補遺
もうひとつの板紙包装紙「ワンプ」と、その語源
紙器用板紙には分類されていませんが、もうひとつ紙・板紙の包装に用いられる板紙包装紙があります。「ワンプ」です。建材原紙(防水原紙、石こうボード原紙)、紙管原紙などと同じ「その他板紙(雑板紙)」に分類されています。ワンプは製紙業界や印刷業界で、お馴染みですが、外傷や湿気、日焼けなどから紙を守るために使われ、多くは紙表面に防湿処理がしてある包装紙の総称で、製紙工場などで平判や巻取の紙製品の包装に用いられます。
なおワンプは、板紙の品種分類表(日本製紙連合会編)の中で「古紙を原料として抄合され、紙・板紙の包装用に用いられるもので、製品形態は平判および巻取である」と説明されています。次に最近のわが国におけるワンプの生産量推移を表8に示します。板紙の中の比率も量的に0.2%と小さく、生産量は減少傾向にあります。
1995年 | 2000年 | 05年 | 06年 | |
---|---|---|---|---|
ワンプ |
41 (0.3%) |
32 (0.3%) |
27 (0.2%) |
27 (0.2%) |
なお、洋紙の品種分類の一つに、包装用紙(英語でwrapping paper)があります。この中にもその他未晒包装紙の一品種として「ワンプ」があります。いわゆる単層抄きの包装紙です。この生産量の手持ち資料はありませんが、ワンプを含むその他未晒包装紙の06年の生産量は40千tで、紙(洋紙)全体の中の比率も0.2%と小さく減少傾向にあります。いずれにしても紙・板紙の全体からみればワンプは僅少といえます。
ところで「ワンプ」の語源をご存知ですか。語源として明確ではありませんが、次のような説が有力です。「ワンプ」の英語名は「mill wrapper」(JIS P 0001)です。 「wrap」(ラップ)は包むの意で、「wrapper(ラッパー)は包むもの(包装紙など)のことですが、包むことを意味する「wrapping」(ラッピング)とか、一方通行という意を持つワンウェイ(oneway)との合成語である「oneway wrapper」(ワンウェイ ラッパー)がなまったものではないかという説があります。ちなみにワンウェイ・ラッパーは製紙メーカーの工場から出荷される一方向型の包装紙ということになります。
この「wrapper」や「oneway wrapper」「wrapping」などの発音からくる訛り説と、もうひとつは包装紙が海外から日本に渡ってきたとき、「wrap」を間違って、読み、記録してワンプと言う造語が日本に広まり定着したという説です(丸和印刷のホームページ丸和丸_印刷の基礎知識から引用)。このように謂れかはっきりしないところがありますが、「ワンプ」の語源は英語の「wrap」とか「wrapper」などに由来していると言えます。
(2008年2月1日)
以下、続きます。
参考・引用文献
- 日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」
- JISハンドブック「紙・パルプ」紙・板紙及びパルプ用語(日本規格協会発行)
- 世界大百科事典(第2版 CD-ROM版)…日立デジタル平凡社発行
- 「広辞苑(第五版)…CD-ROM版」(発行所:株式会社岩波書店)
- 紙パルプ技術協会:紙パルプの種類とその試験方法(昭和41年)1966
- 日本製紙連合会「紙・パルプ産業の現状…2007年版」
- 成田潔英編「最新紙業提要」(新版)…昭和33(1958)年12月、丸善株式会社発行
- 紙パルプ事典(紙パルプ技術協会編/金原出版 1989年年改訂第5版、2000年第4刷)
- 紙・パルプ連合会「紙・パルプハンドブック…1967年」(1967年10月20日発行)
- ホームページ白板紙-Wikipedia、高級白板紙-Wikipedia、特殊白板紙-Wikipedia
- ホームページ段ボール・紙器について
- ホームページ丸和丸_印刷の基礎知識