コラム(81-3) 「紙はなぜ」(1) 紙はなぜ折れるのでしょうか? 3

紙を折っていくと…

長くなりましたが、それでは紙を折ってみましょう。新聞紙でも、ティッシュペーパーでも、コピー用紙でも構いません。紙を1回折ると大きさは半分になりますが、厚さは2倍になります。2回折るとさらに2倍で合計4倍、3回折るとさらに2倍で合計8倍です。つまり、n回折ると、2のn乗倍の厚さになります。この作業を続けるとどうなるのでしょうか?

これを表2にして整理しますが、例えば折った新聞紙の厚さを0.1mmとして、折る回数とそのときの厚みを示します。

表2.紙を折る回数とその厚み(単位km)[新聞紙の厚さ0.1mm]
折る回数折られて重なった枚数1枚の紙の厚さが0.1mmのときの
積層厚み(km)
摘要
0 20 1 0.0000001 厚さが0.1mm
1 21 2 0.0000002 厚さが0.2mm、以下倍々
2 22 4 0.0000004  
3 23 8 0.0000008  
4 24 16 0.0000016  
5 25 32 0.0000032  
6 26 64 0.0000064  
7 27 128 0.0000128  
8 28 256 0.0000256  
9 29 512 0.0000512  
10 210 1,024 0.0001024  
11 211 2,048 0.0002048  
12 212 4,096 0.0004096  
13 213 8,192 0.0008192  
14 214 16,384 0.0016384  
15 215 32,768 0.0032768 ほぼ3m
16 216 65,536 0.0065536  
17 217 131,072 0.0131072  
18 218 262,144 0.0262144  
19 219 524,288 0.0524288  
20 220 1048,576 0.1048576  
21 221 2,097,152 0.2097152  
22 222 4,194,304 0.4194304  
23 223 8,288,608 0.8288608  
24 224 16,777,216 1.6777216  
25 225 33,554,432 3.3554432  
26 226 67,108,864 6.7108864  
27 227 134,217,728 13.4217728  
28 228 268,435,456 26.8435456  
29 229 536,870,912 53.6870912  
30 230 1,073,741,824 107.3741824 100km超え
31 231 2,147,483,648 214.7483648  
32 232 4,294,967,296 429.4967296 東京から大阪までの距離550km
33 233 8,589,934,592 858.9934592  
34 234 17,179,869,184 1,717.9869184  
35 235 34,359,738,368 3,435.9738368  
36 236 68,719,476,736 6,871.9476736  
37 237 137,438,953,472 13,743.8953472 球の平均直径12,756km
38 238 274,877,906,944 27,487.7906944  
39 239 549,755,813,888 54,975.5813888  
40 240 1,099,511,627,776 109,951.1627776  
41 241 2,199,023,255,552 219,902.3255552  
42 242 4,398,046,511,104 439,804.6511104 月までの平均距離385,000km

 

和算で鼠算(ねずみざん)というのがありますが、それは「正月に雌雄2匹の鼠が12匹の子を生み、2月には親子いずれも12匹の子を生み、毎月かくして12月に至れば、鼠の数は、2×712の算式により、276億8257万4402匹の大数になる」という問題ですが、物が複利的に急速に増加する場合のたとえとして用いられます。

 

鼠算というのは次のような話です。「正月に鼠の夫婦が子供を12匹産んだ。2月になると、その12匹が2匹ずつ、つがいになり、各々12匹の子供を産んだ。元の親もまた子供を産んでいる。この結果鼠の総数は、(12÷2+1)×12+12+2=98匹になる。この調子でいくとネズミは1年後には何匹になるか?」

要するに2匹いれば翌月12匹の子供が生まれて14匹になるということで1ヶ月すれば7倍になることになる。初期値が2の等比数だから、答えは 2×712=27,682,574,402匹ということになる。結果が膨大な数となるため、急激に数がふえることを「鼠算式にふえる」ということがあります。

 

ところで本題ですが、この鼠算で同じように最初は小さくても表2のようにn=42回とすると、2の42乗(242)は4,398,046,511,104という大きな数字になります。紙(例えば新聞紙)の厚さを0.1mmとしても、その2の42乗倍はおよそ44万kmとなるわけですから、42回折れば球と月の距離およそ38.5万kmを超えてしまうという計算になります。

しかし問題があります。そもそも42回も紙を折ると面積がどうなるかを考えますと、元の面積の2の42乗分の1になってしまいます。これは1mx1mの紙を使ったとしても、1辺が 0.4μm(0.0004mm)になってしまい現実的でないということです。とてもそんなに細かく折ることは不可能であるということです。「余の辞書に不可能の文字はない」と言ったとされる彼のナポレオンでもできません。

もう少し身近に言いますと、15回折り曲げると重なった枚数は2の15乗(=32,768)になりますので、その厚さはなんと3mになります。これでも大変なことです。これも計算上のことで、実際に折ることはできません。よしやって見ようと思われる方は、どなたか折ってみてください。やわらかいティッシュペーパーではどうでしょうか。何回折れましたでしょうか。

(2009年8月1日)

 

参考・引用文献・ウェブ

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)