紙について(4) 〈資料〉 表「紙の歴史」

(枠内ライトブルー部…和紙関係) 2007年11月1日一部追加修正

年代 内容 備考(主な原料、書写材料など)
紀元前(BC before Christ) 3.5万~7000年 洞窟壁画…牛、鳥、人などが洞窟内部の壁や井に描かれる(後期旧石器時代) ラスコー洞窟(フランス)、アルタミラ(スペイン)などが有名
紀元前4000年頃~
  • メソポタミヤ方…楔形文字(粘土板)…バビロニヤ文化
  • エジプトで象形文字を刻む…エジブト文化
書写材料…石、粘土板、木版、金属板、動物の皮、木皮など
紀元前3000年頃~

パピルス(書写材料)の使用…エジプト

(パピルスは「紙」そのものではないが、ペーパーなど「紙」の語源となった)

パピルス草
紀元前1300年頃~ 中国殷の時代に甲骨文字・獣骨文、金石文使用 動物の骨(亀の甲・鹿の骨など)、その後、竹簡、木簡や絹布を使用
紀元前300年頃~ パーチメントペーパー(羊皮紙)の使用…ヨーロッパ 羊皮紙…羊、山羊、小牛等の皮
紀元前179~6年(中国・前漢時代)

紙の発明…中国(前漢)

(西安や中央アジアの遺跡、数か所から麻紙の断片が発掘される)

世界最古の紙(麻紙)[大麻、苧麻]
紀元前91年 「史記」司馬遷(前漢)…中国最初の正史 日本に関する記録なし
紀元57年 中国の史書「後漢書」倭伝…「漢委奴国王」の金印 光武帝(中国)が建武中元2年(57)、倭奴国王(日本)に贈ったとされる金印。1784年(明4)、九州博多湾志賀島で発見
紀元(AD anno Domini) 100年(中国・後漢時代) 「紙」という漢字の登場…「説文解字」<せつもんかいじ>[中国最古の辞書(字書)…許慎<きょしん>撰]

「紙絮一苫也」(紙は絮の一苫なり)…紙は屑繭(くずまゆ、古真綿)を簀(す)で汲み上げたもの

(注)絮…じょ。苫…せん。簀、簾(すだれ)のこと

紀元105年(中国・後漢時代) 製紙法の改良…中国(後漢) 蔡倫。「蔡侯紙」と呼ぶ(後漢書) 「蔡候紙」…樹膚(じゅふ)、麻頭(まとう、大麻の上枝)、敝布(へいふ、麻織物のぼろ)、魚網を使っての紙[原料…樹皮、麻ボロ、破布(古い布)、古漁網]
3世紀後半 「魏志倭人伝」…《三国志》魏書東夷伝の中の一部を通称したもの。著者は西晋の陳寿(233‐297)。 3世紀の邪馬台国、および2~3世紀の倭人の風習などが記されている中国の文献
3~4世紀(中国・三国時代)

(紙の伝播…東進)

朝鮮、べトナムなどに製紙法が伝えられる…東晋の僧、摩羅難陀が百済に仏教とともに造紙術を伝える(384年)

中央アジアの桜蘭などの遺跡から麻紙の文書が発掘される(紀元260年)
405年ころ 「日本書紀」によると「応神皇15年(405年)に、百済王が阿直岐をつかわしてよい馬二匹を奉った。阿直岐はよく経典を読み、太子莵道雅郎子の師となった」。さらに「翌16年、百済王が王仁をつかわして論語10巻・千字文1巻を献上」とある

[注]

  • 経典…紙か竹簡または木簡かは不明であるが、わが国における書物の初伝とされる。
  • 書巻…紙か竹簡または木簡かは不明であるが、紙であろうとの説が有力である(わが国における紙の初伝とされる)。
538年 百済の聖明王、仏像や紙の経典をわが国へ送る *538年 わが国に「仏教伝来」
*中国の「四大発明」…紙、火薬、羅針盤、印刷
593年 中国で木版印刷術発明
593年(飛鳥時代)

聖徳太子、摂政となる

  • 604年…憲法十七条の制定

聖徳太子が紙作りの保護育成の政策を強力に推進し、わが国在来の楮の栽培と製紙を奨励した結果、楮の皮の繊維を用い雲紙、縮印紙、白柔紙および俗薄紙の4種の楮紙が製造されるようになる。これが製紙業の始まりであり、わが国の製紙の基礎となる。このため聖徳太子を「和紙づくりの祖」とする説がある。

ただ、これらのことは、太子信仰からきている神秘化された伝説として、事実でないとする説もある。

610 (推古18)年 (日本に製紙技術の伝播)わが国での製紙の起源…高句麗の僧曇徴が絵具・紙・・碾磑の製法を日本へ伝える(日本書紀)。わが国での製紙の最初の記録。曇徴は「紙の祖」とされる

改良され和紙の誕生へ

しかし、曇徴以前に製紙技術は伝来していた可能性大

701 (大宝1)年 図書寮に造紙手4人を置く(製紙)。紙を調(租税)として上納、義務化 大宝律令制定
702 (大宝 2)年 わが国で漉かれ、年代の明らかな最古の紙…正倉院に伝わる美濃、筑前、豊前の戸籍用紙 当初のころの主要な製紙原料はコウゾ(当時は穀(こく)といった)、ガンピ(斐(ひ))、アサまたは麻布の3種
710年 奈良時代に和紙は、公用紙や写経用紙として多用。麻紙、穀紙(堵)、斐紙(雁皮)などの他に染紙も使用、また金銀箔を使った装飾加工も実施 このころ紙漉きの技術、全国に伝播
751年 (タラスの戦い)

(紙の伝播…西進)

  • 中国の造紙術、アラビアのサマルカンドへ伝播・新羅で世界最古の印刷物無垢浄光大陀羅尼経」が刊行

757年 サマルカンドに製紙工場の建設

(サマルカンド紙…麻が主原料)

  • 手漉き法
    • 「溜め漉き」(ヨーロッパ)
    • 「流し漉き」(日本)
770 (宝亀元)年 日本最古の印刷物「百万塔陀羅尼」成る(麻紙) *「紙」は貴重な存在
*古紙の利用(平安時代)…反古紙、薄紙、宿紙など
*紙屋院…現在の京都・花園木辻付近(花園妙心寺の東南、花園高校あたり。紙屋川ほとり)
800年ころ 「流し漉き」(日本の手漉き法)完成
806~ 810年(嵯峨皇大同年間) 図書寮の別所(出張所)として、紙屋院を京都・野宮の東方に開設
927年 延喜式制定…製紙作業の大綱が定められ、産紙国は42か国に及ぶ
12世紀

(紙の伝播…西進)

  • アラビアからエジプトへ、さらにスペインヘ
  • フランスへ
*12世紀の「長秋記」に用便後に使う大壷紙(おおつぼがみ)の記録あり…ちり紙の初見
13世紀
  • イタリアへ
  • 1450年 グーテンベルグ(独)、金属活版印刷技術の開発
  • 1455年 最初の活字印刷本「42行聖書」を刊行(グーテンベルグ)
  • 1798年 長網式抄紙機の発明(仏:ニコラス・ルイ・ロベール…近代製紙法の父)
  • 1804年 長網式抄紙機の実用化(英:フォードリニア)
  • 1808年 丸網式抄紙機の発明(英:ジョン・ディキンソン)
  • 1813年 蒸気機関による動力印刷機の発明
  • 1845年 砕木パルプの創製(独:フレドリック・ケラー)

*紙の原料として「木材」の使用…外国

14世紀
  • スイスへ
  • ドイツへ
15世紀
  • イギリスへ
16世紀
  • オランダへ
  • スウェーデンへ
17世紀
  • ノルウェーへ
  • アメリカへ
19世紀初頭
  • カナダへ
江戸時代

*1670(寛文10)年ころ「浅草紙」の誕生

*和紙…庶民の暮らしに浸透し、隆盛へ

紙の需要はさらに拡大、発展…各藩が紙の専売制促進、障子紙・傘紙・合羽(かつぱ)紙など、生活の広範囲な用途に使用される
1777(安永6)年…木村青竹編「新撰紙鑑(かみかがみ)」刊。わが国の諸国産紙の種類・産など著した和紙関係の重要書
1798(寛政10)年…国東(くにさき)治兵衛著「紙漉重宝記」刊。和紙の製紙技法書
1874(明治7)年

(紙の伝播…西進)

「ついに日本に洋紙として渡来」

 

わが国最初の洋紙生産を東京で有恒社が開始

(機械抄紙の始まり)…破布(ぼろ布)が原料

 

洋紙製造の創業期

  • 輸入紙比率(洋紙)…95%
  • 郵便切手用紙を和紙から洋紙に変更
  • 1970(明治3)年 わが国最初の活字印刷による新聞の発刊
  • 1872(明治5)年 わが国最初の株式会社「抄紙会社」(王子製紙の前身)設立
  • 1875(明治8)年12月 わが国最初の新聞用紙の生産(抄紙会社)
  • 1889(明治22)年 日本で初の木材パルプの生産
  • 1890(明治23)年 日本最初の砕木パルプ工場の建設
  • 1903~04年 ルーベル(米国)がオフセット印刷法を発明
1903(明治36)年 小学校の教科書用紙(国指定)を、明治5年以来の手漉き和紙から洋紙に変更

*「木材」の使用。紙消費の増大…洋紙生産拡大

洋紙はわが国でも次第に発展、定着し。そして拡大する紙の消費とともに、洋紙の生産が本格化し増加していくが、反面、和紙生産が次第に減少。

1912(明治45)年には、洋紙の生産と消費が和紙と肩をならべ、それ以降、和紙を追い越し洋紙の時代となる

1950年代~ 化学繊維紙(第二の紙)の登場…石油

*木材資源の枯渇問題発生

1953年~古紙利用、本格化

1953(昭和28)年

紙・板紙年間生産量 戦前の最高記録を更新

176万t(紙101万t、板紙45万t、和紙20万t)

(注)戦前の最高記録…1940(昭和15)年

154万t(紙93万t、板紙40万t、和紙21万t)

1962(昭和37)年

合成紙(第三の紙)の登場…石油

*石油の高騰

  • 1973(昭和48)年 第1次石油危機勃発
    • 「トイレットペーパー騒動」発生
  • 1979(昭和54)年 第2次石油危機発生
1969年 紙・板紙年間生産量 1,000万t超過(1,131万t)
1980年~

「中性紙」への関心高まる

*紙・文書類の保存性、延命策の促進

1985年 紙・板紙年間生産量 2,000万t超過(2,047万t)
1989(平成元)年 環境問題、再びクローズアップ
1990年~

*紙の生産・消費大国となる(日本)

紙・板紙年間生産量(1996年)

3,000万t超過(3,001万t)

*「再生紙」ブーム到来

古紙利用率拡大目標を設定

(日本製紙連合会)

  • 1990年~「リサイクル55計画」
  • 「56計画」…2000年までに利用率56%目標を設定→1999年56.3%で達成
  • 2005年度までに古紙利用率60%目標を設定→2005年60.3%で達成
  • 新たに2010年度までに古紙利用率を62%に向上(新目標設定)

*わが国の紙全体に占める和紙の比率は、およそ0.3%。

わが国で生まれ、育まれた「和紙」は、逆境を乗り越え、和紙の持つよさを生かして、今日、それぞれの紙漉き場で生きる道を探索…「魅力ある和紙」を目指して!!

2000年~

*紙・板紙年間生産量(2000年)

3,183万t(過去最高記録)

その後、3,100万t切れで生産量横ばい(~2005年)

*2001年の紙・板紙生産量…米国に次ぐ2位から中国に追い越されて3位へ


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)