印刷について(4) 印刷物のできるまで

次に一般的な印刷物が出来上がるまでの工程を示します。

『原稿』→「入稿」→「版下作成」→(校正)→「本稿」→『カメラワーク』(撮影)→(色分解)→「色分解フィルム作成」→(修正・レタッチ)→『プレートメーキング(製版)』(焼付け)→(現像)→「版作成(刷版)」→「印刷」→『アウトプット(印刷物)』→(検品)→「加工・製本」→(検品)→『製品』→(検品)→「納品」

 

近年、「入稿」から「製版」までのプリプレスと呼ばれる、いわゆる、印刷前工程の電子化が進展しており、例えば、コンピューターを利用して画面上で出版物を電子編集、印刷するDTP(デスクトップパブリッシング)などが進行しております。これはパソコンを使って出版編集を行うシステムですが、これによって印刷の前工程が省略、簡素化されてきております。

また、一般印刷物でもコンピューター化により版下作成から校正、本稿作成までの工程が省略されるようになりました。

デジタル化によるダイレクト刷版の作成など、今後もますます電子化は進んで行くものと考えられますが、ここでは過去のものとなりつつあるプリプレス段階での用語などを紹介しながら、上記工程に沿って一般的な印刷物が出来上がるまでを概説します。

 

(1)原稿および版下の作成

原稿は、印刷の五大要素の一つで印刷複製のもとになるもので、仕様、表現方法、印刷様式などの企画が決まれば、原稿を作成します。

次に電算写真植字システムで処理されて、写植機から打ち出された文字や絵画・図形などを印刷の仕上がり状態にして版下台紙の上に配列します。これを版下の作成といいます。

ついでその校正(版下校正)を行ないますが、校は比べるという意で、校正とは原稿と引き合わせて、誤りを正すことです。ただ単に誤植を正すだけでなく、原稿と照合して、色の調子が再現されているかどうか、レイアウトが指定どおりか、傷、汚れがないか等を調べ、チェック、修正し、入稿します。

 

参考

校正刷りは、「試刷り」に同義で、校正に用いるために仮に刷った印刷物のことで、ゲラ刷りともいいます。対語は本刷り(印刷機には校正機と本機があります)。また、「校了」とは、校正を完了すること。なお、校正に用いる用紙は実際に使用する「本紙(実用紙)」が望ましく、これを本紙校正といいます。

 

(2)カメラワーク

カメラワークとは、入稿した原稿(本稿)を製版カメラで、フィルムに撮影する作業(製版用のフィルム作成作業)のことで、校正済みの台紙をフィルムにカメラ撮りを行います。

カラー印刷の場合は、色彩によって構成されている画像を原稿にして印刷再現します。そのためには、三原色のインキ(イエロー・シアン・マゼンタ)、しかし、この三原色を混合しても完全な黒色とならないため、これに、(黒・ブラック)を加えた4色で刷り重ねるための版を作る必要があります。

[注]印刷インキなどの色料の三原色は、緑がかった鮮かな青色であるシアン[cyan (略してC)、シアンブルー、青緑]、鮮かな赤紫であるマゼンタ[magenta(M)、赤紫]およびイエロー[yellow(Y)、黄]で、これらの混合によりすべての色が作り出せるはずですが、この三原色を混合しても暗黒色となり、完全な黒色とならないため、これらにブラック[black(BL)、黒]を加えた4色を使います。この4色をカラー印刷の基準インキ(プロセスインキ)といい、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローを印刷ではそれぞれ、スミ()、アイ(藍)、アカ(赤)、キ(黄)と呼びます。

なお、この標準4色以外に、特別に調合された色を特色といい、通常の4色だけの印刷では表現が困難な場合に使用されます。

(追記)光の三原色は、緑[green(略してG)]・赤[red(R)]・青紫[blue(B)]をいい、この三原色を混合すると白色になりますが、このように混ぜて明るい色になるのを加法混合(混色)[加色混合]といい、逆に印刷インキや絵の具などの三原色のように、混合して黒色のように暗い色になるのを減法混合(混色)[減色混合]といいます。

 

そのために、まずカラー写真(図版)を色分解フィルターを使って撮影、4色に色分解(分色)し、4枚のフィルム作成します。ただ、フィルムを作っただけでは、原稿との再現性が不十分なため、良くするためにマスキングやレタッチによって修正(色修正・調子修正)をする必要があります。

なお、カメラワークによらないで、コンピューターを使った電子色分解修正機で光電を用いて原稿の色を分解、色ごと色修正・調子修正・下色除去(UCR)などを電子的に制御し、多色印刷製版用のフィルム(ネガ・ポジ)を作る装置をカラースキャナといい、高価ですが現在は、ほとんどがこの装置が使われております。

 

  • マスキング…マスクで原稿や分解ネガを覆って写真的に、色修正・調子修正を行うこと。
  • レタッチ…スキャナーで色分解したものを人工的に修正したり、スキャナーで色分解できにくいくすんだ中間調の色(ピンクや薄紫の色)やキズを手作業で加筆修正し画面を整えること。レタッチは汁や水性ペンを使い手書きで行われるため熟練度の違いで出来栄えに相異が生ずることがあります。
  • 下色除去(UCR) …Under Color Removal。3色掛け合わせた絵柄、黒()の部分を等量の藍・赤・黄版を減らして、その分、版の分量を多くする方法をいう。この方法により、印刷のトラッピングトラブルなどを回避することができます。

 

(3)プレートメーキング(製版)

修正の終わったフィルムから版材に焼付け、現像作業を行い、印刷用の版を作成します。なお、出来上がった版を刷版といいます。

PS版 (Presensitized plate)ないし感光性物質を塗布した金属板面(亜鉛板、アルミニウム板)にフィルムを密着し、露光、焼付けすると光硬化した膜面とそうでない水溶性の膜面ができます。焼付けの終わった版の上に、現像インキ[焼付けた感光膜面に感脂性を与えるために塗布する脂肪性インキ]を薄く塗布し、乾いた後に水洗すると未露光の膜は上層の現像インキとともに流れ取られます。この膜の流れ去った金属面は、そのままではインキが付着するため、脂肪性のインキと親和しないように不感脂化(エッチ処理、etch)します。そのために新水性のコロイド物質を吸着させておきます。このようにして水の付いている不感脂化部分はインキを反発し、感光部分だけにインキが付く版が出来上るわけです。

 

(4)印刷

次に版、インキ、印刷機(印圧)、印刷媒体(紙など)を用いて、予備率を加味して必要枚数・連数を印刷をします。その後、下記の(5)から(9)の工程を経て納品されます。

 

参考

  • 刷了…さつりょう。印刷物を全部刷り終えて印刷が終了した状態。
  • 黒損率…こくそんりつ。印刷の損紙には黒損(黒ヤレ)と白損(白ヤレ)がある。黒損率とは使用した印刷紙に対して発生した損紙の割合、あるいは有効紙に対して発生した損紙の割合をいいます。
  • 刷りヤレ…印刷損紙。
  • 白ヤレ…印刷前の白紙の損紙。
  • 予備紙…印刷に着手する場合には、あらかじめ損紙の生ずることを見込んで、印刷紙の中に適当な率(例えば、1色1%)の損紙予備あるいは予備を余分に見込んだ用紙をいいます。
  • 簀の子(取り)…rack。印刷直後の印刷物の裏移りを防ぐために、枚葉印刷機の排紙部(デリバリー部)で、未乾燥印刷物を少量ずつ取り分けておく簀の子状の木箱(板)のことで、この簀の子に印刷物を取り分けることを簀の子取りといいます。近年、印刷技術の進歩により、簀の子取りすることは少なくなりましたが、インキ乾燥の劣る高印刷物を刷る場合などに行うことがあります。

 

(5)検品…印刷物に不良品がないか検品および不良品の除去。

(6)加工…製本・ビニル加工・打ち抜き・製函など。

(7)検品

(8)製品

(9)検品

(10)納品…最終需要家・顧客に納入(納期にも配慮・厳守)。

 

 


更新日時:(吉田印刷所)

公開日時:(吉田印刷所)