6.その他情報用紙
情報関連用紙としては、上記以外にOCR用紙、OMR用紙、ΜICR用紙、磁気記録紙原紙、統計機カード用紙、さん孔テープ用紙など主としてコンピューターのインプットに使用されるものがあります。これらの紙はそれぞれの用途、機器に合わせた紙ですが、いずれも紙を単にそのまま使うのではなく、加工して使用されるところに特徴があります。技術の進展に伴い、統計機カード用紙、さん孔テープ用紙は減少しつつありますが、OCR用紙、磁気記録紙などの需要は増加しています。
(1)OCR用紙(光学的文字読み取り用紙)
文字、数字を光学的に自動的に読み取るデータ処理方式に用いる紙で、読み誤りを生じないように、塵、汚れのないことが特に必要で、ほかに平滑性、こし、耐摩耗性、伸縮安定性、帯電防止性などが要求されます。
(2)OΜR用紙(光学的マーク読み取り用紙)
ΟCRが文字、数字を読み取るのに対し、OMRはある定められたマークを読み取り、調査、テストなどのマークシートの処理用などに使われます。要求される紙質はΟCR用紙と同じです。
(3)ΜICR用紙(磁気インキ文字読み取り用紙)
磁気インキで文字、数字を印刷される紙で、これを機械で読み取らせます。上記の用紙のように、光学的に読み取るものでないので、紙の汚れ、シミなどによる読み誤りがありませんが、磁気インキを使用するため、磁性に影響する鉄分などを含まないことが必要です。
(4)磁気記録紙原紙
航空搭乗券、高速道路通行券、磁気乗車券、定期券、競馬投票券などの磁気カード類を中心とする磁気記録紙用の基体(支持体)となる原紙です。基体には、用途により上質紙から塗工紙、薄葉紙、板紙まで幅広く使用されます。また、キャッシュカードやテレホンカードなどのようにプラスチックフィルム・シートなどを素材としたものも大幅に増えています。基体に求められる特性としては、厚さが均一であること、カールがないこと、鉄分など磁性に悪影響を及ぼすような物質を含まないことなどで、強磁性微粉末を、結着剤を用いて塗布して作られます。
(5)統計機カード用紙
コンピューター、統計機などの入力に用いるカード用紙のことで、情報用紙として古い歴史があります。記憶データの分割・修正が容易、安価であるなどの長所がありますが、パンチが人力によることや、面積当たりの記憶容量が小さいため読取速度が遅いなどの短所もあります。最近は、コンピューターへの情報入力方式も、ハードの大型化、高速化が進みOCRなどの光学読取り方式に移行してきており、本方式の需要減は顕著である。
(6)さん孔テープ用紙
さん孔により情報を記録する情報テープで、テレタイプ用とコンピューター用に大別できます。良質の晒パルプを原料に抄紙後に鉱油を含浸してさん孔適性を高め、表面に帯電防止加工を施し、テープの高速移動に伴う帯電障害を防止してあります。統計機カード用紙同様、本方式も減少し続けています。
情報用紙の生産量推移
表4に最近の情報用紙の生産量推移を掲げます[日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」、日本製紙連合会 統計資料から抜粋]。
2004年 | 05年 | 06年 | 07年 | 08年 | 前年比 | |
---|---|---|---|---|---|---|
複写原紙 |
266 (16.1%) |
243.7 (14.7%) |
243.8 (14.8%) |
224.8 (13.3%) |
217 (12.7%) |
96.6% |
感光紙用紙 |
12 (0.7%) |
9.8 (0.6%) |
7.8 (0.5%) |
4.8 (0.3%) |
4.1 (0.2%) |
85.0% |
フォーム用紙 |
347.7 (21.0%) |
358 (21.6%) |
345 (20.9%) |
324 (19.1%) |
322 (18.8%) |
99.3% |
PPC用紙 |
818.6 (49.6%) |
853 (51.4%) |
854.5 (51.8%) |
934.6 (55.2%) |
966.6 (56.5%) |
103.4% |
情報記録紙 |
141 (8.5%) |
136 (8.2%) |
139 (8.4%) |
151 (8.9%) |
153 (8.9%) |
101.3% |
その他情報用紙 |
66.5 (4.0%) |
56.9 (3.4%) |
53 (3.2%) |
54.7 (3.2%) |
48 (2.8%) |
88.0% |
情報用紙計 |
1,652 (8.8%) |
1,658 (8.8%) |
1,649 (8.6%) |
1,694 (8.8%) |
1,711 (9.1%) |
101.0% |
印刷用紙計 |
9,731 (51.8%) |
9,845 (52.1%) |
9,924 (52.1%) |
9,971 (52.0%) |
9,791 (52.0%) |
98.2% |
紙合計 |
18,788 (61.0%) |
18,901 (61.1%) |
19,066 (61.3%) |
19,192 (61.3%) |
18,826 (61.5%) |
98.1% |
紙・板紙総計 | 30,892 | 30,952 | 31,108 | 31,266 | 30,625 | 98.0% |
表4について説明します。2008年の紙(洋紙)合計に占める情報用紙の生産量比率は、およそ9%で印刷用紙の52%と比べると非常に小さい割合です。その生産量も印刷用紙のおよそ1,000万tに比べ、約170万tで少なく2割弱に相当します。ただ、08年は印刷用紙の前年比は98.2%と、また紙(洋紙)合計が98.1%と伸び悩んでいるのに対して情報用紙は合計で101.0%と伸びております。
情報用紙のなかではPPC用紙が主力です。その生産量は約100万tで情報用紙のおよそ半分以上の55%を占めており、表4のように年々増加傾向にあります。
参考までに過去の記録によれば「PPC用紙は年ごとに伸び、1995年の生産量は、前年比18.4%増、1996年は13.8%(対前年比)の伸びを示し、好調を維持している。これは主力のコピー機向け以外にファクスやコンピューターのプリンターなどの新たな分野での需要が増えているためで、情報用紙の中での比率も次第に拡大し、昨年(1996年)は約40%を占めるまでに至った。
また、情報の機械処理化に伴う需要増で好調に推移したフォーム用紙は、バブル景気崩壊による金融、証券の低迷などで1990年をピークに減少傾向にあったが、久しぶりに1995年は、前年比14%増とプラスに転じたが、1996年は再び、対前年比95%とマイナスに転じた。今後の動向を見る必要があるが、PPC用紙との合計比率は全体のおよそ6割を占め、情報用紙の主流を成している。逆に、感光紙用紙や情報記録紙は数量的に漸減傾向にあり、情報用紙の中に占める比率も複写原紙およびその他情報用紙とともに下がっている。ちなみに1996年の生産量伸び率(1988年比)は、情報用紙計…151.9%、複写原紙…117.0 %、感光紙用紙…68.2%、フォーム用紙…145.8%、PPC用紙…271.0 %、情報記録紙…79.6%、その他情報用紙…141.5 %」とあります。10年くらい前の資料ですけど数値が大きい違いはありますが、現在とほぼ同傾向にあります。すなわち、現状でもPPC用紙は成長品種ですが、これに対してPPC用紙に次いでウェイトが大きいフォーム用紙は減少する傾向にあります。また複写原紙や、生産量も少ない感光紙用紙、その他情報用紙も同様で減少傾向にあります。
今後とも同傾向が続くと思われますが、紙も淘汰されて新旧、世代の交代を繰り返してきました。成長が止まりPPC用紙がいつ頭打ちになるのか、注目すべきポイントと考えます。あるいは新しいΟA機器の開発・普及が進んで、さら新規の用紙が誕生するのか、これも大きな注目点と思われます。
(2009年7月1日)
参考・引用資料
- 日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」、日本製紙連合会 統計資料
- JISハンドブック「紙・パルプ」紙・板紙及びパルプ用語(日本規格協会発行)
- 「紙の文化事典」(総編集)尾鍋史彦(朝倉書店、2006年3月発行)
- 「紙パルプ2005 50年史と近未来」紙業タイムス社(2001年2月刊)
- 中嶋隆吉、“紙 一紙と印刷、品質クレームへの対応一(上・下巻 増補改訂版)"(1997年12月)、王子製紙株式会社発行
- ホームページ複写伝票・ノーカーボン紙 [米村印刷WEBサイト]
- ホームページ"日々是好日"とっつあんの雑記帳- 印字の話 印字のしくみ
- ホームページ-古紙標準品質規格-
- ホームページノーカーボン紙 - Wikipedia
- ホームページゼネラル株式会社:カーボンのミニ歴史 カーボン紙の歴史-ゼネラルサプライ株式会社
- ホームページ紙の選択・紙の知識
- ホームページ情報用紙/CCP(ノーカーボン紙)|日本製紙グループ