紙の腰は、こわさ、剛度(ごうど)のことで、紙に曲げの力を与えたときの抵抗性を表し、カード類、表紙などに用いられる紙や印刷用紙などは適切な腰を持っていることが必要です。特に薄い紙ほどその要求が強くなります。
麺類などに「腰がある」と表現することかありますが、紙の場合も、「腰がある」とか「腰がない」とかいいます。もちろん、「腰」そのものでなく、「腰の力」の意で用いられ、「弾力、ねばり」などの意味で使われております。
JISでは、「腰」という用語は使用されないで、「こわさ」が一般的な表現で「剛度」も用いられます。そのため以下、「こわさ」という用語を使います。
こわさに影響する諸因子は何でしょうか。
紙のこわさは、坪量や厚さが大きいほど高くなりますが、特に厚さの影響が大きく、厚さの3乗(実際には 2~3乗で、一般には2.6乗くらいか)に比例します。また、厚さが一定であれば、密度(緊度)に正比例します。なお、前述のように、紙の縦方向は、横方向に比べて大きいこわさを与えます。
原料や使用薬品の剛性にも影響を受け、例えば、パルプ原料の叩解を進めれば、こわさは向上し、古紙パルプよりバージンパルプのほうが剛性があり、大きいこわさが得られます。また、水分もこわさに影響し、一般的に水分が多ければこわさは小さくなります。
なお、こわさを増すために、紙料に澱粉(でんぷん)やケイ酸ソーダなどの添加が行われることがあります。
蛇足ながら、次にこわさの試験法を簡単に紹介しておきます。
- 紙自身の重さによるもの (クラーク法、cm3/100…JIS P 8143)。クラークこわさ試験器で測定します。紙の端を1対のロールの間に固定し、一定の速度で回転させ、立ち上げます。ある程度以上に回転すれば紙は自重によって反対方向に倒れます。倒れるときのロールの回転角度は試験片の長さ(張出し長さ)に比例しますが、この原理を使い、紙のこわさを計算式から求めます。
- 試験片を一定の角度に曲げるのに必要な力を測定 (テーバー法、mN・m…JIS P 8125)。テーバーこわさ試験器で測定します。紙の自重によるたわみではなく、荷重曲げ法といわれ、紙を15度曲げるのに必要な荷重を測定するもので、自重でたわみ難い厚めの紙、主として板紙のこわさを測定する場合に適用されます。
- 試験片に一定の力を加えたときに曲がる角度を測定 (ガーレー法、mN…J.TAPPI No.40)。ガーレーこわさ試験器で紙を押し曲げるときのたわみを測定します。
- 簡便法…自重によるたわみ測定法 (mN・m…TAPPI UM409)。机やテーブルの端から紙をー定の長さだけ外へ垂らすと、自重によって下へたわみます。その程度を肉眼で比較したり、曲げ長さ、たわみ程度、坪量を測定して曲げこわさ(mN・m)を求めることができます。