コラム(114) 「紙はなぜ」(34) 紙はなぜ指先などが切れるのでしょうか?

紙はなぜ指先などが切れるのでしょうか?

今回のテーマは「紙はなぜ指先などが切れるのでしょうか」です。

 

紙は比較的、安全ですが、特にある程度の硬さを持った薄い安全かみそりのような紙で、うっかり手を切ることがあります。なぜでしょうか。それでは例を挙げて説明します。

 

紙で手を切った。PL上欠陥として訴えられるのか。

(答)日本製紙連合会の「PL対策ワーキンググループ」の検討結果では、紙で手を切ることは既知のことであり、その旨を紙に表示していないからといって、表示義務を怠ったことにはならない。したがって、欠陥とは見做されず、PL責任を問われるとは考えにくいとの見解です。

なお、紙で手を切る頻度は多くなく、その怪我の程度は軽いこと、手を切らないように紙の断面を工夫・改善することは現在の技術では相当難しいことから、PL法上の定義でいう、欠陥とは製造物が「通常有すべき安全性を欠いている」には、本件は該当しないのではないかということです。最終的には、裁判官の判断によりますが、上記理由によりPL上の欠陥に該当しないのではないでしょうか。

 

PL法(product liability)…製造物責任法のことで、商品の欠陥により消費者の人身・財産に被害が生じた場合、製造者にその損害賠償責任を負わせることを定めた法律。1994年制定。(コラム(90) 「紙はなぜ」シリーズ(10)紙は、なぜ安全なのでしょうか?参照)。

 

では、なぜ紙で手を切ることは既知のことでなのでしょうか。

 

具体例を挙げます。製紙工場には目視によって欠陥のある紙を除去する選別工程があります。ここでは数人の女性が紙をめくりながら選別したり、手で持って運んだりします。このときに紙の断面で指先などを切ることがあります。瞬間ですが鋭利な安全かみそりで切ったよう、なかよわい指先などに痛みを感じます。時には血がにじみ出て白い紙に付き汚すことがあります。そのため手を切らないように注意が必要です。

 

このように紙で手を切ることは、一般的なことだと考えられます。私も切ったことがあります。

 

これが紙で指先などが切れるおそれがある理由で、既知な事柄です。従って、PL法でも責任を問われるとは考えにくいわけです。

(2010年4月1日)

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)