参考
高級白板紙に属する塗工アイボリーや塗工カードは、塗工され印刷効果のよい板紙ですが、もともと紙の分野である塗工紙の厚物から派生したもので、塗工紙と共通の部分があります。すなわち高級白板紙は塗工紙を原点にした類似品種であり、塗工紙をより厚くしたもので厚くするために多層抄き品なわけです。その名残りとして高級白板紙には紙(洋紙)の規格寸法である四六判や菊判が使われることがあります。従って、塗工紙の厚物と高級白板紙の薄物では用途面などでオーバーラップし競合することがあります。塗工紙の世界には歴史が古く最高品質のアート紙と、厚手のアート紙に相当するアートポストがありますが、高級白板紙と共通な面があり競合する塗工紙品種とはこのアート紙とアートポストです。それでは表2にこれらの比較を示しておきます。
品種 | 高級白板紙 | アートポスト | アート紙 |
---|---|---|---|
品種区分 | 板紙ベース | 洋紙ベース | 洋紙ベース |
紙器用板紙(白板紙・マニラボール・高級白板紙) | その他塗工印刷用紙 | 塗工印刷用紙 | |
代表坪量 | 160、190、210、230、260、310、360、420、465(一般範囲190~465) | 186.1、209.4、232.6、255.9、279.0(一般範囲186.1~279.0) | 79.1、84.9、104.7、127.9、157(一般範囲84.9~157) |
規格寸法例 |
四六判(79×109) 菊判(64×94)、ないしK判(64×94) |
四六判(788×1,091) 菊判(636×939) |
四六判(788×1,091) 菊判(636×939) |
抄き層数 | 多層抄き | 単層(1層抄)ないし多層抄き | 単層(1層抄) |
塗工方式 | オンマシン方式 | オフマシン方式、ないしオンマシン方式 | オフマシン方式 |
艶出し法 | ソフトカレンダー | スーパーカレンダーないしソフトカレンダー | スーパーカレンダー |
主な要求品質 | 印刷適性、製函適性・折り適性 | 印刷適性、ときに折り適性 | 印刷適性 |
主な用途 | 出版物の表紙、カタログ、絵はがき、メニュー、値札や化粧品、薬品などの高級パッケージなど | 絵はがきや雑誌表紙、美術書、写真集、カタログ、カレンダー、アルバム、トランプ、カードなどの印刷用途主体 | 写真集やカタログなど多写真の高級印刷物など |
表2には代表な坪量や寸法などを示しています。商習慣で紙・板紙の取引きに用いられる規格寸法は、紙には四六判や菊判などがあり、板紙にはL判やK判とかS判などがあり、その単位には紙がミリメートル(mm)、板紙にはセンチメートル(cm)がそれぞれ使われます。表2のように塗工アイボリーや塗工カードなどの高級白板紙の寸法に、紙の規格寸法である四六判、菊判の名称が適用されます。(注記)板紙寸法(単位cm)はK判が64×94、L判は80×110、またS判は73×82で、それぞれの名称はK判が洋紙の菊判から取った寸法で、その頭文字から、L判のLはLarge(大きい)の頭文字、またS判のSはSmall(小さい)の頭文字に由来しています。四六判(79×109) 菊判(64×94)、ないしK判(64×94)四六判(788×1,091)菊判(636×939)
他の項目の説明は割愛しますが、厚紙であり特に高板と類似しているアートポストについて触れておきます。アートポストの一般的な坪量は186.1~279.0g/m2であり、いわゆる、アート紙(A1)の厚物という位置付けにあります。以前(1966(昭和41)年ころ)の板紙の品種分類には中分類に相当す紙器用板紙がなく、白板紙が中分類として分類されていました。そのときは白板紙は今のようにマニラボールと白ボールに区分されておりましたが、その構成品種が現在と異なっていました。すなわち、マニラボールはアイボリー、ポストカード、両面カードと、A、B、Cマニラボールに分類されており、白ボールはA、B、C白ボールと牛乳栓用紙、乗車券用紙に分かれていました。このときは紙(洋紙)の品種分類にはまだアートポストがありませんでした。この後にアートポストが登場しますが、紙パルプ事典(1989年年改訂第5版)によればアートポストは、「塗工白板紙をスーパーカレンダー処理して光沢を高めた抄き合わせ白板紙でアート紙の表面性を持っている」と説明されています。このようにアートポストは板紙の白板紙から派生し、紙(洋紙)のアート紙が属する塗工紙の一品種として誕生したわけです。なお、アートポスト(art post)の名は、アート紙(art paper)のアートと白板紙の一品種であり、主用途が絵はがきであったポストカード(postcard)のポストが由来とされ、これらを採って付けられました。
アートポストはアート紙の延長ということで長綱抄紙機による単層(1層抄)で抄かれ、コーターで塗工され、艶出しはスーパーカレンダーによるオフマシン仕上げされていましたが、今では板紙抄紙機による多層抄きで、ソフトカレンダーなどによるオンマシン仕上で多く製造されています。このためアートポストは板紙分野なのか、紙分野なのか混乱することもありますが、「紙」分野の塗工印刷用紙「その他塗工印刷用紙」の中の「その他塗工紙」に分類されています。そのためアート紙と同じ寸法表示、連量仕立て枚数とその表示などは「紙」の基準に準じます。なお、品質的にはアート紙に近く、平滑性・光沢度が良く、厚いけどしなやかさがあるなど印刷用紙としての適性を備えているとともに、紙厚があるため、ある程度硬くて強度(紙力)が強く、折り割れなどの製函適性などの板紙としての用途適性をも備えています。しかし、製函主体に使用される板紙(高級白板紙など)に比し、割れが入る恐れがあるなどその適性は一般的に劣ります。そのためアートポストが折って使われる製函などの用途には事前の確認と必要ならば、その対応が要りことになります。