色 料(色材) インキに色を付けるもの (光学特性付与) |
顔料 | 有機顔料 | フタロシアニンブルー(アイ)、ローダミンレーキ(アカ)、ベンジジンイエロー(黄) 、シアニンブルー(アイ)等 |
無機顔料 | 有色・白色顔料…カーボンブラック(黒) 、群青(アオ)、ベンガラ(アカ)、カドミイエロー(黄) | ||
体質顔料…アルミナホワイト、炭酸カルシウム等 | |||
染料…塩基性染料、酸性染料、分散染料、蛍光染料、油溶染料(アゾ系等) | |||
ビヒクル 印刷インキに流動性・転移性・乾燥性・接着性および乾燥膜特性を与える(印刷インキまたは塗料の成分で、顔料を分散させ、流展性を与え、印刷面または塗料面に顔料を固着させる役目をする液成分) |
油 | 植物(乾性)油 | あまに油、桐油 |
加工油 | |||
鉱物油 | モビール油、スピンドル油、灯油 | ||
樹脂 | 天然樹脂 | ロジン、ギルソナイト | |
天然物誘導体(加工樹脂) | ライムロジン、エステルガム | ||
合成樹脂 | フェノールレジン、アルキドレジン | ||
溶剤 | 炭化水素 | ||
アルコール | |||
エステル | |||
ケトン | |||
グリコールおよびその誘導体 | |||
可塑剤…流動性をコントロール | |||
助剤 色料とビヒクルの機能を助け、または印刷インキの他の特性を補う役割をする |
流動特性調整剤 | 展剤 | |
コンパウンド(合成ロウ・ワセリン)…インキ粘度低下用 | |||
乾燥性調整剤 | 乾燥剤(ドライヤー) | ||
乾燥抑制剤(インヒビター) | |||
被膜調整剤 | 色濃度調整剤(調色剤) | トナー(油溶性染料・顔料)…インキ濃度アップ | |
ビクトリア(酸化アルミニウム主体の顔料 )…インキ濃度稀釈 | |||
チント(ラカチン…白ロウ+炭酸マグネシウム )…インキ濃度稀釈 | |||
メジューム…インキ濃度稀釈、粘度低下用 | |||
耐抗性調整剤(耐摩擦コンパウンド) | |||
裏移り防止剤…ゲルワニス:印刷直後にワニス分を一時的にセット | |||
分散・湿潤剤 | |||
その他…界面活性剤:ワニスに対する顔料粒子の馴染みを良くし、濃度アップ、流動性、展性などを良くするために使用 |
印刷インキ
世界大百科事典(第2版)…CD-ROM版 日立デジタル平凡社 新井 吉衛 (c) 1998
印刷に用いられるインキの総称。着色材料である顔料と,これを分散させる媒質の展色剤(ビヒクル)とをよく練り合わせ,さらに必要に応じてドライヤー(乾燥剤)やコンパウンドなどを加えて構成する。印刷インキは,印刷の版式による分類として,凸版インキ,平版インキ,凹版インキ,孔版インキに分けられるが,通産大臣官房調査統計部,印刷インキ工業会の統計では,平版インキ,凸版インキおよび凸版輪転インキ,ゴム凸版インキ,ブリキ版インキ,グラビアインキ,特殊グラビアインキ,その他インキ(以上を一般印刷インキと称する),および新聞インキの8種に分類している。印刷インキの基本的構成は塗料と類似しているが,機能的には別種で,次のような条件を満足する必要がある。(1)各種の印刷機に対応した適切な流動性をもち,印刷工程の流れにより転移し忠実に版模様を再現すること。(2)平版印刷では,水とのバランスで画線が形成されるが,油性のインキと水との間で乳化が起こり流動性が失われたり,汚れが出ないこと。(3)印刷インキの流動性が印刷機の上では長時間保持され,印刷素材表面に移ってからは急速に固化して乾燥膜を形成すること。(4)でき上がった印刷物は色,光沢などを十分に再現し,後の工程や使用条件に十分な耐性をもつこと。
平版インキは量的にも最も多く使用される重要なもので,別名オフセットインキと呼ばれる。金属や樹脂などの版に着肉したインキを直接紙に移さず,一度ゴムの面に移したのち紙に再転写する。ゴムの弾性を利用するため紙の表面が疎でも少ない印圧で美麗な効果が得られる。展色剤はロジン変性フェノール樹脂・アルキド樹脂,植物乾性油,沸点250~300℃の石油系溶剤などからつくられる。ポスター,カレンダー,カタログ,ちらしなどの商業印刷物はほとんど平版インキで刷られる。凸版インキは版面が突起した凸版に使用されるもので,凸版輪転インキもこれに含まれる。このうち,ざら紙や下級紙に用いられるものは,浸透・乾燥するため鉱物油を多くしてある。凸版を使った原色版印刷は鮮明で力強く,高級な美術印刷に利用されるが,これに使用されるインキの組成は平版インキ(枚葉)とほとんど同じである。グラビアインキは凹版シリンダーに用いられる印刷インキで,低沸点溶剤を展色剤の主成分としているので蒸発・乾燥しやすく,高速度印刷が可能である。
印刷インキに使用される顔料には,色彩が鮮明で着色力が大きく,耐光・耐薬品性がすぐれ,毒性のないことが必要であるが,さらに粒子が練りやすく調子がやわらかなことが重要である。以前は無機顔料も用いられたが,現在では有機顔料がおもに使用される。補助剤としてはワックスなどのコンパウンド,低粘度亜麻仁油ワニス,ゲル弾性を帯びさせる金属セッケン,ドライヤー,酸化防止剤などが用いられる。