「紙は木から作られている。木は地球環境によい。したがって、その木からできている紙は地球環境を破壊している。また紙を生産している紙パルプ産業は森林を破壊し、地球環境を破壊する産業だ」という考え方はかなり少なくなってきましたが、「木を切ることは悪いこと」の思いとともにいまだ根強く残っています。
本当に紙と紙パルプ産業は森林を破壊し、地球環境を破壊しているのでしょうか。
本当に木を切ることは悪いことでしょうか。
- ①木を切ることは、地球環境破壊になるので(絶対に)許せない
- ②木を切ることは、森を守ることになるので制限なく伐採してもよい
- ③木を切ることは、森林を保護することになり、地球環境保全にも結びつくので植林・育木しながら、計画的に伐採してもよい
この3点のうちどれを選ばれるのでしょうか。案外と①と思っている人が多いのではないでしょうか。「悪」ということから木を切ることをタブーに思っていたり、消極的になっていないでしょうか。森林は光合成(二酸化炭素同化作用)によって二酸化炭素(CO2)を固定化し、人によい酸素を放出するなど地球環境にやさしく、景観にもよく人類にとって大きく貢献しているということが前面に出て、その木を切ることはよくないことであると思うようになっていないでしょうか。特に学校の先生方に多いようです。
「木を切ること」の意味、重要性を理解されれば、①の人の考え方ももう少し深くなるものと思われます。
この中では、③の考え方がよいと思います。制限ない乱伐はよくありません。「はげ山」(樹木の生えていない山。草木のない山)にならないように、木を切ったら植林をすべきです。幸いにも「木」は石炭・石油などの「化石資源」と違い、「再生」可能な資源です。植林をすれば森は「再生」します。
また、成長した成木(老木)よりも成長過程にある若木のほうが、光合成によるCO2吸収が旺盛です。木にも寿命があります。自然に腐らすよりも地球温暖化防止のためにも、成木は計画的に伐採し有効に活用、また間伐や保育などを行い森林を適正に整備し造林・植林・育木する。この「植林」→(育木)→「若木」→(育木・成長)→「成木」→(伐採)→「植林」のサイクルを繰り返すことが重要なことです。
ここで本ホームページ「紙と環境」の中の拙文「紙パ産業はリサイクル産業」を紹介します。また、今年3月、鳥取県のメルマガ「とっとり雑学本舗」に掲載された「森を守ることは、森の木を切ること?」も非常に参考になりますので、併せて引用させていただきました。
まず、「紙パ産業はリサイクル産業」から紙パルプ産業における環境保護への取組みと位置づけについて、その要旨を説明します。
(1)「資源の節約」(省資源)…紙パ産業は、古紙や木材の有効利用型の企業
製紙原料として木材を使用しているため、紙パ産業は「森林を破壊する元凶」であるとか、天然木材を原料に使っているように思われているが、実態は製材の残材や間伐材などを使い、有効活用しているのである。
天然林・人工林の健全育成、保護のために間伐しているが、この間伐材をそのままにしておけば廃材となり腐り、地球温暖化ガスとなる炭酸ガスなどを発生させ環境汚染となる。それを資源として、有効に活用しているのである。
これは紙パ産業は「森林を破壊する元凶」であるということは当たらない。むしろ環境に優しい省資源型の産業であるといえる。
(2)「環境保全」…植林「育てる原料」への取組み
特に資源の少ないわが国では、安定した資源(原料)の確保は紙パルプ産業の最大の責務で、かつ課題である。紙の主原料は木材であるが、木材の供給源である森林は、「資源」という面と「環境保護」(景観含む)という両面を持つが、地球規模的に環境保全・森林保護に対する関心が高まる中で、ただ単に森林は「資源」というだけで、消費することは許されない。
森林の持つ「地球環境保護」という側面を積極的に育てる必要がある。環境保全のためにも、ますます「育てる原料」「森の育成」への取組みが重大となっている。幸いにも「木」は石炭・石油などの「化石資源」と違い「再生」可能な資源であり、木を原料とする紙パ業界では植林・造林事業への取組みが一層活発化している。
[注]日本製紙連合会ホームページ…日本の製紙メーカーでは、より原料の安定供給を確保するために、『育てる原料』への取り組み-海外植林事業を積極的に展開している。
製紙業界では2000年末までに、国内に13万ha、海外に28万ha(8ヶ国・24プロジェクト)の植林を実施し、今後、2010年までに植林面 積を55万haにまで拡大する計画を立案[日本製紙連合会「環境に関する自主行動計画」目標( '97年 1月制定)]。
植林対象地の多くは環境保全を考え、焼畑などで草地や灌木化した荒廃地、牧場跡地などで行い、木材を『育てる原料』として植林事業を促進。海外植林には、(7~8年で伐採できる成長の早い)ユーカリやアカシア、ラジアータ松など、早く収穫にむすびつく早成樹を選定。
そして植林をする際には、成木になるまでの年月に合わせて土地を区分し、毎年、違う場所に順々に植えていき、計画的に保育・管理と収穫(伐採)のサイクルで回転。これによって、毎年一定の収穫が得られると同時に、森はつねに緑豊かな状態が維持できる。
(3)「リサイクル」…古紙から再生紙へ、植林そして育木へ
製紙産業は木からパルプへ、そして「紙」に。回収された古紙は、パルプに再生され、さらに「紙」へ。また、「植林」から「育木」へと、地球に優しいリサイクル(循環)型産業である。
なお、森林は二酸化炭素(CO2)を固定化し、酸素を放出して地球の温暖化防止に貢献しているが、成長した成木(老木)よりも成長過程にある若木のほうが、光合成(二酸化炭素同化作用)によるCO2吸収が旺盛である。そういう意味では、成長した(しきった)木は、伐採をし有効に活用した方がよく、無管理でほったらかしにして倒木すれば腐ったりして、逆にCO2を発生させることになる。成木は計画的に伐採し、植林・育木する。このサイクルを繰り返すことは重要なことであり、紙パ産業は、この植林・育木に力を入れている。まさに製紙はリサイクル産業として大きな責務を果たしている。
このように紙パ産業は決して森林を破壊する元凶ではなく、古紙の再生も世界のトップクラスであるように、むしろ環境に優しい節約型・リサイクル型の産業であるといえる。
なお、「紙パルプ産業における環境保護への取組み…森林資源保護と古紙・再生紙の活用」もこ参照ください。
次に今年3月、鳥取県のメルマガ「とっとり雑学本舗」に掲載された「森を守ることは、森の木を切ること?」を引用させていただきます。
「日野川源流木材需要拡大フォーラム」に参加された方の感想です。なんとなく木は切らないほうがいいと思っていたが、思わず「目からウロコ」だったお話です。なかなかよく纏まっています。
●森を守ることは、森の木を切ること?
私の夢のひとつに「屋久島に行きたい」というのがあります。樹齢が数百年・数千年の屋久杉の森の中に立ったとき、人はどんな気持ちになるのでしょうか? さて今回の豆知識は、なんとなく木は切らない方がいいと思っていた私が、思わず「目からウロコ」だったお話です。
先週の金曜日、私は米子市で開催された「日野川源流木材需要拡大フォーラム」に参加しました。鳥取県西部を流れる日野川は県下最長の川。中国山地に源を発して北流し、日本海の美保湾にそそぎます。長さ77km、流域面積は860平方キロ。
上流地域には、鳥取県の日野郡を中心とした中国山地の森林があるのですが、この日野川の水量が、最近は年々増加しているとのこと。その原因の一つに挙げられているのが、森の保水力の低下。山が「荒れている」のだそうです。
森の保水力はダム何個分とか、経済効果で何百億円分とか、その「公益的機能」についてはよく知られていますよね。WEB上にもあちこちに情報があることですし、ここでは割愛しますので関心のあるかたは検索してみてください。
さてこのフォーラムは、鳥取県の木材の会社や林業関係者が中心となって開催したもの。森の保水力が低下している、山が荒れている、ということは、実は国産材の需要拡大と密接な関係があったのです。
広葉樹林は根が広く張り、杉など針葉樹に比べて保水力が高い、と言われますね。私も広葉樹林の森の方が、針葉樹林の森より良いだろうと思い込んでました。ところが話はそう単純ではありません。杉の森だって十分に保水力は高いのです。
では問題は何か。それは下草があるかないか、です。
林業関係者が「森が荒れている」というのは、山の木がまったくなくなって、いわゆる「はげ山」になったことを言っているのではありません。木がうっそうと茂っていても、むき出しの地面から直接木が生えているような状態は「荒れている」のだそうです。
そして、下草が生えている山では、降った雨がしっかり地面に貯水されるのだとか。
では、なぜ下草が伸びないのでしょうか?
草のない山は降った雨を貯める力がないとのこと。
なぜ下草が伸びないのか? それは太陽の光が地面にまで届かないからです。なぜ光が届かないのか? それは杉の木が生えすぎて、かつ枝が伸びているからです。なぜそんな状態になっているのか? それは林業が産業として成り立たなくなり、森林が放棄されたからです。なるほど「山が荒れている」と言うわけですね。
木材をよい製品として市場に供給するためには、間伐、除伐、枝打ちなどを行う必要があります。すると自然と木々の間に隙間ができ、太陽の光が地面まで届いて下草が育つというわけ。
ところが今や、家を建てるにも国産材が使われることが少ないため、需要は低迷、価格は下落、山から木を切り出しても採算がとれる値段で売れません。林業じゃ食べていけない、結果として森が放置され、公益的機能まで損なわれてしまいました。
森は「生きもの」です。木を適度に切り、新しい苗木を植林することで、森は生き返ります。この(成長)→(伐採)→(植林)→(成長)というサイクルがうまく回らないと、森は機能不全を起こしてしまう。
木を切り、そしてまた植えるには、国産材が消費され、林業が健全に運営されなければなりません。昔の日本家屋は、70年も80年も保つような丈夫なものが建てられましたが、これもこの森林のサイクルをふまえたものだったのです。
住まいは、気候風土と深く関わっているはず。古くから日本の家は、先祖たちが近くの山で切り出した木材で作ってきたものです。ところが今、家を建てようとすれば、メーカー任せの既製品のような家になってしまいがち。その地域に根ざした木の住まい、近くの山の木による家づくりなんて夢なのでしょうか。
基調講演をしていただいた、建築家で「緑の列島ネットワーク」理事の三澤康彦さんのお話は、国産材を使った家作りの工法など、専門的な部分さえ門外漢の私が面白いと思うくらいでした。また、国産材を使うことのメリット、健康や癒しの効果、さらに私たちが「暮らし」をどう考えるべきか、といったテーマまで。
40坪の家を国産材で作ると、材料費がたったの140万円というのには驚きました。安いのは喜んでいいのでしょうが、林業関係のかたに申し訳ないくらいで、これじゃペイしないわけですよね。ここは国産材をどんどん使ってインフレを起こさなければ!
森の木は屋久杉のように、できるだけ切らないでずっと残しておいた方がいいこんな私の考えは、一面的で浅はかなものだったようです。ぜひ下記のWEBサイトをごらんください。こんな活動もあるのです。 (Z)
とっとり雑学本舗 VOL.162・第162号(2002.03.15)、VOL.163・第163号(2002.03.19)
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