コラム(96) 「紙はなぜ」(16) 紙はなぜ、光を通し明るしすることできるのでしょうか?

紙はなぜ、光を通し明るしすることできるのでしょうか?

今回のテーマは「紙はなぜ、光を通し明るくすることができるのでしょうか」です。

 

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「壁に耳あり、障子に目あり」。これは密談などの洩れやすい例えとして用いられますが、障子紙の破れたところからこっそりと覗き見をしてるさまをいっています。破れていない障子紙は覗き見はできませんが、聞き耳はたてられます。しかも光を通すことができます。 それでは紙はなぜ光を通し明るくすることができるのでしょうか。美の壷 和紙(File78)[NHK総合テレビ(2007年2月1日放送)]によれば、「和紙が明かりに使われたのは、強さだけが理由ではありません。和紙を通した柔らかい光が、人々に好まれたのです。和紙は繊維の密度が低くすき間が多いという特徴があります。光は、このすき間を通るとき繊維に乱反射します。そのため、目に柔らかく感じられるのです」と説明されています(右写真は光が紙を通り、乱反射して出て行き明るく照らしている様子を示しています…同美の壷 和紙から引用)。

 

和紙の明かり。日本の伝統的な明かりは、和紙と切り離せません。火を和紙で囲うことによって、豊かな陰影を生み出してきました。日本古来の明かりのなかで、もっとも馴染み深いのが提灯。夜、外出する時の必需品として、江戸時代、庶民に広まりました。東海道の宿場町、小田原で作られてきた小田原提灯。有名ですね。和紙を通した柔らかい光が、人々に好まれたのです。

 

このように紙は、ガラスやレンズのように光を通し明るくすることができるわけです。障子紙は光の透過率が40%から50%といわれています。ちょうどガラスのような透明なものと、壁などの遮断物の中間にあり、日当りのあたたかい感じを残しつつ、直射日光を適度に遮り、そんな機能からUVカットにも役立っています。そして、障子に差し込んだ光は、各方向に散乱してどの方向から見ても均一に美しく明るく見え、室内全体を同じ明るさで、やさしくつつみこみます。

紙を通して、さし込む柔らかな光は、忙しさに追われてストレスがたまりがちな現代人の神経をやわらげる心理的な効果があります。手術後の病人の回復にもたいへん効果的で、最近は病院にも障子が多く使われるようになりました。

また、障子紙の長寿への5つの効果として、次のような指摘がなされています。日光のすべての光と色を室内に伝えるので体が健康になります。室温が外より高まると熱を外へ放出し、その逆の作用もします。そのため夏は涼しく冬は暖かくなります。湿度に関しても同様に調節します。空気を濾過します。外気が障子紙を通って室内に入るとき、タール色素や排ガスの微粒子であるニトロン化合物などの発ガン物質を吸着します。強い光をやわらげ、均斉度のある明るさを提供します。このように、障子紙は健康にとてもいい影響を及ぼしています。

また、障子には、直射日光をさえぎる機能があり、ガラスより約1/2日射熱を減少させることができます。夏の冷房時に日射による冷房効果が低減した場合、冷房効果を保持する効果があります。

障子は、日本家屋における扉、窓に用いる建具の一つで、明かりを通すように木枠に紙張りになっていて、明かり障子とも言います。元来は現在の襖も含めて障子(さえぎるものの意)と言ったが、平安時代に「明かり障子」として襖から分離しました(障子・畳・ふすま替えの【畳・襖・障子の張替え.com】から引用)。

 

以上ですが、まとめますと、紙、特に和紙は繊維の密度が低くて、すき間が多く、光は、このすき間を通って乱反射し出て行きまわりをやわらかく照らし、明るくします。そのために紙は光を通し明るくすることができるわけです。

(2009年12月1日)

 

参考・引用文献・ウェブ

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)