雑誌不況!!
(出所)NetNihonkai-日本海新聞 日本海新聞「本はいま」(2009年8月30日付)
印刷マーケティング研究会 , 雑誌の流通、本の流通-日本の「出版不況」について
10年あまり前から日本の出版界は不況だといわれている。業界全体の売上高は下降気味で、発行部数は減るというのに、売上高維持のために出版点数を増やそうとする。書店の書棚も飽和状態で読者の目にとまることなく返本され、返品率は4割に近い。倒産する出版社や店を閉める本屋さんが出ているという。そのなかでも最近、「雑誌不況」との記事をよく目にする。
書籍は下げ止まって需要も安定してきたが、雑誌の落ち込みは底が見えてこない。これまで読みやすくて販売部数が伸び、広告収入を得やすい特質で出版経営を支えてきた雑誌の不振が業界全体を揺るがしている。
出版科学研究所の「日本の出版統計」にあるグラフを見ると1997年から落ち始めていて、インターネットの普及との関係がいわれているが、よく見ると週刊誌やコミック誌はそれ以前から下降し始めている。
最近は誰もが知るような国民的雑誌の休廃刊や名門出版社の倒産も相次いでいる。世代間の差もなく、男女の別もなく、かつては発行する出版社を代表した看板雑誌さえ消えていく。「月刊現代」「ロードショー」「PLAYBOY日本版」「論座」「主婦の友」(大正6(1931)年発刊)などなど。月刊誌の休刊が相次雑誌不況は「もはや底なし」に入っている。その要因としてさまざまな背景が語られているが、少子化、余暇の過ごし方の多様化、インターネットとの競合、景気低迷による広告費の減少、活字離れなどがあり、また個人情報保護法とプライバシーの問題、名誉毀損訴訟判決での損害賠償の高額化、セキュリティーのためにはりめぐされた街頭監視カメラや防犯カメラの設置などに代表される監視の強化もある。これらに持ちこたえられず、雑誌が作りにくくなって休刊に追い込まれる雑誌が相次いでいることも確かである。
この数年来、書籍はプラスマイナス前後を繰り返して減少傾向は目先の底を打った状況だが、雑誌の減少はとうとう10年あまり連続である。出版科学研究所調査によると、2009年上半期の出版界の動向を数値で見ると、出版物販売額は前年同期比で4.0%減。内訳は、書籍売り上げが2.7%減、雑誌は5.2%減で、より深刻だ。「雑誌不況」の現実を示している数値といえるだろう。
詳しく見ると、月刊誌は4.6%なのに対して、週刊誌は7.1%減と減少幅が大きい。雑誌がこれほどまでに不振になった原因は月刊誌、週刊誌を問わずインパクトの弱さ、つまり売れる要素が少ないことといっていい。雑誌ならではの切り口や視点にかけるのだ。
このような出版物の販売不振、メディア多様化の影響を受けて出版業界も変わり始めた。具体的な変化にはケータイ小説とライトノベルの隆盛、デジタル雑誌化の動き、版権の海外販売、オンライン書店との協業、コミックレンタルや古書併売への取り組みなど様々あるが、将来を見通すために極めて有用である。
(2009年9月1日)