コラム(94) 「紙はなぜ」(14) 紙はなぜ白いのでしょうか?

紙はなぜ白いのでしょうか?

今回のテーマは「紙はなぜ白いのものが多いのでしょうか」です。

 

紙の主原料である古紙や木材はその状態では白くありません。例えば、木の外側は茶色っぽく、内部は淡い肌色をしています。そう考えると、紙は何か混ぜて色を白くしているのでしょうか?

ただ純粋なセルロースは真っ白です。脱脂綿は純粋なセルロースですので白く見えます。植物繊維から不純物を取り除いて白くしてあるのです。すなわち紙の製造時に漂白しているから白いのです。漂白しないと木材のように茶色っぽくなります。下の写真は木材チップと未漂白パルプおよび漂白パルプを示していますが、木材チップと未漂白パルプ茶色ぽっく、漂白パルプは白くなっています。つまり紙は漂白パルプを原料にしているために白くなっているわけです。

木材チップおよびパルプ
チップ(木片)未晒パルプ(未漂白)晒パルプ(漂白)

 

それではなぜ白い紙が多いのでしょうか。それは「白」、「白さ」は純粋で神聖なものとして古来から好まれてきたこと、さらに文字や絵を書いたり印刷した場合に白い紙のほうが一番引き立つわけです。従って、白い紙が多いのです。

 

それでは白い紙を燃やしても黒っぽい灰か、白っぽい灰が残るのはなぜでしょうか。

紙の原料である古紙や木材などは、ほとんど主成分が黒い炭素でできていますが、それらからできている白い紙を燃やすと残った灰の色は黒っぽいか、白っぽい灰色です。これはなぜでしょうか。この理由は次のとおりです。

ひとつは酸性紙であること。酸性紙を燃やしたとき、紙中の硫酸分による炭化促進によって灰が黒っぽくります。また火が小さかったり、いきおいが弱かったときは、黒っぽい灰ができます。

逆に、中性紙の場合は白っぽい灰色になります。また炎が強くてよく燃えた後には、白っぽい灰が残ります。このような理由で、紙を燃やしたときに灰が黒っぽくなったり、白っぽくなったりするわけです。

 

色紙について

なお、白い紙以外に染料で着色(染色)した色紙(いろがみ)もあります。染料には直接染料や酸性染料、塩基性染料、蛍光染料などがあります。それぞれについて簡単に説明します。

 

直接染料

…一般に水に溶かして主に木綿・麻や羊毛、絹等の動植物繊維に媒染しないで直接的によく染着する.特にセルロース系繊維によく用いられ、中性または弱アルカリ性浴で、中性塩等を助剤にして染色する。色は鮮明さを欠く、堅ろう度はだいたい中であるが、洗たく堅ろう度が低く、後処理をする場合がある。化学構造からみれば一般にスルホン基を含む色素酸のナトリウム塩である。アゾ染料[ -N=N-という原子団(アゾ基)をもつ染料の総称。メチルオレンジ・クリソイジン・コンゴーレッドなど]などがある。
酸性染料…酸性染料は水に可溶で、主に絹、羊毛などの動物繊維やナイロンなどの染色に使用されている。硫酸、蟻酸、酢酸等の酸性浴で染められる。セルロース系繊維には染まらない。堅ろう度は低いものから高いものまであり、色調は鮮麗で、各種そろっている。いずれも分子内にスルホン基、カルボキシル基等の酸性基を含む色素酸のナトリウム塩である。

水に溶けてそのままの色で染まるが、酸性にして染めるのでacidという名前が付いた。媒染剤を用いずに硫酸酸性または酢酸酸性溶液中で染色する。

 

塩基性染料

…合成染料の一。アミノ基や置換アミノ基などの塩基性基をもつ合成染料。色素イオンがカチオンなのでカチオン染料ともいう。動物繊維やナイロンには中性または弱酸性のもとで直接に染着し、植物繊維には媒染剤を用いて染着する。色の鮮麗なものが多いが、耐久力に乏しい。耐久性のあるアクリル繊維用のものが開発されている。オーラミン・フクシン・メチレン‐ブルーの類。

 

蛍光染料

…色素が蛍光物質である染料を蛍光染料あるいは蛍光剤、蛍光増白剤、蛍光漂白剤と呼ぶ。紫外線を吸収してそれより波長の長い青紫色の光(蛍光)を発する性質を持っている無色の化合物である。

繊維が吸収する青い色をおぎなって紙・布等を純白に見せる。各繊維に適したものが多数開発されており、構造的にはセルロース繊維用(直接染料型)の大部分を占めるジアミノスチルベン系が最も多く、他にイミダゾール系、クマリン系、ナフタルイミド系などがある。

特に蛍光染料は、蛍光による増白効果を狙って白物衣料や衣料用洗剤に添加される。また、衣料以外では、製紙工程で紙の白さを向上するための蛍光増白剤として、紙の表面加工時に使用することがあるが、食品用に使う紙には使用されない。

黄ばんだ繊維等は、青紫色の光を吸収する色素のために黄色みに見えるので、その分の光を補うことで白く見せるのである、合成洗剤にも配合されている場合がある。

 

  • 染料…染料とは色を持つ物質(色素)のうち、繊維に対して染着力(染まり着く力)を有する有機化合物である。水や有機溶媒に溶かして、繊維製品や皮革・紙などを染色する物質。最近ではほとんどすべて合成される。水に溶ける性質を持つ色素が、一旦繊維に吸収されると、いくら洗っても落ちることなく繊維に吸着するという現象が染色である。
  • 顔料…色彩をもち、水その他の溶剤に溶けない微粉末。塗料・化粧料・着色料に用いる。チタン白・ベンガラ・クロムイエローなどの無機顔料とレーキ顔料などの有機顔料がある。
  • 媒染(ばいせん)…染料が直接に染着しない場合に、繊維を媒染剤の溶液にひたし、これをしみこませて染料と結合させる染色法。

 

付記

なお、白いことは私にとって、大いに役に立っています。例えば、薄う月明かりや太陽の薄明かりのなかで、白系の調度品が多い家の中で電気をつけなくても、歩行の道しるべになって「白」を目標にかって知った家の中を歩くことができます。そしてあらためて近くの電気をつけて白いティッシュペーパー取ったり、お茶を飲んだり、洗面などをします。このように白いことは生活のなかで役に立っています。

(2009年12月1日)

 

引用資料

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)