FAQ(12) 紙と静電気トラブル

静電気とは

特に冬場の乾燥期には、静電気が発生し障害を起こしやすくなりにます。紙と静電気トラブルは皆無だろうとか、無関係だろうと思われがちですが、用途によっていろいろと配慮されております。

服を脱ぐときなど、特に冬場に、衣服が体にまとわりついたり、パチパチと不快な音を経験をした人や、ドアの金属製ノブに触れたときにビリッと電気的なショックを受けたりした人は多いのでなかろうか。これが静電気です。

これは服とその下の衣服との間で電子の移動が起こって帯電し、衣服が体にまとわりついたり、蓄積された静電気が放電し、パチパチと不快な音をたてたり、感電したりするなどの障害を起こしたものです。

2つの物体を摩擦したり、接触、剥離したときに、一方が正に、他方が負に帯電します。これらの電荷は発生した位置に静止しています。静電気とは、この帯電体の表面に静止している電気のことをいいます。

一般に、摩擦などの原因によって2つの物体の間で電子の移動が起こり、電荷が発生する現象を帯電といいますが、帯電現象が起こると、普通のプラスチックや合成繊維などは絶縁体(電気を通さない物質)のため、発生した電荷が流れず、静電気として蓄積されます。

 

表面電気抵抗…絶縁体108Ω以上、半導体10-1.5~108Ω程度、導体100Ω以下。

逆に、電気の流れやすさを表す電気伝導度で見ると、金属のような導体は電気伝導度104~106Ω-1cm-1と、ガラスや磁器などのような絶縁体は10-20~10-12Ω-1cm-1程度に対し、それらの間にある半導体の電気伝導度は、10-10~102Ω-1cm-1程度にあります(日立デジタル平凡社発行 世界大百科事典(第2版 CD-ROM版)などから)。

 

紙と静電気

また、紙は絶縁体に属し、一般的に表面電気抵抗は1010~1012Ω程度(湿度50~60%)です。そのため、乾燥するほど、紙はパリパリした状態となり、風合いやしなやかさを失うとともに、静電気が発生しやすくなります。さらに印刷・加工時に、特に乾燥期の冬場において、上質紙などの非塗工紙で静電気により重送などのトラブルを起こすことがあり、場合によっては、対応策として、紙に食塩などの導電性物質を添加・塗布し、電気抵抗を下げることが必要になることがあります。

静電気障害を防ぐには、帯電防止を図ることが大事ですが、この方法には

  1. 静電気の発生を防ぐ方法
  2. 発生した電荷を漏洩させる方法(導電化による帯電防止)

の2つがあります。この中でも後者の方法が一般的に行われます。

 

導電化によって物体(紙やプラスチックなど)の帯電防止を図る方法には、表面的導電化と体積的導電化があります。表面的導電化とは、物体の表面に導電性を付与して表面電気抵抗を低下させるというもので、具体的には帯電防止剤を用いて表面加工処理を行い導電性を高める方法です。また、体積的導電化とは、内部を含めた物全体に金属粉末やカーボンブラックなどの導電剤を添加し、導電性を付与して体積電気抵抗を低下させるというものです。

 

なお、特殊紙の世界に、「導電紙」という紙がありますが、これは一般紙にカーボンブラックなどの導電剤を内添し帯電を抑え、静電気をカットした機能紙ですが、その表面電気抵抗値は104 ~106 Ω位にあります。ちなみに合成紙は、一般紙より高めの1012~1013Ω、ポリプロピレンフィルムは1015Ω以上です。

 

紙と静電気トラブルについて

静電気トラブルは、生産・管理技術向上に伴ない紙の水分アップ、印刷室の湿度管理の普及、静電気除去装置設置、オフ輪印刷時の乾燥温度ダウンなどによって減少してきていますが、ときに特に冬の乾燥期に発生することがあります。

 

用紙の静電気は、紙の水分が低い時や印刷室内の湿度が低い時に発生しやすくなります。すなわち、紙は乾燥するほどその電気抵抗は増加(導電性が低下)します。その結果、摩擦によって発生した電気は流れずにそのまま帯電し、重送や排紙時のトラブルを起こしやすくなります。しかし、その周辺の空気中に水分(湿気)が多量に存在すれば、紙の静電気は速やかに空気中に漏洩しトラブルは生じにくくなります。

 

塗工層は原紙層よりも電気抵抗が低く導電性に高いので、塗工紙のほうが非塗工紙よりも静電気トラブルは起こりにくい。普通、紙の表面電気抵抗は、湿度50~60%で1010~1012Ω程度ですが、用紙が一般的に100℃以上の熱風乾燥を受けるオフ輪印刷では、紙の水分ダウンにより1013Ω以上となり、より静電気トラブルを起こしやすくなります。そのために諸対策がとられています。

紙と静電気トラブルの主な原因と対策

[注]区分印刷中、①③④はオフ輪印刷に適用

区分 原因 対策
用紙
①低水分…特に非塗工紙 ①水分アップ…特に塗工紙の場合、オフ輪印刷時のブリスターに注意
②低導電性 ②導電性アップ(導電性処理) …食塩等の添加、塗布
印刷 ①高乾燥温度…過乾燥 ①乾燥性(インキの付着、汚れ)とのバランスを見ながら乾燥温度ダウン
印刷室の空調不足…低湿度(加湿不足)

  • 印刷室の空調整備(湿度55~65%RHの範囲で一定管理)
  • 床に散水、やかん等による湯沸かしなども効果あり。スプレー等で噴霧。
  • 外気との遮断(特に乾燥期の冬場)
③紙への加湿不足 ③水スプレーによる強制加湿
印刷機クーリング部での冷却不足 ④出来る限り冷却温度をダウン
⑤静電気除去装置なし、ないしは作動不十分

⑤静電気除去装置設置ないし点検、整備

除電装置設置(イオナイザーなど)…イオン中和法などの採用


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)