「紙」、その歴史は古い。そして、あまりに身近にあり過ぎてその貴重さが忘れがちになりやすいが、これまでに文化発展のために果たしてきた役割は大きい。新聞、印刷用紙などの情報媒体や包装・事務用品、家庭用紙…として、われわれの生活の中で、今日でもその役割と位置付けは大きいと考えます。
また、「紙の消費は文化のバロメーター」とか「製紙および印刷事業は文明の源泉」ともいわれ、日常生活における紙の比重は大きく、わが国の国民総生産(GNP) と紙・板紙需要とは強い関わりを持ち、紙はわれわれの生活において、無くてはならない存在となっています。
ところで、紙は大きく3つの基本機能を持ちます。
すなわち、①情報を記録し、かつ保存できること、②物を包み保護すること、および③液体を拭き取り、かつ吸い取ることですが、これらの機能を柱に、付加して幾つかの機能・用途開発がされてきており、その品種構成の多様化と機能化は広範囲になってきております。
これに対し、科学技術の進歩により、他の領域からも新しい競合商品が登場してきていますが、このような中で、紙の優れた特徴、すなわち、軽くて薄いにもかかわらず風合が良く美しいこと、かつ一般的に白く、不透明な平面であるため取扱いが便利なこと、環境への害が極めて少ないことや保存性が良いこと、また、再生ができること、比較的安価でしかも容易に手に入ることなど、紙の持つ有利な機能・用途・汎用性により、日常生活における紙の重要性はこれからも変わらないと考えます。
今後ともさらに永続し、伸展していくためには、資源と地球環境を大切にしていく中で紙の持つ諸特性に、絶え間ない技術を加味し、多様化する市場ニーズに対応して行くことが重要であると考えます。
紙の次に何が来るのか。紙は電子メディアによって駆逐され、無くなるのではないかといわれております。
しかし、お互いにメリットがあり、特徴があります。相互に補完しながら、棲み分けていくものと考えます。
紙がこれからも生活に密着し、その原料対応と古紙回収・利用などで地球環境に優しい限り、かつ技術開発を続ける限り、将来とも紙の存続と進展は大いに可能であると考えます。
付属表
紙 ・板紙の機能と用途
(日本製紙連合会資料)
機能 | 素材(品種) | 加工 | 消費財(容器を含む) | 摘要 |
---|---|---|---|---|
情報・知識の媒体 | 新聞用紙 |
印刷 | 新聞・官報 |
文化需要 |
印刷用紙 | 印刷・製本 | PR(折り込み広告その他)・ポスター・カレンダー・書籍・雑誌・週刊誌・辞典・その他出版物 | ||
薄葉紙・板紙 | 印刷・製本 | |||
包装:軟包装 | 包装用紙 | 印刷・製袋 | 包装紙・紙袋・角底袋・封筒 |
|
〃 :重包装 | 〃 | 〃 |
重袋(砂糖・米・セメント・肥料・その他重量物用) | |
〃 :個装 | 段ボール原紙 | 印刷・コルゲート・製箱 |
段ボール箱(各種工業製品・生鮮食料品・その他用) | |
〃 :個装 | 紙器用板紙 | 印刷・製箱 | 薬品・化粧品・その他各種商品の個装用 | |
紙容器 | 紙器用板紙 | 印刷・成型 | 紙コップ・紙皿・紙カートン・冷凍食品容器・その他の紙器 | |
事務用:筆記 | 印刷用紙 | 印刷・加工 | 集計用紙・方眼紙・ノート・便箋・カード・ファイル・帳簿・フォーム用紙・カーボン紙・ノーカーボン紙 タイプ用紙・謄写用紙・感熱紙 | 産業需要 |
〃 :複写 | 薄葉紙 | |||
〃 :謄写 | 雑種紙 | |||
家具・建材 | 包装用紙 | 印刷 | 壁紙・襖紙・家具・建材(化粧板等樹脂加工製品)・ルーフィング・石膏ボード | |
雑種紙・板紙 | 樹脂加工その他 | |||
工業製品の部品 | 薄葉紙 | 印刷その他加工 | コンデンサー・絶縁紙・剥離紙・ラベル・印画紙・青写真用紙・煙草巻紙・濾紙・紙幣・証券・紙管 | |
その他産業用 | 雑種紙・板 | |||
通信・運輸 | 印刷用紙 | 印刷その他加工 | 葉書・切手・印紙・切符・荷札・電話帳 | |
雑種紙・板紙 | ||||
生理・衛生用 | 家庭用薄葉紙 | 印刷・成型 | ティッシュペーパー・トイレットペーパー・ナプキン・京花紙・ちり紙・紙タオル・紙おむつ・障子紙・紙ひも | 家庭需要 |
雑種紙 |
||||
教育・学習用 | 印刷用紙 | 印刷・製本 | 書道用紙・画用紙・ノート・教科書・原稿用紙・手工用板紙・参考書・試験用紙 | |
紙器用板紙 |