ご質問
若干旧聞になるかと思いますが、昨年(2002年)の11月下旬頃に日本ビクター(株)が環境に優しいとして自社の商品パッケージに水なし印刷を採用(日本水なし印刷協会の認証取得)との報道発表をしています。そこで「水なし印刷は何故、環境に優しいのでしょうか」、ご教示ください。
(M.Hさん)
回答
ご質問について分かる範囲でお答えします。一般的にオフセット印刷(水ありオフセット印刷)は湿し水を使いますが、湿し水は主として酸性で、成分は水以外にゴム液、リン酸ソーダ、正リン酸、第一リン酸アンモニウム、活性剤、有機酸などです。使い終わったこのような成分を含む湿し水(廃液)は、その処理に大変だと聞いております。
これらの成分のほかに、イソプロピルアルコール(IPA)を使用するアルコールダンプニング法も用いられていますが、このアルコールダンプニング法は、それまでのモルトン(綿のタオル状の被覆材)巻きローラーにより版面に湿し水を供給する方法に比べ、水の使用量が少なくでき、印刷品質が安定します。そのため現在、主流になっています。その方法で主なものが、水着けローラーにより版に直接水分をつけないで、インキ着けローラー(ゴム質)に水分を与えるダールグレン湿し水装置です。
そして当初は、湿し水のなかにイソプロピルアルコール(IPA)25%を混合したものでしたが、職場や近隣の環境問題から法規制もあり、アルコール含有率は漸次減少し、現状では5~6%以下になっているのではないでしょうか。それでもまだ問題がありそうで、しかも下げ過ぎると効果がなくなりその板ばさみにあるようです。
ご質問の「水なし印刷」ですが、このような湿し水を必要としないため、有害廃液の発生がなく環境への負荷が少ないと言えます。
(2003年7月21日)