FAQ(19) 新刊図書の外観を、古書のように見せる方法について

ご質問

図書を出版するにあたって、図書の紙の質感を昔の洋雑誌・新聞のようなものにしたいと思います。このように新刊図書の外観を、古書のように見せる方法を教えてください。

(紙の博物館)

※このご質問は横浜の図書館から紙の博物館に問い合わせがあったものを会員に照会があったものです。

 

回答

掲題について紙の立場から私が経験したお話しを参考に供したいと思います。

紙を古くすることは大変なことですので、掲題のように紙を古く見せる方法について考えるのが妥当と考えます。ただ、ご質問が紙そのものを古くするということでしたら、意にそわないと思いますので悪しからず御了承願います。

私が経験したのは、明治、大正時代の音楽(童謡)関係の図書や書簡で、それに似せて復刻版を作るということでした。表紙や本文、見返しなどがあり、紙の種類は当時の上質紙アート紙、今でいうファンシーペーパー、裏ねずの板紙、和紙などいろいろとありました。

そこで印刷会社の各関連しそうな部門の人たちと一緒に、復刻する図書などのある学校や博物館、図書館に行き、現物を見せていただき紙質や印刷状況などを観察し、計測できるものは実際に調べました。

もうお分かりでしょうが、風合い・面質・手肉感・厚み・色合い(退色を加味)など当時の紙に近いものを選定し、それに印刷・装丁で古く見せようとするわけです。

例えば昔のアート紙は今のアート紙では品質レベルが全然違います。そこで紙代理店の協力を得て、コート紙、軽量コート紙や微塗工紙の各社紙サンプル帳を取り寄せて、その中から近い紙を選び出します。このような作業を各紙について行ないます。

そして明治、大正時代の印刷、筆記に合わせ印刷をするわけです。もちろん、製本・装丁などもすべて当時のものに近いようにします。結構、時間と手間の掛かる仕事でした。しかし、よい思い出になりました。

こうして出来上がったのが鳥取市にある「わらべ館」(童謡館)に展示されている懐古調の復刻版です。

(2003年10月21日)

 

なお、このご質問と回答は(財)紙の博物館友の会「かみはくニュースレター No.5」(2004年11月1日発行)にも掲載されました。

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)