コラム(98) 「紙はなぜ」(18) 和紙と海苔はなぜよく似ているのでしょうか?

和紙と海苔はなぜよく似ているのでしょうか?

今回のテーマは「和紙と海苔はなぜよく似ているのでしょうか」です。ご覧ください。

 

「和紙」と「海苔」の類似点について

乾海苔の製造は、浅草紙の紙漉き法から考えだされたという説があるように、「和紙」と「海苔」は類似点が多くあります。それは、

(1)最適な生産時期

(2)製造法

(3)数える単位

(4)水分(湿気)に敏感

(5)包むものなどですが、それぞれについて説明します。

 

(1)最適な生産時期

一年のうち「和紙」および「海苔」を漉く時期、すなわち生産する時季はほぼ同じで、冬から春が最適とされています。古来より「紙(和紙)は寒漉き」といわれているようですが、これは冬の寒いときに漉くと良い紙ができることから言われだした言葉です。

和紙を手漉き(流し漉き)するときに、紙料液中の繊維を均等に分散させ、美しく強い紙を造るのに、トロロアオイやノリウツギなど植物性の「ネリ」(粘剤)を入れます。この「ネリ」は長い鎖状分子からできており、温度が高いとこの分子の鎖が切れて短くなり、次第に紙料液の粘度が下がり、その結果、「ネリ」の効果が損なわれてしまいます。

例えば真夏のような暑いときに、和紙を漉けば漉き槽のなかの液温が高くなって、「ネリ」の粘度が早く低下し、繊維の分散が次第に悪化していきます。そのためときどき「ネリ」を補給し攪拌しなければなりません。このため作業能率が下がるうえ、一定の条件で作業が出来ず、紙にばらつきが生じやすくなります。これが冬場だと温度が低いので一晩放置して、翌朝になっても槽内の紙料液は粘度が保持されており、紙漉きができる状態です。このため作業条件が一定して、しかも能率が良く、ばらつきも少なく良い紙が得られることになります。

もうひとつは腐敗の問題です。温度が上がると、ものが腐りやすくなりますが、紙漉きに欠かせない多糖類成分の「ネリ」も菌が繁殖しやすく腐敗しやすくなります。そのため材料を作ったら、何日も放置しないで一日も早く、漉き上げなくてはなりません。この制約のため仕事がしにくくなります。反面、温度の低い冬場は腐敗しにくいため、制約もなく計画的に紙漉きができ、安定して良質の紙の品質も得られるようになります。

 

また、海苔は「寒ノリ」といわれるくらいに、寒い冬の冷たい海水で育ったノリから作られたものは風味豊かで香りもよく、良質な海苔といわれています。海苔は、ふつう秋に現れ、冬から初春にかけて生長し、初夏を迎える頃には消えてしまいます。養殖技術が進歩した現在のノリ養殖は10月から始まり、11月の上旬にはその年の最初のノリ(初ノリ)が収穫されます。美味しいノリはさらに温度が下がる12月から1月ということのようです。美味しさとか香りとかという海苔本来の内容を備えたノリということになると、寒さで引き締まった条件で育ったノリということになり、冷たい北風にさらされることは美味しいノリ作りの一つの条件と言われています。このため一般に、海苔が採れるのは晩秋から春にかけての冬場と理解されているわけです。

このため「紙漉き」(かみすき)や、寒漉(かんすき)、紙干場(かみほしば)、紙漉女(かみすきめ)、楮晒す(こうぞさらす)、楮蒸す(こうぞむす)、三椏蒸す(みつまたむす)などは冬の季語になっています。 一方の「海苔」は、一般に春の季語で海苔簀(のりす)、海苔干す(のりほす)も初春、「寒海苔」「新海苔」や「初海苔(はつのり)」などは晩冬[立春(2月4日ごろ)から啓蟄の前日(3月5日ごろ)まで]の季語として使われています。

 

(2)製造法

次に製造法ですが、機械すきが主体になった今日、和紙も海苔も昔ながらの手漉きが今も残っています。以下は「紙への道」コラム(63) 漉く…類似の和紙と海苔をクリックしてご覧ください。

海苔のことを、欧米ではは「ブラックペーパー」とか「カーボンペーパー」といわれているとか、やはり海苔は紙(ペーパー)に関係あります。

(2010年1月1日)

 

参考・引用資料

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)