紙とは、「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」で、さらに、広義には「素材として合成高分子物質を用いて製造した合成紙のほか、繊維状無機材料を配合した紙も含む」と日本工業規格(JIS P 0001)に定義づけされております。
狭義的に、これを一般的な紙についてもう少し具体的にいえば、植物性単繊維(セルロース繊維)を水に分散させ、それを簀(す)や網の上に均一な(薄い)層、いわゆるシート状を形成するように流出させ、からみ合わせて、さらに脱水したのちに、乾燥したものであり、この工程の中で薬品添加・塗布や加圧など種々の処理・加工を行って作られたものです。
なお、「ペーパー」(英語:Paper)など欧米各国の紙の語源となった有名なパピルス(Papyrus)は、エジプトのナイル河畔に生育するパピルス草(カミガヤツリ)と呼ばれる葦に似た植物です。
パピルス紙は、紀元前3000~2500年ころ、パピルス草の茎の外皮をはぎ、芯を長い薄片として縦横に並べて水をかけ、重しをかけて強く圧搾し、表面を石・象牙等で擦って、平滑にし、天日乾燥し、シート状にしたものです。
植物繊維を水に分散させ、絡み合わせるという紙の作り方でないため、パピルス紙は厳密にいえば紙ではありません。いわゆる、今でいう不織布の一種といえるもので、紙そのものではありません。
このように、パピルス紙は、繊維分散液から作ったものないため、紙そのものでありませんが、真の紙の発祥の地は中国であり、およそ2100年前の前漢時代に大麻の繊維を使った紙が始まりで、その後、紀元2世紀の初め(西暦105年)の中国・後漢時代に、蔡倫という人が技術の改良を行い、今日の製紙技術の基礎を確立しました。これにより紙の改良者ないし製紙の普及者は蔡倫とされています。
彼の造った紙は「蔡侯紙」と呼ばれ、原料として樹皮、麻、ぼろ布などを用い、これらを石臼で砕き、それに陶土や滑石粉などを混ぜて水の中に入れ、簀の上で漉く方法を採りましたが、このやり方は原理的には今日の紙漉き法[①皮を剥く(調木) ②煮る(蒸解) ③叩く(叩解) ④抄く(抄紙) ⑤乾かす(乾燥)]とほとんど変わりがありません。
(注) 繊維とは、細かい糸状になっているものをいい、その生成過程で分ければ天然繊維と化学(人造)繊維に大別され、それはさらに表のように分類されております。
繊維の分類
天然繊維 |
植物繊維 | 非木材繊維 | 草類繊維 | 藁(稲、麦)、エスパルト草、葦、竹、バガス(砂糖きびの絞り滓)、トウモロコシ、パピルス草など |
葉脈繊維 | マニラ麻、サイザル麻、パイナップル葉 | |||
靭皮繊維 | 大麻、亜麻(フラックス) 、黄麻、苧麻、桑、ケナフ(洋麻、紅麻)、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)など | |||
種子毛繊維 | 木綿(綿)、リンター、カボック、椰子の果表皮など | |||
木材繊維 | 針葉樹 | 松、カラマツ、杉、檜、もみ、つが、トウヒなど | ||
広葉樹 | ブナ、楓、カバ、ハンノキ、ニレ、キリ、クリなど | |||
動物繊維 | 絹繊維 | 絹 | ||
獣毛繊維 | 羊毛、モヘア、カシミヤなど | |||
その他 | 羽毛 | |||
鉱物繊維 | 石綿 | |||
化学繊維 | 再生繊維 |
[注]
|
||
半合成繊維 | ||||
合成繊維 | ||||
無機繊維 |