FAQ(47) 紙にはそれ自体に抗菌性及び抗菌効果は期待できるのでしょうか?

ご質問

いつも楽しく拝見させて頂いております。現在、私は紙を扱う仕事に従事していることもあり、初めてメールさせて頂きました。ご存知の範囲内で構いませんので回答願います。

「紙にはそれ自体に抗菌性及び抗菌効果は期待できるのでしょうか?」。私なりに調べた所、そもそも抗菌という定義自体があいまいです。例えばペーパータオルを例に挙げてみます。ペーパータオルには抗菌の表示がされているものもあれば、ないものもあります。しかし、抗菌と表示してあるだけで、抗菌効果がどれだけあるのか、また抗菌作用はどれだけの時間があるのか、どんな菌にたいして有効な抗菌作用を発揮するのか、ほとんどの商品に明示してありません。

現在、紙だけでなくどんな分野においても「抗菌」と表示されている商品をよく目にします。おそらく殆どの消費者がその表示だけで満足し、どれほどの抗菌効果があるのか考えることもなく、購入しているのが現状ではないでしょうか?

紙を製造している会社の従業員に聞いた所、抗菌剤を入れて作った紙と入れずに作った紙では殆ど抗菌効果は変わらなかったそうです。ただ、その効果を調査したのが取引先の薬品会社だったそうで、公の検査機関ではなかったことが気になりますが…。

抗菌についての文献を読む限りでは,紙を製造する工程において、強烈な防腐剤を入れるらしいですが、それ自体が抗菌加工だと書いてありました。ただどんな菌に対する抗菌加工かは定かではありません。またパルプを漂白する時に、酸素系の過酸化水素水を使用するらしいですが、過酸化水素水はいわゆるオキシドールだと考えればオキシドール自体に消毒や殺菌作用があるので抗菌効果はあるのではないかというのが私の推測です。しかし、紙の製造工程において最後に乾燥工程が必要となってきますので、抗菌効果のある物質が例え含まれていたとしても化学変化を起こしていれば、その作用が低減するのではないかというのも私の推測です。

また、再生紙から作られている物は、パルプから作られている物に比べて、抗菌効果は違うのかどうかということも疑問に感じています。

(KFさん)

 

回答

ご質問についてお答えします。かなり詳しくご存知ですので、私のほうからこれ以上のことを言うことはありませんが、確認されたいという意味で申し上げます。

紙、一般紙にはそれ自体に抗菌性(及び抗菌効果)はないと言ったほうがよいと思います。従って、一般な紙における抗菌性は期待できません。

パルプを漂白する時に、過酸化水素水を使用するとか、紙を製造する工程において、マシン白水にスライム菌の発生を防ぐためにスライムコントロール剤を入れます。また、塗工紙に使う塗料などに防腐用として防腐剤を使うことがありますが、これらはその目的だけにしか使用されない少量添加のため、紙製品それ自体に抗菌性が残ることはありません。

なお、再生紙から作られている物は、パルプから作られている物に比べて、抗菌効果は違うのかどうかということも疑問に感じています、とのことですが、古紙を使うにしても、問題があればそれ自体の防菌のために上記のように、事前に薬品処理をするでしょうし、再生紙とパルプ製品とは差がないといえます。現に再生紙だからといって菌が多いという話しは聞いたことはありません。

紙に抗菌性を持たせるには、別途それなりに処理をしなくてはなりません。それで初めて、その機能紙となるのだと思います。ただ、確かに抗菌の意味、菌が何なのか曖昧なところがあります。たくさんある中で菌の種類が何なのか、その数はどの程度なのか、非常に曖昧なところがあります。科学的に証明しているところは非常にまれだと思います。

「抗菌性」などの表示や語句・言葉に飛びつきやすい、顧客の意をついた盲点でもあるといえます。(もちろんしっかりしたメーカもあります…念のため)。回答にならないかもしれませんが、以上です。

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)