製紙はリサイクル産業
2000年10月 研修会
(なお、図表および参考文献名は割愛しました)
1.紙の消費は「文化のバロメーター」、製紙および印刷事業は「文明の源泉」
- 紙・板紙生産量(1999年) …米国に次ぐ世界第2位。3,063万t(世界の約10%に相当)
- パルプ生産量 (1999年) …世界第5位(世界の約 6%に相当)[米国1位]
- 古紙消費量 (1999年) …世界第2位(世界の約12%に相当)[米国1位]
- 国民1人あたりの紙・板紙の年間消費量(1999年) …世界第7位[米国1位]
わが国は、世界でも有数で、しかもトップクラスの製紙国である。
2.反面、最近は以前よりはよくなってきたが、紙パルプ産業のイメージは、「公害型産業」、「森林破壊産業」、「ごみ発生源産業」などと決してよくない。
本来は「紙は文化・文明のバロメーター」であるはずであるが、なぜか。「紙」そのものに対するイメージと企業・産業に対するイメージに違いがありそうである。「紙」、それを作っている紙パルプ産業は本当に悪い産業でしょうか。
3.過去に紙パ産業のイメージを落とすきっかけになったものとして、大きく2つある。
1つは、「田子の浦港のヘドロ問題」…1970(昭和45)年の公害問題、いわゆる特定地域型の環境問題に相当するものである。
さらに、1990年10月に社会問題化したダイオキシン問題が発生。その後、'91年の環境庁調査では、紙パルプ工場付近の魚介類や水質は、ー般地域と比べても特に有意な差はなく、人の健康に被害を及ぼすとは考えられないとの見解が示され、問題となるレベルでないと誤解は解けたが、当業界では自主的に、直ちに従来の塩素漂白法を止め酸素漂白法導入、パルプの洗浄強化などを実施し、目標期限の93年末には対象となるすべての工場で目標を達成した。このような当業界の迅速な対応と努力は社会的にも評価されたものである。
[注]紙パ産業におけるダイオキシンの発生量…塩素漂白法時代の90年は約40g(全体の0.8%)が、酸素漂白法の現在は約 0.8g/年(全体の0.02%)でおよそ当時の1/50に減少。
ダイオキシンの最大の発生源は都市ゴミ、下水汚泥、有害廃棄物の焼却であり、他に化学工業などがある、その発生量は全体で約 5,200g/年。この中で一般都市ごみの一般廃棄物の焼却によるものか全体の約80~85%を占め、産業廃棄物を合わせると95%に達する。
紙パ産業の影響度は非常に小さく、現状でも安全であると判断されるが、今後ともダイオキシンの規制は全体に厳しくなるものと考えられ、発生要因とされる塩素のさらなる削減や無添加による脱塩素漂白法(酵素漂白法、ECF…Elementary Chlorine Free、TCF…Totally Chlorine Free )が導入されたり、切替えの検討がされている。
このように過去には、失敗もし迷惑を掛けた面があったが、大気汚染、水質汚濁、悪臭、廃棄物などの環境問題、およびエネルギー問題などについて紙パ産業が行ってきた対策と効果・実績は、世界的にみても決して劣るものではない。むしろ先行しているといえる。
そしてもう1つは、地球規模の環境問題に相当するものであるが、以前に「古紙1tは緑の立木20本に相当し、その分切らずに済む」という表現のために、紙は「青々とした立木」を原料としていると信じ込まれ、紙パ産業は森林を破壊する地球環境破壊産業だという悪いイメージが作られた。これには紙パ産業サイドの説明不足があったが、このイメージを氷解するのには時間が掛かる。それでも現状を知ってもらいこの誤解を解かなければならない。
悪いイメージは、今でも残っており、図(省略)に示すように、「青々とした立木」を原料としているとして、紙パ産業に対して誤解を与える表現(紙は立木から作られる)が堂々と記載されている。これは最近の小学生向けの参考書に載っているものから抜粋したが、誤解がある。紙パサイドのPR不足もあるが、訂正したいものである。
「紙パ産業」は、環境に優しいリサイクル型の産業であるということをここで是非とも理解を深めて頂きたい。