FAQ(42) 中性紙の寿命はどれくらいなのでしょうか?

ご質問

大学で保存科学(文系として)を勉強している者です。質問があります。現在多くの刊行物は酸性紙ではなく中性紙が使われているようですが、中性紙の寿命とはどれくらいなのでしょうか?また中性紙といっても、各会社によって填料などは異なるのでしょうか?印刷される内容によりインクや染料は異なると思うので画一的に中性紙という風にはやはり言えないのでしょうか?教えてください。

(MKさん)

 

回答

中性紙とは、紙の保存性、耐久性等を高めるために原紙に硫酸バンドを使用しないサイズ処方や、抄紙時に薬品処理をして中性化(抄紙pH:7~8くらい)した紙をいいます。それではそれぞれについてお答えいたします。

 

①中性紙の寿命

中性紙の場合、原則的に紙繊維を劣化させる硫酸バンドを使用しませんので耐久性があり、寿命は酸性紙の50~100年に比べて一般的に4~6倍あるとされております。

ところで王子製紙は2000年の春に、1000年劣化しない紙「千年紙」を開発・発売しました(銘柄 OKプリンス上質21…上質紙系)。その王子製紙のPR、情報によれば、

  • リグニンなどパルプに残り、紙の強度劣化・褪色の原因となる物質をさらに除去すること
  • 硫酸アルミニウムをまったく使用しないこと(中性紙)
  • 蛍光染料をまったく使用しないこと

などの処理を行い、光や熱によってセルロースを切断する引き金となったり(強度劣化)、化学反応を引き起こしたり(褪色)して、紙の劣化を進行させる物質を取り除きました。こうして生まれたのが、強度劣化が低い、褪色しない、そして白色度の低下を抑えた紙、すなわち“千年紙"というわけです。和紙に匹敵する、この究極の長期保存性に優れた紙、「千年紙」は洋紙では初めてですが、こういう特別に抄いた中性紙もあります。

 

②各会社によって填料などは異なるのでしょうか?

酸性抄紙から中性抄紙に転換する場合の一般的な主な原紙条件の変更点は、

  • 抄紙pH…pH4~6(酸性抄紙)から7~8(中性ないしアルカリ抄紙)へ変更
  • 填料…クレーから炭酸カルシウム(炭カル)へ変更(タルクは一部使用こともあり)
  • 内添サイズ剤…ロジンサイズ剤などからアルキルケテンダイマー(AKD) またはアルケニル無水コハク酸(ASA) や他の中性サイズ剤に変更、などです。

なお、硫酸バンドは原則的に使用しないが、系内の汚れ防止などのためにごく少量使うことがあります。

填料などはとの、ご質問ですが、填料の配合率、中性サイズ剤の種類・配合や硫酸バンドの微量使用ないしは不使用などの差により、中性紙といっても、厳密に言えばメーカーごとに抄紙条件は異なっているといったほうが良いでしょう。

 

印刷される内容によりインクや染料は異なると思うので画一的に中性紙という風にはやはり言えないのでしょうか?

このご質問の意味がはっきりわかりません。ただ同じ品種であれば紙のメーカー・銘柄間によって、印刷の仕上がり具合が大きく異なるのでは、不具合ですので中性紙という範疇では大きな差がないと考えたほうが良いと思います。

 

これでよかったのでしょうか。

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)