紙はなぜ環境にやさしいのでしょうか?
今回のテーマは「紙はなぜ環境にやさしいのでしょうか」です。紙は本当に地球環境にやなしいのでしょうか。このことについてまとめてみました。なお、参考・引用資料は下記に掲げてあります。
地球環境とは
まずはじめに地球環境問題とは、環境問題の一種で、問題の発生源や被害が特に広域的な(地球規模の)ものを指します。環境問題の一部は、ごみ問題、局地的な公害のように、国やその一部地域内で発生し、比較的完結したものに留まります。これに対し、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨のように、発生源や被害地が必ずしも一定地域に限定できないものがあります。このような問題が主に地球環境問題に該当します。環境問題の根本的な考え方として、環境に負担をかける要因のことを表す環境負荷という言葉があります。人類が何らかの活動を行った場合、必ずといっていいほど自然に何らかの負担(環境負荷)を与えます。 しかし、自然には自浄作用や修復作用といった作用があり、小規模な負担であれば自然に解消することができ、環境問題として影響が出てくることはありません。しかし、自然が持つ作用の「閾値」を超えた負担がかかると、解消しきれなかった負担が環境問題となって周囲に影響を及ぼし始めます。
例えば、自然への影響を考えない土地の開発、植林を考慮しない大規模な森林の伐採なども環境問題のひとつです。
紙パルプ産業にかかわる環境問題とは
紙パルプ産業にかかわるものとして、主原料として古紙と木材がありますが、木材のもとである森林について触れます。
森林は光合成による再生可能な循環型資源であり、紙の原料である木材繊維を供給します。パルプの製造工程で、木材からリグニンやヘミセルロースが黒液(黒い植物性廃液)として分離されバイオマス燃料として利用されています。木材を紙の原料だけでなく、バイオマス燃料としても最大限に有効活用していることが、製紙会社の特長です。
製紙会社は優れた資源である森林の利用にあたり、環境的、社会的、経済的に適切な管理をした、持続可能な森林経営により育成される森林だけを資源とする木材原料を調達することに努めているとのことです。ある製紙会社はこれを「森のリサイクル」と呼んでいます。持続可能な森林経営による資源を利用することは、地球温暖化対策にも貢献します。
しかも間伐(かんばつ)材をパルプ・製紙原料として多く使用しているということです。間伐材とは、成長に伴って混みすぎた林の立ち木を、一部抜き伐りすることです。日本では、国産材の利用が進まないために、間伐が行われず荒廃した森林が増えています。製紙会社はこの投げっ放しになっており、しかも森林が少しでも荒廃しなくて、太陽の日差しを受け森林がすくすくと育つように間伐材を紙・パルプの資源として有効に活用されているわけです。また、製材などで発生する端材(はざい)もパルプ・紙原料として多く使用されています。
注
- リグニン、ヘミセルロース…木材の主な化学成分はセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンである。木材の約半分を占めるセルロースは主に繊維という形を作っていて、紙に利用される。残りのヘミセルロースとリグニンは繊維と繊維を接着したり隙間を充填したりしている。
- 黒液(黒い植物性廃液)…木材チップを煮てパルプを取り出す際に副生する廃液のこと。木材成分を多く含み、再生可能な石油代替エネルギーとして工場の主要なエネルギー源となっている。木材チップからパルプを生産する工程(クラフトパルプ化法)で、木材チップの中の木材繊維をパルプとして取り出した後の、黒い植物性廃液のこと。リグニンやヘミセルロースなどが主成分であり、蒸解薬品を含む。
- バイオマス燃料…再生可能な生物由来(木材など)の有機エネルギーのことで、石炭・石油などの化石資源を除いたもの。
そしてもうひとつの古紙(こし)ですが、古紙とは一度使われた紙のことで、主にリサイクルされるための新聞紙、雑誌、板紙(いわゆる段ボール等)などをいいます。古紙はリサイクルの優等生ともいわれ、古くから回収、再生利用する業態が成立しています。なお、国内の紙・板紙原料の6割以上が古紙であることからも、古紙利用は欠かせないものとなっています。現在では主要で重要な製紙原料になっています。
また紙をリサイクルすることで、紙ごみが資源に甦り、森林資源が節約されます。かつわが国の紙・パルプ産業は、貴重な国内資源の活用や循環型社会のモデルにもなっているといわれています。
紙づくりは、太陽の恵みで成長する森林の資源に支えられています。森林資源を使うときに大切なことは、「使う量」が「育つ量」を超えないこと。「紙のリサイクル」で「使う量」が減り、植林など森のリサイクルで「育つ量」が増えます。
植林も盛んに行われています。
「持続可能な森林経営」による森林資源から生産される木材パルプも、古紙と同様に環境にやさしい紙の原料となります。植林(しょくりん、英:Afforestation)とは、木材生産や森林保全を目的として、木を植えることである。森林保全の中には、地盤の安定化、水資源の確保、生態系の保全、防風、防砂といったさまざまな目的が含まれる。
「紙を使うことで森が育つ」というと矛盾しているようですが、紙の原材料である木材の使用が増えれば、森林の整備に必要な経費が確保されて「植える→育てる→収穫する」というサイクルがスムーズに循環し、健全な森林が育ちます。しかし、現在日本の多くの森林は、安価な国外の木材におされて、充分な循環が難しい状態にあるといわれています。
古紙は本当に環境にやさしいのでしょうか
それでは古紙は本当に環境にやさしいのでしょうか。
下図(日本製紙作成)をご覧ください。
古紙100%配合紙はまったく配合していない紙に比べ、製造工程で化石燃料由来のCO2排出量が増加するケースがあり、再生紙が地球温暖化に与える影響が大きくなっています。
従って、古紙配合を一律何%と制限せずに、用途に応じて最適な配合率を決めて、古紙パルプを利用することが、これから紙に求められる環境対応であると考えられています。
現在では、古紙は必ずしも100%配合しなくても、紙によって適量を配合すればよいという考え方に変ってきています。
(2010年03月01日)
参考・引用資料
- ホームページ環境問題 - Wikipedia
- ホームページ地球環境問題 - Wikipedia
- ホームページ古紙 - Wikipedia
- ホームページ地球温暖化 - Wikipedia
- ホームページ植林活動 - Wikipedia
- ホームページ王子製紙株式会社|環境への取り組み > 森のリサイクルの考え方
- ホームページ王子製紙株式会社|環境への取り組み > 紙のリサイクルの考え方
- ホームページ王子製紙株式会社|環境への取り組み > 古紙と環境
- ホームページ王子製紙株式会社|環境への取り組み > ビジネスモデルの考え方
- ホームページ古紙100%配合製品を廃止 | 日本製紙グループ