紙はなぜ塵が少ないのでしょうか?
今回のテーマは「紙はなぜ塵が少ないのでしょうか」です。紙には塵が少なく、特に古紙入りの再生紙についても比較的少ないのはなぜでしょうか?。それでは本当にきれいなのでしょうか。
塵とは、その測定方法について
まずはじめに塵とは何でしょうか。例によって広辞苑で調べてみますと、塵(ちり、ごみ)は、一般にホコリや目に見えない微小な砂などの粒子のことをいいます。そして日本工業規格(JIS)には「塵などの夾雑物(mm2/m2)」(JIS P 8145)にその測定方法などが決められています。それについて少し詳しく説明します。
パルプ工程や抄紙の段階で、除塵装置、薬品処理などによって塵などの異物は紙の中に持ち込まれないように取り除いています。しかし、原料が天然物のせいもあり、ピッチ(木材に含まれる無色~黒色の粘着性物質)、結束繊維その他、種々の夾雑物が紙中に含まれることがあります。製紙メーカーとしては、需要家に迷惑が掛からないように除塵装置や目視によって管理値を決めて、減少努力をしていますが、それでも皆無ではありません。そのために紙の選別工程で、一定以上の大きさの塵はクレームにならないように目視によって除去されています。
JISに規定されている塵の測定は、夾雑物計測図表を用い、ー定面積の紙および板紙を肉眼で観察し、明確な異物(ちり、結束繊維、樹脂斑点など)を大きさ(面積)ごとに個数を計測し、 1m2あたりの塵面積(mm2)で表す方法が取られています。しかし、この方法は目視で、個人差がでやすいことから、機器による光電式の紙塵測定装置が開発され、活用されています。
パルプおよび紙の製造…主に除塵設備について
それでは、パルプおよび紙のできるまでについて除塵を中心に説明します。紙の製造にはパルプが必要ですが、そのパルプを造る工程では、木材チップは薬品と混合して蒸解釜と呼ばれる釜に入れられ、高温高熱で数時間煮られます。蒸解された木材チップは、その成分のうち、繊維分とそれ以外(リグニン成分など)に分離します。繊維分はパルプとして洗浄工程・漂白工程へ向かい、紙の原料として抄紙機に送られます。それ以外の成分は、薬液に溶け出し、「黒液」と呼ばれる溶液となります。この液体をエバポレーターと呼ばれる装置で濃縮することによりボイラーでの燃料となり、このボイラーで、抄紙機に必要な蒸気や電力を作ります。
次に、除塵工程(クリーナー)へと進みます。ここでは、パルプ(バージンパルプおよび古紙パルプ)に含まれる異物やゴミ(塵などの夾雑物や古紙から混入しやすい紐、ホチキスなど)を取り除きます。この除塵工程で塵などが除去されるので紙はきれいに仕上げられるわけです。
続けます。その後、さらにスクリーンと呼ばれる工程にてクリーナーで除去できないような細かいゴミを取り除きます。この工程でパルプはますますきれいになります。
古紙パルプの場合は、次に脱墨(だつぼく)工程へと入ります。フローテーターと呼ばれる機械で繊維から剥離されたインキを気泡とともに液面に浮上させ、掻きとることによって、インクを落としていきます。再びスクリーンを通り、除塵された古紙パルプは、シックナーと呼ばれる装置で脱水され、環境負荷の少ない過酸化水素(H2O2…強い酸化作用をもち、漂白剤・消毒殺菌剤として用いる)などで漂白された後、調整工程を経て原料として抄紙機へと送られていきます。
このようにして、除塵工程でのクリーナーやスクリーン設備で小さい塵や大きなゴミなどを除去します。そのために紙には塵が少なく、きれいなのです。
その上、抄紙機にもクリーナーやスクリーンなどの除塵設備が付いており、きれいに仕上げられます。
また抄紙工程、塗工工程で使用される諸薬品にも、おのおのスクリーンがあり、除塵されます。
さらに抄紙機、塗工機、スーパーカレンダー、および仕上げ工程、選別工程などの各工程ではスポットディテクターなどの設備や人による目視で塵、汚れ、ホールなどを除去します。このために紙は塵が少ないのです。
(2010年4月1日)
参考・引用文献
- 紙 -紙と印刷、品質クレームへの対応- 増補改訂 下巻…中嶋隆吉(王子製紙株式会社 1997年発行)
- 広辞苑(第五版)…CD-ROM版(株式会社岩波書店発行)
- ホームページ王子製紙|化学パルプができるまで
- ホームページ王子製紙|古紙パルプができるまで
- ホームページ王子製紙株式会社|環境への取り組み > 紙をつくるフロー
- ホームページ地球環境にやさしいものとは