチック類、ガラス類、木製・布製などを含めた全包装資材・容器出荷金額 (2005年)は5兆8,798億円ですが、そのなかで紙・板紙の占める比率は41.7%であり、その内訳は段ボール箱が21.5%の1兆2,643億円、紙器他が20.2%の1兆1,884億円となっています。従って、紙・板紙のなかで占める段ボール箱の割合は約50%で、全包装資材・容器では約5分の1と、大きなウエイトを占めています(出典:社団法人 日本包装技術協会)。このように段ボール箱は、包装、保管、物流などには欠かせない資材となっています。

なお段ボールの用途別の消費(2006年)では、その半量以上(55.9%)は加工食品を中心とした食料品包装用が占めています。加工食品を始めとして、他にも青果物、家電製品、薬品・化粧品、繊維製品、陶磁器・雑貨用品、通販・宅配関係、建材、家具など、あらゆる商品の包装に使用され、単に輸送・保管の目的のみでなく、販売促進の媒体としての役割も担っています。

ところで段ボール箱は、段ボールを加工して造られた箱ですが、その中に梱包される商品を、輸送、保管、展示、荷扱い時の振動、衝撃、積上げなどから保護するために、個々の商品の特性に合わせて設計されます。その後、所定の段ボールは所定の寸法に裁断された後に、印刷、型抜き(打ち抜き)、罫線入れ、溝切り、継ぎしろ角切り、接合などの加工工程を経て段ボール箱ができあがります(大成段ボール株式会社 ダンボールができるまで京葉段ボール工業/段ボールの製造工程参照)。なお、この製造工程は加工機により、また、箱の形式により加工内容も異なりますので、順番も違って箱が製造されます。

次に段ボール箱の種類ですが、包装用途や箱の形式、また特殊処理区分等により分かれています。簡単に説明しますが、まず包装用途区分では段ボール箱は次の3つに分類されています。

  • 外装用段ボール箱…主に輸送用に用いる段ボール箱。
  • 内装用段ボール箱…個装をまとめ、それを保護するために用いる段ボール箱。
  • 個装用段ボール箱…使用者の手もとに渡る最小単位の物品を包装するために用いる段ボール箱。

 

また、段ボール箱の形式には、A形(A式)、B形(B式)、C形(C式)などがあります。なお、現行JIS(JIS Z 1507…段ボール箱の形式)にはコード番号で箱の形式が規定されており、A形は現行JISのコード番号02(溝切り形)に、B形は05(差し込み形)および06(ブリス形)に、C形は03(テレスコープ形)に属しています。ただ現行のコード番号方式は、実務ではあまり使用されていないようですので、旧規格のA形、B形とかで示します。(段ボールの形式-種別説明 樽谷包装産業株式会社参照)。

  • A形…通称「みかん箱」。いわゆる、みかん箱・引越し用の箱タイプのもので、よく見かけ一般的に最も広く普及している形状です。箱の上下()に開閉可能な蓋がついており、ガムテープなどで止めて使用します。引越しにもよく使われ、最もコストパフォーマンスに優れた形状です。
  • B形…文書保管タイプの差し込み式の箱で蓋・底の差し込みや、箱の上部は差し込み式で底はガムテープなどで止めるタイプと、テープ類を使用しないワンタッチ式などがあります。パソコンのソフトの箱などによく使われています。
  • C形…蓋分離(上下セパレート)タイプの箱で、菓子箱や贈答用の箱、洋服箱などによく使われています。
  • ヤッコ形(タトウ式)…底面が固定されていて、各辺を立ち上げ包み込むように梱包します。箱を展開した形が「奴(やっこ)さん」に似ていることからこう呼ばれます。風呂敷の段ボールバージョンといえます。平たくて薄いもので中身を固定したいときに用いられ、書籍やカタログポスター、CDなどの配送・メール便のパッケージなどに使用されます。

 

そして特殊処理をした段ボール箱の種類には、防水段ボール箱と強度を高める目的で、種々の加工を行なった強化段ボールを用いて作った強化段ボール箱があります。なお、防水段ボール箱は水による強度劣化に抵抗性をもつ段ボール箱の総称で、はっ水段ボール箱、耐水段ボール箱、しゃ水(遮水)段ボール箱の種類があります。

  • はっ水段ボール箱…短時間水がかかっても、水をはじいて水滴とし、水の浸透を防ぐように表面加工した段ボールを用いて作った箱、またははっ水加工を施した段ボール箱
  • 耐水段ボール箱…長時間浸水しても、ほとんど水を通さないように加工した段ボールを用いて作った箱、または耐水加工を施した段ボール箱。
  • しゃ水(遮水)段ボール箱…長時間水と接触しても、ほとんど水を通さないように加工した段ボールを用いて作った箱、または遮水加工を施した段ボール箱。

 

日本で段ボール箱が普及し始めたのは1950年代ですが、当時、政府が木材資源保護のために、木箱から段ボール箱への切り替え運動を積極的に進めたため、段ボールの需要は急速に拡大していきました。ここらあたりは次回にまとめます。

(2007年12月1日)

以下、続きます。

 

参考・引用文献

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)